Robert Glasperの新譜は編成はトリオでも越境型だった。そして,このグルーブは魅力的。
"Covered" Robert Glasper (Blue Note)
"Black Radio"シリーズで黒人音楽,あるいはジャズとソウルをつなぐ重要人物となったRobert Glasperの新作である。私はRobert Glasper Experimentも高く評価しているが,ライブにおいてはどうしてもドラマーのMark Colenburgが叩き出すビートに違和感しかおぼえず,昨今のライブには足を運んでいない。しかし,今回はトリオとして8年ぶり,そして,私の嫌いなMark Colenburgも入っていないので,買うか買うまいか迷っていた。しかし,ぶらっと入ったショップで本作がプレイバックされていて,何とも言えない「聞きやすさ」あるいは「心地よさ」につられて,結局購入してしまったものである。
編成としては典型的ピアノ・トリオなのだが,出てくる音楽はドラムスの叩きっぷりからしても,やや増幅感の強いベース音からしても,ヒップホップ的なところも感じさせながら,ピアノの美感も感じさせる,相変わらずの越境型音楽である。Capitol Studioに聴衆を招いてのスタジオ・ライブ形式であるが,随分ローファイな感じの音になっているのはおそらく意図的なものだろう。ついでに言うと,フェード・アウトしている曲もある。
私は本質的にはRobert Glasperという人のピアノ・タッチは結構ソフトだと思っているのだが,そうした彼のよさが出ているのが"So Beautiful"~"The Worst"~"Good Morning"あたりの流れのように思える。こういう演奏を聞かされると,本当に気持ちよいグルーブを感じてしまうのである。まぁ,これも相当売れるかもなぁと思わせるに十分な作品。だが,この心地よさの前にはそれも当然だろう。星★★★★☆。やはりRobert Glasper,只者ではないな。
それにしても,Harry Belafonte(録音時87歳)がいきなり登場して,喋りを聞かせるのにはびっくりした。「俺はまだ死んでないぜ」と来たもんだ(笑)。
Recorded Live on December 2 & 3,2014
Personnel: Robert Glasper(p), Vicente Archer(b), Damion Reid(ds), Harry Belafonte(vo)
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» Robert Glasper:Covered (2014) 奇妙な感覚、だが悪くない [Kanazawa Jazz days]
リリースされて、すぐ購入したが、アノBlack Radioシリーズほどは聴いていない。あっちのほうが気持ち良い、からなのだけど。
ピアノ・トリオの形をとっているが、ドラム奏者が主役のように聴こえる。悪いことじゃない。ピアノ弾きとして、グラスパーって引き出し...... [続きを読む]
さらっと聴くのが、いいアルバムだと思っています。
ピアノ奏者としての彼ってピンとこなくて、故のこんな感じでウマク音造りした印象です。
投稿: ken | 2016年2月 7日 (日) 16時09分
kenさん,こんにちは。TBありがとうございます。
確かに最近のGlasperはピアニストっていうよりも,トータルなクリエイターって感じですから,こういう感じでいいのではないかと思えますね。彼の風貌が結構強面なんで,ガンガン弾きそうなイメージがあるかもしれませんが,人は見かけによりません(爆)。
投稿: 中年音楽狂 | 2016年2月 7日 (日) 16時54分