ようやくアップできるEnrico Pieranunzi~Federico Casagrandeのデュオ
"Double Circle" Enrico Pieranunzi / Federico Casagrande (CAM Jazz)
結構前にデリバリーされていたのだが,通常のオーディオでは問題ないのに,iTunesではどうしても音が割れる感覚がして,気持ち悪いと思っており,アップが遅れてしまったものである。原因は何のことはない。イコライザーである。PCでは常時イコライザーをオンにしていたのだが,そちらもおかしければ,iPod側で再生しても割れるので,これはリッピングした音そのものに問題があるのかとも思えて,何度もインポートにトライしても結果は同じだった。しかし,試しにPCでイコライザーをオフにしたら,問題解消。iPod側も確認したら,なぜかイコライザーがJazzになっている。これがどうも音割れの原因だったようである。ということで,音も安定したので,改めての記事のアップである。逆に言えば,いかに最近の私の音楽鑑賞環境がPC側に寄ってしまっているかの証左であるが,まぁ家の間取りを考えても,オーディオ・セットはリビング・ルームに配置されているので,家族の手前,それも仕方ないのである。
それはさておき,ピアノとギターのデュオと言えば,昔ならBill Evans~Jim Hall,近年ではFred Hersch~Julian Lageの作品があった。Enrico Pieranunzi自身にもJim Hallとのデュオがあるが,そちらは私は未聴である。だが,このアルバムを聞いて,冒頭の"Anne Blomster Sang"からして,このアルバムの成功は固いと思わせるものがあった。"Sector 1","Sector 2"と題された2曲は二人の即興的なアプローチが強く,やや印象が違うが,それ以外の曲には,私がEnrico Pieranunziがギターとデュオをやったらこうなるだろう(あるいはこうなって欲しい)って感じの印象が満ち満ちており,これはいいねぇと思わせる。
このアルバムの成功要因は,Enrico Pieranunziのピアノがいいのはもちろんだが,Federico Casagrandeのギターの音色が大きく貢献しているように思える。アタックは弱めで,非常にソフトな音色がEnrico Pieranunziのピアノと非常に相性がいいのである。これが最近何かと話題のエンジニア,Stefano Amerioの技によるものかどうかははっきりしないが,このバランスが心地よい。全編を通して聞いても,あっという間に時間が過ぎていく,そんなアルバムである。星★★★★☆。どういうタイミングがフィットするのか微妙であるが,鬱陶しい梅雨空の午後でも,ナイト・キャップの友としても機能することは間違いないな(笑)。
上述のイコライザーの話に戻れば,このアルバムは,真っ当な音で楽しむべきアルバムであり,極論すればサウンド(再生環境)の乱れを許容しない。それほど純度が高い音楽だということの証のように思う。
Recorded on November 12, 13 & 14, 2014
Personnel: Enrico Pieranunzi(p),Federico Casagrande(g)
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この若いギタリストには、そこはかとなく才能を感じます。既に独自の音世界を作り上げていると思いますね。Enricoのピアノも若い才能に触発されてか、いきいきと響いていると思います。
投稿: カビゴン | 2015年7月 2日 (木) 10時43分
カビゴンさん,こんばんは。
おっしゃる通り,このギタリストはなかなかのものですよね。サウンドはおとなしめなので,相互触発って言うと大袈裟な感じはしつつも,ちゃんとお互いのサウンドを通じてシナジーをきかしている感じがします。なかなかいいアルバムでした。
投稿: 中年音楽狂 | 2015年7月 2日 (木) 21時37分
私はかってEnrico Pieranunzi のソロやピアノ・トリオの抒情性に酔ってきたんですが・・・・・、近年益々盛んというか、挑戦が続いていて感心しています。このアルバムもそんな中での挑戦の一枚なんでしょうね。
中年音楽狂さんの星4つというのが気になりますが(笑い)、私も星を付ければ4つかも知れません。多分残りの1つは何なのか?と言うところですが・・・・私自身はピアノ+ギターの組み合わせの難しさにあると言ったところでしょうか。
投稿: 風呂井戸 | 2015年7月 3日 (金) 10時23分
閣下、トラバありがとうございます。
私、きっと、明日もトラバしにくるわ。笑
ピエラヌンツィもカサグレンでもすごいですよね。
テクニックはもちろんなのですが、詩情豊かな表現力がすごいですね。やっぱ、世界水準は楽器うまいだけじゃダメですね。
そして、音の良いレーベルは秀作が多いとおもいます。
投稿: Suzuck | 2015年7月 3日 (金) 13時12分
風呂井戸さん,こんばんは。TBありがとうございます。
私もEnrico Pieranunziの結構なファンだとは思っていますが,さすがに多作の彼のすべての作品を購入するわけではありません。そうした中で,本作は直感的によさそうだと思えるものであり,期待は裏切られませんでした。
私は本作を4.5星としていますので,右側のおすすめ作品にも選出されておりますが,私はこの音の純度を評価したってところでしょう。
投稿: 中年音楽狂 | 2015年7月 4日 (土) 18時44分
Suzuckさん,こんばんは。TBありがとうございます。
おっしゃる通りで,詩情豊かな表現力を堪能できる作品ですよね。Enrico Pieranunziの多作ぶりにはまいりますが,それでも買った作品で裏切られたことがほとんどない(もちろん,いまいちの作品もありますが)というのは凄いことですよね。
投稿: 中年音楽狂 | 2015年7月 4日 (土) 18時46分
音楽狂さん、こんにちはmonakaです。
TBありがとうございました。
このアルバム大変味わい深いアルバムですね。
聞くほどに二人が作った意味が見えてくる感じです。
投稿: monaka | 2015年7月21日 (火) 13時35分
monakaさん、こんばんは。TBありがとうございます。返事が遅くなり申し訳ありません。
Enrico Pieranunziへの期待値が高いのは当然として、このアルバムの魅力を増幅させたのはFederico Casagrandeのギターの音だったと思います。味わいを感じさせる音とはこういうものかなと思います。私には絶対出せないなって感じです(笑)。
投稿: 中年音楽狂 | 2015年7月23日 (木) 21時39分