ECM45周年で続々と旧譜がリリースされる中で,今日はSteve Kuhn。
本国のカタログではCD化されていないものでも,日本でだけリリースされているものがある。本作も随分前に一度CD化されたものだが,当時,LPを保有している私は敢えて買う必要もないかなぁなんて買い逃していた。だが,LPの再生環境が必ずしもよくない現在においては,やはりCDで買いたくなっていたのも事実だが,入手困難となっていた。現在では3枚組ボックスの一部として入手可能であるが,それもスルーしていた私である。だが,今回,レーベル45周年を記念して日本国内において再リリースされることとなり,今回ようやく購入したもの。
そもそも"Ecstasy"なんてタイトルからしてECM的だと思ってしまう私だが,ソロ・ピアノで展開されるこの耽美的な世界は,まさにECMである。Steve Kuhnはその後,保守的な方向への転換も図りつつも,アルバムを多数リリースしているが,ECMで出る彼のアルバムは,別のレーベルの作品とは一線を画しているように思えるから面白い。とにかく,いかにもECM的な響きを発散しており,この手のサウンドが好きなリスナーにとってはたまらない出来である。
聞く人が聞けば,こんなもんジャズちゃうわという文句が聞こえてきそうだが,別にいいのである。ECMレーベルの音楽というのは,その響きに身を委ねていればいいという考え方も成立するわけで,そういう意味では鑑賞音楽として成立する一方,アンビエンスとしても成り立ってしまうってことだと思う。だからこそ,ECMの音楽は"the Most Beautiful Sound Next to Silence"と称されるわけだ。甚だ私見ではあるが,ECMレーベルの音楽に魅かれるリスナーというのはそうした聞き方をしている人が多いのではないかと思っているが,いずれにしても,ECMというレーベルのカラー,換言すれば,Manfred Eicherという人の方向性と合致している感覚が非常に強い作品だと思う。よって,ECMレーベル好きという私の嗜好もあり,星★★★★☆。
その一方で,Steve Kuhnについては,Sheila Jordanとやったバンドのアルバムは"Playground"がボックスでリリースされたものの,"New Year's Waltz"が未CD化というのは,プロデュースがEicherじゃないせいかなぁ。でもそれを言ったら"Playground"も同じか。う~む。謎だ。
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スティーヴ・キューンもいいものを持ちながら、なかなかECMではCD化されにくいピアニストですよね。私は昔これをCDで買いましたが、さらにBOXセットまで買ってしまい、けっこう病気だなあ、と思ってしまいました(笑)。彼は他レーベルとは見せる顔が違うようですが、これもまたいいなあ、と思ってしまいます。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2015年5月13日 (水) 07時28分
910さん,こんばんは。TBありがとうございます。
おっしゃる通り,ECMのSteve Kuhnはほかのレコーディングとの差異を感じさせますよね。でもいいアルバムが多いですよね。どうせなら全部CDで出せばいいのにと思ってしまいます。
Eicherの気まぐれなんでしょうか(笑)。
投稿: 中年音楽狂 | 2015年5月13日 (水) 19時18分
いいアルバムですね。長らく楽しんだトランスより、好み。
ECMにはECM向けでこのレベル、ヴィーナスにはあのレヴェル、という技は改めて凄いことだと思います。
投稿: ken | 2016年1月12日 (火) 12時52分
kenさん,おはようございます。TBありがとうございます。返信が遅くなりました。
VenusはVenusで真っ当な演奏するKuhnだと思いますが,ECMの作品は別次元の演奏になりますねぇ。いい作品が多いですから。
投稿: 中年音楽狂 | 2016年1月16日 (土) 09時22分