スルーしていた私がアホだったと思えるJoni Mitchellの素晴らしきコンピレーション
"Love Has Many Faces: A Quartet, A Ballet, Waiting to Be Danced" Joni Mitchell (Rhino)
先日もJoni Mitchellが参加したSealのアルバムを取り上げたばかりだが,現在,入院中で状態が心配される彼女のコンピレーション・アルバムである。去る5/8にはSFJazzから功労賞を受賞することになっていながら,主役の不在という結果になってしまったのは残念だが,そうした不安や無念も,このアルバムを聞けば雲散霧消するようなものである。それほど素晴らしいのだ。
実を言えば,私は本作を新たなベスト盤のように思っていて,音はリマスターされていても,つい先日まで購入をためらっていたのだが,それがいかに馬鹿げた判断だったかを思い知らされてしまった。この4枚組,必ずしもヒット曲や有名曲が収められているわけではない。キャリア全体を俯瞰するかたちにはなっていても,"Night Ride Home"からの選曲が目立つなど,意外な部分も見られるのである。元々はバレエでの上演を意図して,1枚のコンピレーションを作り上げるのが命題だったものが,大きく方向性が変わった結果として生まれた作品集だが,まさに一篇のストーリーを見せられるようなかたちになっている。
そこで気づかされるのが,彼女のキャリアを通じて実証された曲のクォリティの高さだろう。私としては久しぶりに聞く曲も収められているのだが,それのどれもが全然古びたものとならず,私に新鮮な驚きを与えてくれたのである。誇張なしでこれには心底驚いた私である。これこそ彼女の楽曲により織り上げられた音楽的タペストリーだと言ってもよい(Carole Kingかっ!)。
いずれにしても,本作の前では多言は無用である。ただ聞けばよい。どこから聞いても彼女の才能がほとばしっている。やはり凄いミュージシャンである。ということで,星★★★★★以外にはない。そして,Joniが寄稿したライナーが面白過ぎる。これだけでも買う価値があったと言っては大げさだが,彼女のファンを自認する私にも,彼女の音楽を改めて見直す機会を本作は与えてくれたと思う。ありがたや,ありがたや。
尚,本作は昨年11月にリリースされたもので,本年の新作とするには若干抵抗があるが,この素晴らしさを皆さんにも知ってもらいたいと思うので,敢えて今年の推薦作扱いとしてしまおう。まじで最高である。
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