来日目前,J.D. Southerの新譜はタイトル通りのソフトな仕上がり。
"Tenderness" J.D. Souther(Sony Masterworks)
6月に来日することが決まっているJ.D. Southerの新譜がタイミングよくリリースされた(と言うよりも,リリースに合わせての来日か...)。J.D. Southerが25年ぶりの新作として"If the World Was You"をリリースした時には酷評した私であるが(記事はこちら),それに続く"Natural History"でJ.D.の復調を確信し,そっちはかなり好きだった(記事はこちら)。今回は本作のリリースが発表されて,2曲目の"Something in the Dark"の映像がプロモーションとしてネット上で公開されたのを見て,これも買いだと思っていた私である。
今回はプロデュースは昨今,プロデューサーとしての仕事ぶりが目立つJoni Mitchellの元ダンナのLarry Kleinであることも,本作への期待を高めた。Larry Kleinと言えば,昨年,私がベスト作の1枚に挙げたBilly ChildsのLaura Nyroトリビュートの仕事があまりにも素晴らしかったからである。そして,このアルバム,タイトルの"Tenderness"に偽りなく,大人向けのヴォーカル・アルバムになっていると言ってよい。随分ソフトな感じが強いが,音楽は刺激が強けりゃいいってものではない(笑)。
J.D.はソングライターとしての業績が歌手としてのそれを上回っている気がするが,それでも,彼の声で聞くナイスな曲群は,それはそれなりの楽しみがある。なんだかんだ言って,私は彼のアルバムは全部保有しているわけだが,作品のクォリティにバラつきはあっても,彼の声の魅力は不変なのである。
今回も控えめな伴奏をバックにしながら,彼の魅力的な声を聞かせているが,さすがに今年で70歳ということもあり,以前のような瑞々しさというよりも,枯れた味わいが強くなっているが,それはそれで魅力的に響く。正直言って,我々の年代のような生活感が感じられる人間にとっては,何とも落ち着きをもたらす音楽である。ちょっと地味かなぁとも思えるが,それでもこれはなかなかいいと思う。星★★★★。共演者ではTill Brönnerのトランペットが効果的。CDの”Something in the Dark"には私が贔屓にしているLizz Wrightが華を添えているのもいいねぇ。ということで,そのプロモ・ライブ・ビデオも貼り付けておこう。
Personnel: J.D. Souther(vo, g), Patrick Warren(el-p, key, org), Chris Walters(p), Larry Klein(key), Billy Childs(p), Dean Parks(g), David Pilch(b), Jay Belrose(ds, perc), Sam Bacca(perc), Lizz Wright(vo), Till Brönner(tp), Jeff Coffin(ss), Mark Robertson(vln), Alyssa Park(vln), Luke Maurer(vla), Matt Nelson(vla), Vannessa Freebaim-Smith(cello)
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