Giovanni Guidiの甘美なピアノの響き。
"This Is the Day" Giovanni Guidi Trio(ECM)
私は結構ECMレーベルの音楽が好きな方だと思っている。だから,新譜が出ると,自分の嗜好に合いそうなアルバムはできるだけ買うようにしているが,最近のリリース・ペースが非常に上がっているので,鑑賞が追いつかないというのが実態である。なので,結構な枚数が積んどく状態になっており,本作もデリバリーされて結構な時間が経っているにもかかわらず,ようやく聞いたという感じである。言い訳になるが,PCを買い替えて,iTunesの移行に難儀していたというのも,新譜に手が伸びなかった理由である。それでもやっぱりもう少しタイムリーに聞かないといかんなぁと反省する今日この頃である。因みに,Giovanni GuidiについてはECMでの前作"City of Broken Dreams"も買ってあるのだが,まだ封も切っていない(爆)。
それはさておきである。冒頭から甘美なピアノの響きが流れてきて,もうこれで完全につかみはOK状態である。そして,全編を通じて,静謐な中にも,美的な音楽が展開されて,ECMレーベルのファンであれば,決して文句は出ないであろうという感じのピアノ・トリオ・アルバムとなっている。こういうサウンドに対して,"Quizas quizas quizas"のような有名ラテン曲のチョイスが意外かつ面白いが,もちろん,この人たちの演奏が一般的なラテン・ビートになるはずもなく,彼らなりのバラッド表現になってしまうところが,何とも面白いというか,徹底している。もちろん,このメンツで普通のラテン・ビートを刻むはずもないが...(笑)。甘美な感覚は古い小唄と言ってもよい"I'm through with Love"のような曲でも変わらない。一貫しているのである。
加えて,甘い音楽だけでなく,ややフリー,あるいは現代音楽的なアプローチもある(と言っても破壊的なフリーという感じではないので,これは現代音楽的と言った方がわかりやすいだろう)が,全編を貫いているのはあくまでも美しいピアノの響きである。やっぱりそれもECM的と言えば,ECM的である。これまでもManfred EicherはMarcin WaslewskiやTord Gustavsenのような有望なピアニストを発掘してきているが,また新たなピアニストがそのラインアップに加わったという感じである。もちろん,Eicherの眼鏡に適うようなピアノと言ってもよいが,それにしてもレーベルの個性が色濃く反映されたアルバムである。星★★★★☆。
こうなったら,前作"City of Broken Dreams"もさっさと聞かねば(笑)。ついでに言っておくと,PCで聞いていても,特筆ものの音のよさであり,それがピアノの響きの美しさを増幅させ,Thomas Morganのベースの音も原音に近い感覚で録られていて,心地よい。巷で何かと話題のエンジニア,Stefano Amerioの技を感じさせる出来と言ってよいと思う。
Recorded in April 2014
Personnel: Giovanni Guidi(p), Thomas Morgan(b), João Lobo(ds)
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中年音楽狂さんも感動組で益々共感が持てます(笑い)。
私は自分のブログにも書いたのですが、このアルバムをトータル・コンセプト・アルバムとみました。人間の日常の流れにおける葛藤も含めて、感覚的な世界をうまく描いているように思えてなりません。これは私の勝手な感想ですが・・・・・。
しかし耽美的、内省的でありながら、中盤の曲も面白く、若いから未来志向も感じられて良いですね(これも私の感覚の世界ですが)。
投稿: 風呂井戸 | 2015年5月14日 (木) 13時27分
風呂井戸さん,こんばんは。TBありがとうございます。
私はこの美的な感覚に身を委ねただけって感じですが,この人がまだ30になるかならないかっていうのは意外でした。年齢にしては結構成熟した音楽だよなぁなんて感じている私です。
ということで,追ってこちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2015年5月14日 (木) 22時35分
けっこう良かったアルバムでした。ECMはピアノ・トリオはなかなか出さないこともあって、やはりキラリと光るものがありますね。ここでもトーマス・モーガンのベース。彼はECMにはなくてはならないベースストになってしまったようです。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2015年5月15日 (金) 17時43分
910さん,こんばんは。TBありがとうございます。
Giovanni Guidiという人,結構若いのに,随分と美しい音楽を奏でるものです。Eicherの目のつけどころっていいですねぇと思わせる作品でした。確かにThomas Morganも最近よくECMのレコーディングに登場していますよね。彼も30代半ばぐらいですから,どんどんこういうミュージシャンが世界では現れているっていうのはジャズ界にとっては心強いですよね。
ということで,追ってこちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2015年5月15日 (金) 21時48分
トラバありがとうございました。。
でも、入ってないの。。あとでよろしくお願いいたします。m(_ _)m
静謐で抑えめな感情表現がいいなぁ、と、おもいました。
それから、トーマス・モーガンの重さがいい塩梅のバランスなんだなぁ。。と。
トラバします!
投稿: Suzuck | 2015年5月16日 (土) 11時10分
Suzuckさん,こんにちは。TBありがとうございます。
私はTBのリトライでもへまをやらかしてしまい,申し訳ありません。
年齢を考えると,この表現力は異常って気がしますが,この甘美さはイタリアゆえって気もします。いずれにしてもいいアルバムでした。
投稿: 中年音楽狂 | 2015年5月16日 (土) 12時39分