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カテゴリー「ジャズ(2014年の記事)」の記事

2014年12月30日 (火)

2014年の回顧(その4):ジャズ編

今年の回顧シリーズも本日が最後である。昨日も書いたが,今年はCDの購入枚数はボックスものが結構あったので,かなりの枚数となっているが,点数という意味では従来よりも減ったはずである。ボックス・セットは所謂大人買いってやつだが,昔よりは情報量が減少している(というよりも情報を収集する意欲の減退だったり,リアル・ショップへ行く回数の減少)こともあって,そっちに走っているって話もある。

そうは言いながら,私が今年「新譜」カテゴリーでアップした記事は90件近くあるし,買っても記事をアップしていないアルバムも結構あるので,少なくとも月10点ぐらいは買っている感じにはなるだろうなぁ。家人に言わせれば,これでも異常ってことになるだろうが,まぁ趣味ですから(笑)。

Three_times_three閑話休題。今年のジャズ・アルバムの中で,何を選ぼうかというのは,実は聞いた瞬間から決めていた。それはAntonio Sanchezの"Three Times Three"である。これこそジャズという音楽の持つ「スリル」を見事に体現したアルバムであって,3種類の異なるトリオで見事な演奏を聞かせたAntonio Sanchezにはまさに脱帽であった。Antonio Sanchezについては,彼が音楽を担当した"Birdman"のSanchezによるドラムスのスコアが,オスカーの音楽部門の候補に該当しない等とアカデミーから決定が下されるというひどい仕打ちを受けているが,そのような不幸があったとしても,彼が"Three Times Three"という傑作をモノにしたという事実は一切揺るがない。私としては,近年最も興奮して聞いたジャズ・アルバムだと言ってもよいぐらいである。Spark_of_life

実のところ,Antonio Sanchezのインパクトが強過ぎて,ほかのアルバムがかすんだとさえ思えるのだが,それに対抗しうる印象を与えたのは,音楽的な質は全く違うが,Marcin Wasilewskiの"Spark of Life"である。彼のトリオに今回はJoakim Milderのテナーが一部に加わるが,彼の持つ美学に一切揺るぎはなかったと言える。Wasilewskiトリオが客演したJacob Youngの"Forever Young"もよかったので,合わせ技一本って感じである。やはりこの人たちは私を裏切らないなぁと思わされた。

Pat_metheny_unity_group

そして,本年最も期待させ,そして期待に応えたアルバムはPat Metheny Unity Groupの"KIN(←→)"だと思う。私はこのアルバムを聞いた時の興奮をブログにも書いているが,その時にはこれを今年のナンバー1に据えてもいいぐらいだと思っていた。その後の来日公演も非常に楽しめるものであり,今年を代表するアルバムの1枚だとは思うが,"Three Times Three"と比べると...って感じになってしまう。

それにしても,今年はAntonio Sanchezである。このほかにも,Enrico Pieranunziとの"Stories"という傑作もあったし,"Birdman"のスコアの件も含めて,"Jazzman of the Year"はAntonio Sanchezをおいてほかにないと言える。本当に大した人である。

Hamburg72番外編としては,Keith Jarrett Trioの"Hamburg '72"の素晴らしさを改めて書いておかねばなるまい。ECMの蔵出し音源はえてして強烈なものが多いが,まだまだあるんじゃんと言いたくなるような出来であった。いずれにしても,Charlie Hadenが亡くなった後のManfred Eicherの対応はこれまでにないようなものであり,彼がECMレーベルにおいて,あるいはManfred Eicherという人にとって,どういうポジションにあったのかということを痛切に感じさせるものであった。

このほかではVijay Iyerの"Mutations"やTord Gustavsenの"Extended Circle"等,やはりECMの作品は私の心を捉えたものとして記憶に残る。Fred Herschの"Floating"も,来日公演の記憶とともに忘れられない佳作だが,Herschにはこれよりもいい作品があると思った。そして,Brad Mehldauの問題作"Taming the Dragon"というのもあったが,これは来年3月のMehlianaとしての来日公演を目撃してから,改めて考えることになりそうな作品と思っている。総じて,今年も充実したジャズ作品に恵まれたとは思うが,若干小粒だったかなぁという気もする。しかし,いい作品はいい作品として,それぞれに光るものがあり,来年以降も優れた作品と出会いたいなぁと思わせるには十分であった。

2014年12月25日 (木)

ジャズ・ギタリスト,John Scofieldが楽しめるライブ盤

Pablo_held001

"The Trio Meets John Scofield" Pablo Held (Pirouet)

先日,ショップをうろついていて,気になって購入した一枚である。正直言って,私は昨今のJohn Scofieldの活動にそれほど関心がある方ではなく,私の中では今でもデニチェンとのバンドが最高だったと思っている。だから,MSMWの第2作も購入していないぐらいなのだが,それでも,来年にはAllman BrothersのWarren Haynes率いるジャム・バンドGov't Muleとの共演作"Sco-Mule"のリリースが控えており,「ロックだぜぃ」的なノリを期待する私は間違いなく購入するだろう。

