ジャズ不毛の地(?),フィンランドからの快作(笑)
"Aki Rissanen / Jussi Lehtonen Quartet with Dave Liebman"(Ozella)
フィンランドと言えば北欧である。ジャズ界において,北欧と言えば,ノルウェーかスウェーデンと相場が決まっていて,正直フィンランドの影はこの2カ国と比べると,相当薄いというのが実態だろう。ノルウェーやスウェーデンは北欧と言っても,これまたジャズの盛んなデンマークと海峡をはさんで近い距離にあるが,フィンランドは昔で言えば東欧文化圏に属していたと考えれば,まぁ仕方がないことなのかもしれない。よって,このアルバムに参加した現地のミュージシャンについても,名前も聞いたことがない。
そのような私が,このアルバムを買うに至った理由は,偏にDave Liebmanである。毎度おなじみ新橋のテナーの聖地,Bar D2において,マスターから紹介されて(煽られて?)購入したものである。なんせフィンランド盤なので,一旦買い逃すと,次はいつ買えるかわからないという危惧があったのも事実であり,仕事帰りに新宿に立ち寄ってゲットしたものである(残っていてよかったわ~)。
オープニングから,動的なイントロが聞こえてきて,そこにLiebmanのソプラノが切れ込むさまはなかなかよい。こういうのを聞くと,こっちが知らないだけで,世界にはいろいろなミュージシャンがいるのだなと思わせる(当たり前だが...)が,音楽的には少なくともノルウェーの感じとは異なるし,スウェーデンとも異なるように思える。私の感覚では,やや先鋭性を感じさせるノルウェー,暖かさを感じさせるスウェーデンって感じなのだが,ここでの音楽はスウェーデン寄りながら,よりハイブラウでダークなアプローチと言ってもいいかもしれない。まぁ,それはDave Liebmanが持ち込んだトーンかもしれないが,なかなかフィンランドも侮れないと思わせるに十分である。
そして,このアルバムを聞いていて,私はLiebmanのテナーの好調さをより顕著に感じてしまったのだが,それはソプラノがいけていないということでは決してない。テナーが殊更いいので,3曲目の"Internal Affairs"で出てくるLiebmanのテナーに,ついつい耳を奪われてしまった私である。4曲目"Point Marie"で聞かせるテナーによるバラッド表現もこれまた素晴らしい。8曲目"In the Corner"のテナーなんて,完全にColtrane化しているしなぁ。う~む,Liebman,絶好調ではないか。フリー的なアプローチが強まっても変わらないってのも凄いねぇ。Dave Liebmanは多作であるが,全編ゲストとしてワンホーンで通すというのもなかなかない中で,本作はこっちの期待に応えてくれた演奏だと言ってよい。私としてはLiebmanにはこういう感じでどんどんやって欲しいなぁと思っているのだが,とにかくフットワーク軽いからなぁ(苦笑)。
いずれにしても,私がフィンランドのジャズに触れる機会を作ってくれただけでも価値があったと思わせる一枚。主題の「不毛の地」は取り消させて頂こう。フィンランドの皆さん,大変失礼しました。まぁ,もう少しLiebmanが煽られるぐらいでもいいような気がするが,それは望み過ぎか?ってことで星★★★★。それにしても,ベースがいい音を出していると思うのは私だけ?
Recorded on April 25 & 26, 2013
Personnel: Aki Rissanen(p), Jussi Lehtonen(ds), Jori Huhtala(b), Dave Liebman(ts, ss, wooden-fl)
ちなみに,ネットに彼らのライブの映像があったので,貼り付けておこう。まぁ,こういう雰囲気ってことで。
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