Joey Calderazzoの新作は彼らしさが戻りつつある。
"Going Home" Joey Calderazzo(Sunnyside)
私はJoey Calderazzoを贔屓にしていた。と,なんでいきなり過去形なんだと言われそうだが,Blue Noteレーベルからアルバムをリリースしていた頃の彼の演奏は,ハード・ドライビングな感覚がなんとも爽快だったのだ。しかし,近年はそういう感覚が失われていき,随分枯れた感じがしてくるようになり,出るアルバムは購入するものの,なんだかなぁって思っていたのも事実である。だから,このブログでも前作のライブ盤を取り上げた時も,かなりアンビバレントなトーンの記事を書いてしまった(記事はこちら)。だから,このアルバムのリリースは認識していても,以前のように即購入ということにはならなかったのである。と言うより買うのを控えていたというのが実態であった。
しかし,本作を信頼できるブログのお知り合いの皆さんが取り上げられ,概ね好意的な評価を拝見して,遅ればせながら発注したもの。結論からすれば,近年の作品では最も気に入ったと言ってもよく,Calderazzoも復調してきたなぁって感じさせてくれる。だが,昔のハード・ドライビングさやスピード感ではなく,成熟に伴うタッチの変化が感じられるのも事実である。それをよしとするか否かはリスナーに委ねられるわけだが,正直言ってしまえば,私はやっぱり昔の方が好きってことになる。これは今回の選曲,あるいは演奏がミディアム中心というところがあるからだと思うが,その中に,彼らしい切れ味鋭いフレーズも織り込まれていて,その瞬間は「いいじゃん」と思ってしまうのだから,私もいい加減なものだ。
本作には一曲現在のバンマスであるBranford Marsalisが客演しているが,あくまでも客演って感じである。Branfordについても,私は積極的リスナーではなくなっていることと,Joey Calderazzoへの関心が高まらなくなったのは,実は同じような理由によるものではないかと思ってしまうが,それでも,本作が私の中でのCalderazzoリバイバルにつながるかもしれない。星★★★★。
本来であれば,間もなく行われる日本でのライブに足を運んで,現在のCalderazzoを確認すべきなのだが,それを許さぬ事情があり,行くことができないのは残念である。行かれる方にその感想をお伺いできればと思う。
Recorded on August 17 & 18, 2014
Personnel: Joey Calderazzo(p), Orlando le Fleming(b), Adam Cruz(ds)
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元祖私的イタリアの伊達男、Joey Calderazzo。 ブログ内を検索したら [続きを読む]
音楽狂さん、こんにちは。
iTunesのライブラリ移行の大変さは1度やっているだけに、その面倒くささはよくわかります。大変お疲れ様です。容量も半端ないでしょうし・・。
一昔前の全編にわたる彼のキレ味を求めてしまうと物足りなさはあるのかもしれませんが、ピアノトリオの基準的な演奏で普段聞きにはぴったりなアルバムでした。
ただ、ライブで新たな感動を予想できるまでは動かなって気もします。
リンクありがとうございました。
こちらからもリンクさせて頂きます。
http://musicpromenade.blogspot.com/2015/04/joey-calderazzo-going-home.html
投稿: とっつぁん | 2015年4月19日 (日) 17時22分
とっつぁんさん,こんばんは。
はい。データ量半端じゃないんで,マジで大変でした。それはさておき,Joey Calderazzoですが,正直Branfordのレーベルからの作品は,彼の魅力を削いでいるとしか思えなかったので,前作でライブが出て,今回もまずまずの出来だったので,だいぶ印象は回復してきました。だからこそライブの場でチェックしたかったんですが,そうもいかない事情があり,残念です。
もう一度,彼のハード・ドライビングな演奏に触れたいと思っている私です。
投稿: 中年音楽狂 | 2015年4月19日 (日) 21時55分
閣下、良いアルバムだとおもいましたよ。
先進的なものだけが 良い基準ってだけではないとおもうのですが。。
普通のジャズの楽しさがつまっていたかなぁ。。
と、思いました。
聴いていいて嬉しくなるアルバムでした。
投稿: Suzuck | 2015年4月20日 (月) 21時26分
Suzuckさん,こんばんは。返事が遅くなりました。TBありがとうございました。
いいアルバムですよ。私もそう思ってます。それは信じて下さいね(笑)。
投稿: 中年音楽狂 | 2015年4月22日 (水) 23時13分