ECMの新譜シリーズはちょっとお休みして,今日はOtis Brown III。
"The Thought of You" Otis Brown III(Blue Note/Revive)
ECMの新譜としてJack DeJohnetteのシカゴでのライブ盤もデリバリーされているのだが,あちらは聞くのに相応の覚悟がいる(笑)ってことで,ちょっと息抜き(?)に昨年リリースされたこのOtis Brown IIIのアルバムを遅ればせながら取り上げることにしよう。
このアルバム,冒頭の音が出てきた瞬間,おぉっ,Robert Glasper的!と思わせるのだが,Glasper全面参加に加えて,プロデュースもOtis Brown III本人に加えて,Glasperの盟友Derrick Hodgeが務めているから,さもありなんって感じではある。だが,Robert Glasperのアルバムよりも新主流派的なサウンドが濃厚で,ややソウル/R&B色が強いGlasperがダメでも,こっちならいいっていうリスナーも多そうに思える。
いずれにしても,昨今の優秀なドラマーが多いジャズ界において,またも才能に溢れるドラマーのリーダー作が生まれたと言っても過言ではない。もちろん,この人脈ゆえの音づくりって気がしないでもないが,リーダーの書くオリジナルもなかなかに魅力的であり,これは見逃すには惜しい作品である。Gretchen Parlatoをフィーチャーした"You're Still the One"なんて,彼女のアルバムに入っていても全く不思議ではないトーンで,こういうムードが好きなリスナーは間違いなく気に入るであろうし,比較的静的なイメージを持ちながら,よき時代の新主流派的な響きを濃厚に感じさせるところも,私は結構好きな作品である。Gretchenともどもフィーチャーされるヴォーカリスト,Nicki Rossはやや声のトーンが細いかなと思うが,ソウルという観点なら問題はそんなに感じないかな。ということで,やや甘めの星★★★★☆。
尚,本作は昨年の作品ではあるが,リリースから半年も経過していないということで,新譜扱いとさせて頂く(但し,今年のベスト盤対象とはしない)。
Personnel: Otis Brown Ⅲ (ds, perc), John Ellis (ts, b-cl), Keyon Harrold(tp), Robert Glasper(p, rhodes), Shedrick Mitchell(org), Ben Williams(b), Nir Felder(g), Bilal Oliver(vo), Gretchen Parlato(vo), Nikki Ross(vo), Derrick Hodge (perc)
« 優秀な友人たちに囲まれて作り上げたKenny Wheelerのラスト・アルバム | トップページ | Jack DeJohnetteの新譜は襟を正して聞きたくなるシカゴ派正調フリー・ジャズ »
「新譜」カテゴリの記事
- Jeremy Peltの新作がなかなかよい。(2025.03.19)
- Jon Anderson and the Band Geeksのライブ・アルバム:ここまで行くと潔いとすら思ってしまう。(2025.03.18)
- John Patitucciによるパワー・トリオ:悪かろうはずなし。(2025.03.14)
- Chick Coreaがこの世を去って4年。まだまだ残っているレガシー。(2025.03.07)
「ジャズ(2015年の記事)」カテゴリの記事
- 2015年の回顧:音楽(ジャズ)編(2015.12.30)
- 2015年の回顧:ライブ編(2015.12.27)
- やっぱり好きだぜ,Mike Stern(笑)(2015.12.23)
- Muthspiel~Johnson~Bladeといういいメンツによるスタンダード集。(2015.12.19)
- ブート音源で聞くJoe Lovano~Chris Potterによる「至上の愛」(2015.12.15)
コメント
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: ECMの新譜シリーズはちょっとお休みして,今日はOtis Brown III。:
» Otis Brown III: The Thought Of You (2014) 気持ちよさ、と、ジャズっぽさ [Kanazawa Jazz days]
丁度一年前、San Diegoの夕暮れ時、Normのクルマのなかで聴いたアルバム。近況について話をしていたのだけど、ふっとCDの音が気になった。Normはニヤっとして、ジャケットを手渡してくれた。帰国の後に入手。
ジャズっぽさ、を主張するサックスとトランペット、そう...... [続きを読む]
« 優秀な友人たちに囲まれて作り上げたKenny Wheelerのラスト・アルバム | トップページ | Jack DeJohnetteの新譜は襟を正して聞きたくなるシカゴ派正調フリー・ジャズ »
面白いアルバムですね。はじめて聴いたとき(サンディエゴの知り合いのクルマ)に、おっと思いました。
ほどよいグルーヴ感ですねえ。
投稿: ken | 2016年2月10日 (水) 14時49分
kenさん,おはようございます。埋もれていたCDの中から見つけ出しました(笑)が,再聴はできていませんが,確かにほどよいグルーブ感だったような気がします。
いずれにしても,最近のドラマーはみんな多才で優秀ですよね。
投稿: 中年音楽狂 | 2016年2月11日 (木) 07時44分