Antonio Sanchez@Cotton Club参戦記
約1ヶ月ぶりにライブに行ってきた。今回はAntonio Sanchezである。Antonio Sanchezは私はPat Methenyとのライブで何回か見ているが,それはそれはシャープでソリッドなドラミングを聞かせてくれる。今年は映画「バードマン」のサウンドトラックでも話題になったが,リーダーとしても優れたアルバムをリリースしているから,彼のバンドであるMigrationでの来日は非常に楽しみであった。
結論からすれば,期待通り,あるいは期待を上回る演奏だったと言ってよい。リーダーを支えるメンツも,すべて自らのリーダー作を持つ実力者ばかりであるから,おかしな演奏になることはないと思ったが,ライブの場でもその実力は発揮されていたと言ってよい。
今回,ライブを見ていて,演奏そのものは極めて現代的な響きの強いジャズであったが,何が強烈かと言えば,Antonio Sanchezの煽りだと思った。バックから強烈にフロントを煽るって感じなのである。手数は多いのだが,テクニックの品評会のようなかたちにはなっておらず,音楽的な魅力を保っていたのは立派である。今回私が見に行ったセットはアンコール含めて,約90分で5曲という長尺の演奏だったと言えるが,アンコールのThelonious Monkの曲(多分"Hackensack"だったような...)のややいじり過ぎたアレンジを除けば,非常に高揚感に満ちたいいライブであった。
もちろん,ケチをつけようと思えばつけられないわけではない。演奏の構成は,ある意味ワンパターンだと言われても仕方がない部分もあろう。だが,そこから得られる興奮度を考えれば,そんなことは些末なことに思えてしまう。身体が反応してしまうのである。頭をすっ飛ばして,身体に訴求するってのはある意味凄いことであるから,ここは些細なことには目をつぶる(きっぱり)。
いずれにしても,Sanchez以下4人の面々はセットを通じて好演を披露し,非常に満足度が高かった。Ben Wendelはアルバムで聞くより,ずっと魅力的に聞こえたし,John Escreetは,コンベンショナルなフレージングもOK,更にMatt Brewerはナイスなソロを連発という実力発揮のライブであった。私にとってちょっと残念だったのは,Cotton Clubでは恒例の演奏終了後のサイン会が開催されなかったことで,いつもなら「Antonio Sanchezと私」とか,戦利品としてサイン付CDの写真をアップするところだが,それがないのは惜しいとしても,まぁ仕方あるまい。
もう一つ面白かったのは,Antonio Sanchezの聴衆からの拍手への対応っぷりが,Pat Methenyみたいだったことである。拍手に応えての立ち姿は絶対Patに影響されているなぁなんて思っていた。こういう演奏でも8割程度の入りにしかならないのは惜しいが,私は十分に元を取ったと思っている。尚,写真はCotton Clubではなく,4/14のBlue Noteの模様を拝借したもの。まぁ,ポジションも一緒だし,雰囲気ってことで。
Live at Cotton Club on April 15, 2nd Set
Personnel: Antonio Sanchez(ds), Ben Wendel(ts), John Escreet(p, rhodes), Matt Brewer(b)
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4月16日の1stを視聴しました。7割入っていたかどうか、、、、。Antonio SanchezのDrumは何度も聞いていますし、煽り方、締め方、兎に角、ソリッドな演奏スタイルの音楽指向であれば、この人の右に出るJazz Drummerはいないと思います。但し、DrummerがLeaderのBandは難しいですね。BassのMatt Brewerは強い音が出せて、リズムセクションは完璧と思います。メロディーを奏でるSaxとPianoですが、リズムセクションに比し強さが足りなかったかと。最初の3曲ぐらい良かったのですが、Brad Mehldauと演奏していたConstellationを同じアレンジで始めた途端、どうしてもPianoをCDのBrad Mehldauと比較してしまうので走らなさ、弱さが目立ち、これは破綻しかねないなあという感じがしました。最後にSaxが頑張ってくれて何とか纏まったような気がします。余りこなれていない曲を演奏したような印象。或いはアレンジをCDと変更して、Pianoがリラックスできる演奏だったら良かったように思います。John Escreet、楽譜をあっちこっち引っくり返しながら必死で演奏していた風でした。
投稿: カビゴン | 2015年4月17日 (金) 12時06分
カビゴンさん,おはようございます。
確かにそうですねぇ。ドラマーがリーダーでも違うこともあるとは思いますが,このバンドの力関係ではそうなってしまうかもしれません。おっしゃる通り,確かにJohn Escreetは譜面と首っ引きでした。
聴衆は私が行ったときはほとんどSanchez目当てみたいでしたが,16日はどうだったでしょうか?やっぱりそうなりますかね(笑)。
投稿: 中年音楽狂 | 2015年4月18日 (土) 10時08分
もちろんSanchez目当ての人ばかりだと思います。小生は、Matt Brewerも気に入っているので、あの分厚い低音を楽しんで聞いていましたが。
投稿: カビゴン | 2015年4月18日 (土) 11時45分
カビゴンさん,まぁそうですよねぇ。私は結構John EscreetとBen Wendelにも注目していました。って言うか全員ですね(笑)。Ben Wendelは最近の白人テナーっていうイメージでしたが,まぁ頑張っていたと思いました。
投稿: 中年音楽狂 | 2015年4月18日 (土) 13時44分