優秀な友人たちに囲まれて作り上げたKenny Wheelerのラスト・アルバム
"Songs for Quintet" Kenny Wheeler(ECM)
昨年9月に惜しくもこの世を去ったKenny Wheelerによるラスト・アルバムである。情報によれば,ほかのミュージシャンと共演したのもこの時が最後ということである。共演者はKenny Wheelerの健康状態を理解した上で,このアルバムのレコーディングに臨んだであろうことが想像される演奏である。
既にこの時,Kenny Wheelerの健康状態は完璧ではなかったと思われ,ここで聞かれるKenny Wheelerのフリューゲル・ホーンには正直言って力強さは感じられない。だが,逆にそうしたトーンによるリリカルさと,おそらくはこれ以上はこのメンツからは考えられないであろう素晴らしい助演ぶりによって,このアルバムは「静かな感動」を呼ぶものとなっている。もちろん,真っ当に評価すれば,本作を最高のアルバムと呼ぶことはできないだろう。だが,助演陣4人がKenny Wheelerを静かに鼓舞しながら演奏を展開するさまは,彼らのよきミュージシャンシップを感じさせるものと思う。そして,そうした演奏を展開させたのは,Kenny Wheelerその人へのリスペクトだったように思えるのである。特に,Stan SulzmannとJohn Parricelliの好演が光る。
敢えて本作を,本来ならばKenny Wheelerが85歳になるはずであった彼の誕生日近くにリリースし,更にECMとしてはおそらく初のデジパック仕様としつつ,Kenny WheelerのECMのカタログまで付けたところには,Manfred EicherのKenny Wheelerへの強い追悼の心持ちすら感じてしまう。そうした要素を踏まえれば,私としてはこのアルバムに星をつけることに躊躇を感じる。むしろ,静かにこのアルバムを聞きながら,Kenny Wheelerを追悼することこそ,本作への正しい接し方のように思う。
R.I.P.
Recorded in December 2013
Personnel: Kenny Wheeler(fl-h), Stan Sulzmann(ts), John Parricelli(g), Chris Lawrence(b), Martin France(ds)
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フリューゲルホーンのフレーズはちょっとラフな感じもしましたが、それが味にもなっているし、曲自体が哀愁漂ういい曲ばかりなので、聴き入ってしまいました。これが遺作となってしまったのが残念です。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2015年1月18日 (日) 07時48分
910さん,こんにちは。TBありがとうございます。
今回,Steve Lakeが久々に絡んでいることにも何かあったんだろうと深読みをしたくなる作品でした。Kenny Wheelerを支えたバックのミュージシャンの心意気を強く感じます。
ということで追ってこちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2015年1月18日 (日) 11時04分