Freddie Hubbard,最後の輝き?
"Live at Fat Tuesday's" Freddie Hubbard(MusicMasters)
晩年のFreddie Hubbardは唇の怪我や病気によって,全くと言っていいほど,精彩を欠いてしまったわけだが,唇の怪我をしたのが1992年らしいので,真っ当に吹けたFreddie Hubbardのかなり最後期の演奏を収めたのがこのアルバムだと思う。時は1991年12月であるから,私はまだNYC在住中のことである。よって,行こうと思えば行けたはずのライブであるが,なんで行かなかったのかと思っても後悔先に立たずである。
このアルバムが吹き込まれたFat Tuesday'sももうなくなってしまって久しいが,私も何度か足を運んだことがある。非常にステージと客席の距離が近いクラブで,テーブルの間隔が狭いとも思えたが,逆にインティメートと言えば,その通りと言ってもよいクラブであった。どれぐらいの感覚かと言えば,横に掲げるJimmy Smithのアルバムのジャケを見て頂ければお分かり頂けるはずである(ちなみに,ここには私の大学院の同級生と,私の背中と思しき姿が写っている,と少なくとも本人は思い込んでいる)。そんな場所でこんな演奏をされてはのけぞらざるをえないが,それぐらいNYCの寒い冬を吹き飛ばすような熱い,熱い演奏である。そもそも1曲目からして"Take It to the Ozone"だもんなぁ(笑)。冒頭から突き抜けてしまっている。
全編を通して勢いのある演奏なのは,バンド・メンバーに比較的若いメンツを集めていることも影響しているだろう。最年長は当時32歳のTony Reedus,ベースのChristian McBrideに至ってはまだティーンエイジャーである。以前にもこのブログにも書いたことがあると思うが,私が初めてChristian McBrideを見たのは1990年の暮れあたりに,今は亡きBradley'sに出ていた時である。その時は,まだ18歳だったMcBrideに度肝を抜かれたというのが正直な感想だった。ここでの演奏はそれから約1年後の演奏のはずだが,やはり凄い人は凄いのだということを思い知らされる演奏である。そしてそれを迎え撃つFreddie Hubbard,53歳。一歩も引いてないわ。
まぁ,全編に渡って疾走感のある演奏なので,唯一のバラッドである"But Beautiful"でホッとするぐらいで,さすがにこれはやり過ぎではないかとも思えないこともない。だが,そうだからこそFreddie Hubbardらしいとも言えて,楽しめるアルバムである。勢いがあり過ぎて,しょっちゅう聞きたいと思うものだとは思わないが,たまにこういうのを聞くと嬉しくなるのも事実である。星★★★★。
Recorded Live at Fat Tuesday's on December 6 & 7, 1991
Personnel: Freddie Hubbard(tp, fl-h), Javon Jackson(ts), Benny Green(p), Christian McBride(b), Tony Reedus(ds)
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