Cassandraが変化球なら,これは正調Billie Holidayトリビュートと言いたいJosé James盤
"Everyday I Had the Blues" José James(Blue Note)
Scott Henderson,Billy Cobhamとハードな路線が続いたので,ここはちょっと落ち着いた音楽ということで,本日はJosé Jamesである。国内盤は結構早く出ていたが,輸入盤のリリースを待っていたら,時間が経ってしまったが,まぁよかろう。
今年はBillie Holiday生誕100周年ということで,Cassandra Wilsonもトリビュート盤をリリースし,あれはあれで素晴らしい出来であったが,ほぼ同時期に出たJosé James盤を,入手が少し遅れてしまったが,ようやくちゃんと聞くことができた。Cassandra Wilson盤はあれはあれで高く評価した私であるが,Cassandraがどちらかというと変化球という色彩もある中,このJosé James盤は,極めて正統的なジャズ・ヴォーカルとして,きっちりトリビュートした感覚が強いアルバムで,とにかく渋い出来である。正直言って,Cassandra盤とどっちが好きかと聞かれたら,こっちと言ってしまいそうな気がする。このブルージーな感覚,真正ブルーズ・シンガーをも凌駕すると言っては言い過ぎか。それほどしびれるアルバムなのである。
ここで聞かれるJosé Jamesの声もよければ,伴奏の3人も素晴らしい。相当落ち着き払った演唱とも言えるので,刺激が少ないと感じる向きもあろうが,これはBilly Holidayの音楽を,José Jamesの正統的解釈で現代によみがえらせるという意味で,大成功していると思えるのである。私にとっては,これは文句のつけようのないヴォーカル・アルバムであり,数あるJosé Jamesのアルバムの中でも最も高く評価したい逸品。とにかく,これは真剣かつ真面目なトリビュート・アルバムである。滅多にジャズ・ヴォーカルを買わない,あるいは聞かない私であるが,これは別格として評価したい。星★★★★★。私の感覚では,今年のベスト盤の一角を担うと思っている。それぐらいの作品である。こんなアルバムに仕上げたプロデューサーとしてのDon Wasの手腕も見事。さすがだ。
Personnel: José James(vo), Jason Moran(p, rhodes), John Patitucci(b), Eric Harland(ds)
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音楽狂さん
こんにちは。ジャケットを含めたパッケージとしてとても完成度の高い作品ですね。Don Was流石だなって感想をもちました。こうした伝統を大切にしつつも現代のフィルターで世に作品を出すという能力がDon Wasは凄いです。80年代的な色に染まっていたストーンズもこっちよりに戻しましたしね。
ドブルースでない分、TPOを選ばず聞けるアルバムとなったのがよかったです。
こちらからもリンクさせて頂きます。
http://musicpromenade.blogspot.com/2015/05/jose-james-yesterday-i-had-blues-music.html
投稿: とっつぁん | 2015年5月24日 (日) 07時15分
とっつぁんさん,おはようございます。
今やDon WasはBlue Noteの社長ですが,Manfred Eicherのようなオーナー社長ではないですが,A&R兼プロデューサー業を継続しているのはいいことですね。この作品もそうした活動の果実です。
これはマジでいいと思います。彼がプロデュースしたStonesやBonnie Raittも久々に聴きたくなりました。
投稿: 中年音楽狂 | 2015年5月24日 (日) 10時01分
閣下、トラバありがとうございました。
バレンタインデーの朝にホセ・ジェイムズに「Good Morning…」と語りかけられる幸せ。。を かみしめることができた名盤だとおもいます。(意味不明)
素晴らしいトリビュート作だとおもいました。しびれましたね♪
投稿: Suzuck | 2015年5月25日 (月) 10時16分
Suzuckさん,こんばんは。TBありがとうございます。
記事には書かなかったんですが,この人の声って色気あるなぁなんて思っている私です。マジでナイスなアルバムなので,幅広い方々に聞いてもらえるようプッシュしちゃいますね。
ただ,アルバムが出る前に来てしまうのは,プロモーションとして問題でしたね。聞きに行かなかったのはもったいなかったと思ってます。
投稿: 中年音楽狂 | 2015年5月25日 (月) 21時21分