「6才のボクが、大人になるまで。」:これは企画の勝利と言ってもよいが,作り上げたスタッフが立派。
「6才のボクが、大人になるまで。("Boyhood")」('14,米,Universal)
監督:Richard Linklater
出演:Ellar Coltrane,Patricia Arquette,Ethan Hawke,Lorelei Linklater
今年のオスカー・レースを,日本公開はこれからの「バードマン」と争うと言われている作品である。Ellar Coltrane扮するMasonの6才から18才までの"Boyhood",即ち少年時代の成長を通じて,家族の姿を描く映画で,それならば大河ドラマと言ってもよいものだが,12年間の時間の流れの中で,それぞれの役柄を演じる役者が同じというのが凄い。企画しても,実現は難しいだろうと思われるこうした作品を,よくぞ撮り上げたというのが実感である。これならば,高い評価を受けるのも当然と言える。
話は家族の情景,あるいはその家族に起こることを淡々と描くに過ぎないのだが,それが12年分積み重なることによる情感に満ちており,誰しもが「既視感」を抱くのではないかというストーリー展開が,何とも言えない感動を誘うように思えるのだ。特にラスト近くのPatrica Arquetteの台詞には子を持つ親(巣立っていく子を送りだす親)の情感に満ちており,自分自身に投影してしまう観客が多かったのではないだろうか。私はこの映画で涙を流すことはなかったが,私の隣のご婦人が後半,鼻水ずるずる状態だったのは,おそらくはこうしたシーンに琴線を刺激されたものと思っている。
いずれにしても,ギミックも大袈裟な仕掛けもなく,時の移り変わりの中で映画を製作し,それがまたよく出来ているのだから,私には何の文句もない。監督,役者,j脚本,編集,撮影のどれがも立派。これは天邪鬼の私でも,万人に勧めたくなる佳品である。ということで,本作には喜んで星★★★★★を謹呈しよう。いや~,見に行ってよかった。こうなると,「バードマン」もさっさと公開して欲しいなぁ。
« Max IonataとDado Moroniで今度はStevie Wonder集だ。これが相当楽しめる。 | トップページ | The Thing + Thurston Moore:新年からの大轟音(笑)。 »
「映画」カテゴリの記事
- 「アラビアのロレンス」を大スクリーンで観る至福(Again:笑)。(2025.04.07)
- Netflixで「正体」を見た。(2025.04.02)
- 「教皇選挙」を見に行ったが,実に面白かった。(2025.03.30)
- Amazon Primeで見た「ニューヨーク1997」。B級もここまで行くと笑える。(2025.03.23)
コメント
« Max IonataとDado Moroniで今度はStevie Wonder集だ。これが相当楽しめる。 | トップページ | The Thing + Thurston Moore:新年からの大轟音(笑)。 »
あけましておめでとうございます。
ことしもよろしくお願いいたします。
新作映画を悉く観ない私にとって、
貴兄の映画情報は大変参考になります。
これ面白そうですね!
こういう手作り感の映画(だと思いいます)が良さそうです。
あと本物タイガー戦車が出る『フューリー』は、
映画館で観たいと思ってます。
投稿: 波 平 | 2015年1月 4日 (日) 08時32分
波 平さん,あけましておめでとうございます。こちらこそ本年もよろしくお願いします。
この映画は一見に値する映画だと思います。掛かっている劇場数は少ないですが,動員数は結構多いので,それなりの期間は上映しているのではないでしょうか。
「フューリー」も観たい映画ですねぇ。どうしようかな(笑)。
投稿: 中年音楽狂 | 2015年1月 4日 (日) 14時24分