Gal Costaの新作:多才さを示していても,ちょっとこれはとっ散らかり過ぎに感じる。
"Gal Estratosférica" Gal Costa(Sony Music)
Gal Costaのアルバムは,私は大して保有していないが,持っているアルバムについては結構気に入っているので,やはり気になる人である。ここでも今年で古希を迎えるとは思えない若々しい声を聞かせている。
アルバムの冒頭から,想定外のロック・サウンドが響き,思わずのけぞった私である。本作は,ブラジルの有名どころがおそらくは彼女のために書いた曲を歌っていると想定されるが,それはGal Costaというシンガーの,ブラジルにおける人間国宝的(?)ポジションを示していると思うが,彼女をリスペクトするであろう書き手がバラバラだけに,アルバムとして一本筋を通すのが難しいように思える作品となった。
正直に言ってしまえば,各々の曲で聞かれるGal Costaの歌は,彼女の多彩さ,多才さ,多様性を実証していると思うが,次から次へといろいろなタイプの出てくるので,悪く言えば出来のイマイチのコンピレーションを聞かされるような気分になってしまい,落ち着かないのである。ブラジル音楽に私が求める要素と違うっていうところが,そうした気分を生み出すのは間違いないので,それはあくまでも個人的な感覚だとしても,私にはやはりどうも居心地が悪かった。
逆に言えば,こうした作品は歌手としては非常にチャレンジングなものであると思えるが,Gal Costaの進取の精神で仕上げた作品として評価はしなければならない部分もある。だが,やはり私としては求めるサウンドとの乖離が大きく,ちょっと残念な作品。Gal Costaの責任というより,プロデューサーであるKassinとMoreno Velosoの手腕が不足しているって感じだろうな。星★★★。
Personnel:Gal Costa(vo), Guilherme Monteiro(g), Kassin(b, g, synth), Pupillo(ds, perc), Andre Lima(key, org), Armando Marcal(perc), Moreno Veloso(g, cello, ukulele, vo), Joao Donato(rhodes) & Others
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