Vijay IyerのECM第2作も素晴らしい出来。
"Break Stuff" Vijay Iyer Trio(ECM)
私はVijay IyerのECM第1作,"Mutations"も高く評価したが,前作から1年も経過しないという短いインターバルで新作が届けられた。これは,Manfred EicherのVijay Iyerに対する評価や期待値の裏返しと考えてもよいように思えるが,まさにそれを裏付けるかのような快作である。
前作が,Vijay Iyerの作曲家としての表現に力点が置かれていると感じさせたのとは異なり,今回は彼のレギュラー・トリオによる作品であり,ジャズ的なアプローチに徹したものとなっている。そして,Vijay Iyerの知性を感じさせる理知的な響きと,ジャズの持つスリリングな部分が丁度いい具合にリンクし,これが素晴らしい出来。このトリオは既に11年のキャリアになるようであるが,緊密度も十分。そして,彼らの音楽を捉えた優れた録音とも相俟って,これには年初早々興奮させられたと言ってしまおう。先日取り上げたクリポタもよかったが,私はディスクとしては,こちらを更に高く評価してしまう。
本作はVijay Iyerのオリジナルに加えて,Monkの"Work",Billy Strayhornの"Blood Count",そしてColtraneの"Countdown"をやっているが,それらの曲が見事にオリジナルに溶け込んでいるのだ。そして,非常に面白いと思ったのが"Hood"なのだが,これがレーベル・メイトであるNik Bärtschにも通じるミニマル・ファンク的な響きを聞かせるところが,Nik Bärtschも好きな私にはポイントが高かった。そして,これが本当にスリリングなのである。いずれにしても,年の初めからこんなに優れたアルバムを聞けて,まじで幸せって感じである。これには星★★★★★を喜んで謹呈しよう。
それにしても,今年聞いた新譜はどれも出来がよい。こいつは春から縁起がいいわい(笑)。
Recorded in June, 2014
Personnel: Vijay Iyer(p), Stephan Crump(b), Mrcus Gilmore(ds)
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実はACTでのトリオ作品は1枚しか聴いてないのですが、当時から才気あふれる演奏をしていて、ECMに移って、多少音が変わったものの、相変わらずの演奏でした。ECMでもトリオで十分やっていけるなあと、静かだけに流れないので、良かったでした。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2015年1月22日 (木) 07時02分
910さん,続けてこんにちは。こちらもTBありがとうございます。
私はこれってすごくよく出来たアルバムだと思っています。Eicherってやはり才能を見逃しませんね。これからもECMでの活動を期待したいですよね。
投稿: 中年音楽狂 | 2015年1月24日 (土) 11時44分
この星の差について、一献の座をもうけたい。笑
クリポタに引き続き、ヴィジェイもすげー素晴らしかったです!
ずっと、前から本人は「まず、リズムありき」って、宣言してたんですが、時代が追いついてきた感じ。。
ディジョネットも良かったけど、このたびは2作で力つきてしまいました。。
投稿: Suzuck | 2015年1月26日 (月) 18時20分
Suzuckさん,こんばんは。TBありがとうございます。
この星の差は「好み」の問題です(笑)。それは冗談ですが,多分求めるものへの近接度の違いでしょうかね。一献の座,謹んでお受け致しますぜぃ(爆)。
それにしても,このアルバムはよかったです。よい演奏が,よくプロデュースされていると,こう感じてしまうんだろうなぁなんて思いました。
ということで,こちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2015年1月26日 (月) 20時20分