そのJohn Scofiledがドイツの若手ピアニストPablo Heldのトリオに客演するという,極めてジャズ的なセッティングでのライブ盤である。こういう感じの編成でのジョンスコというのは久しぶりのような気がして,ついつい購入してしまうのだから,結局好きなんじゃん(笑)。

編成が普通だからと言って,ジョンスコが普通のフレーズを弾くわけではなく,相変わらずのウネウネ・フレーズを弾き倒しているが,セッション的な演奏だったとしても,これはなかなか悪くないアルバムである。これはリーダーのトリオが,演奏をレギュラーで継続して,コンビネーションがある程度出来上がっているところが大きいのではないかと思う。そこにゲストにジョンスコが加わったからと言って,通常の彼らの演奏ぶりに影響が出ていないところはなかなか立派である。まぁ,3曲目の"Nocturn"前半部のようなアプローチがジョンスコに合っているとは言い難い部分もあるし,ジョンスコらしいところは抑制されているようにも感じるが,全体を通して聞けば,これはなかなかの力作だと思う。

4曲目の"Imaginary Time"はジョンスコのオリジナルにしてはジャズ・フレイバーが強いが,これってBlue Note時代のJoe Lovanoとのクァルテットでやっていたんだねぇ。さもありなん。これが入った"What We Do"って保有していたかどうかもよく覚えていないが,買ってないかもなぁ(苦笑)。

そして,最後はJoni Mitchellの"Marcie"であるが,アルバム"Song to a Seagull"からの渋い選曲。何,ジョンスコがJoni Mitchellを弾くのか?と思ってしまうが,これはアンコール・ピースらしく,ジョンスコはテーマとアドリブを楚々とした感じで弾いているようなものだが,美しくアルバムを締めるには丁度よい選曲だったと思う。こういうのもできるんだねぇと妙な感心の仕方をしてしまった。ということで,星★★★★。

Recorded Live at Philharmonic Hall, Cologne on January 31, 2014

Personnel: Pablo Held(p), Robert Landfermann(b), Jonas Burgwinkel(ds), John Scofield(g)

2014年12月23日 (火)

今頃になって上原ひろみの"Alive"を聞く。

Hiromi_alive "Alive" Hiromi(Telarc)

ブログのお知り合いの皆さんの評価もかなり高いこの作品がリリースされたのは,もう随分前のことなので,これを新譜と呼んでしまうことには抵抗がないわけではないのだが,年末のベスト盤チョイスに向けて,やっぱり聞いておいた方がよかろうということで,はるばるカナダから飛ばしたものである。ということで,私の購入したのはCD単体で,DVDは付帯していない。

私はこれまでも彼女のアルバムは何枚か買っているが,疾走感溢れる凄いピアノを弾く人だなぁとは思うのだが,正直言ってどうにも苦手である。ファンの皆さんの理解はきっとえられないだろうが,私にとってはいつ聞いても,何を聞いても"Too Much"感が強いのである。今回も,冒頭のタイトル・トラックからリスナーをねじ伏せるような強烈な演奏である。こういう演奏を生で聞かされたら多分燃えるだろうなぁとは思うのだが,全部を聞いていて,やはり私にはお腹いっぱいって感じなのだ。どんなに美味い食事や酒でも,適量を越せば,胸焼けがしてくるようなものっていう印象がどうしても残ってしまう。結局のところ,こうなってくると,好き嫌いの問題も結構影響があるように思えるが,苦手なものは苦手なのである。だから,このアルバムを聞いていて,ほっとできるのは"Firefly"ってことになってしまうのだ。

もちろん,このTrio Projectの緊密度はますます増し,ジャズって言うより,もはやプログレだろうって感じになっているから,ロック好きにも受け入れられるだけのものと言ってよいだろうし,Simon Phillipsのドラムスも期待通りの素晴らしさである。にもかかわらず,私は本作を聞いていて,やっぱりちょっとやり過ぎではないのかと思えてしまった。私は,"Voice"が出た時,シンセは使わず,ピアノに徹した方がいいのではと書いた(ちなみに"Move"は買っていない)が,今回は彼女はピアノに徹していて,その点はよかったのだが,それでもやはり私の琴線には完全に触れることがなかったと言っておこう。決して悪く言う必要はないと思うし,よく出来たアルバムであるが,結局は私の嗜好からはちょっとずれているってことである。まぁそれでも星★★★★には相当するとは思うが...。

本音を言えば,私はSimon Phillipsの"Protocol II"の方がずっと好き。ファンには喧嘩を売っているようなもんだなぁ(爆)。

Recorded on February 5-7, 2014

Personnel: 上原ひろみ(p), Anthony Jackson(b), Simon Phillips(ds)

2014年12月21日 (日)

Marko Churnchetz:ショップをうろついて出会ったなかなかナイスなアルバム

Devotion "Devotion" Marko Churnchetz(Whirlwind Recordings)

ショップをうろついていると,直感的によさそうだと思ってCDを購入して,大成功のこともあれば,大失敗に終わることもある私である。結局,メンツ,もしくは編成を見て,ジャケの雰囲気を合算して購入するかしないかを決めることが,実は結構ある。

このアルバムは全然知らないスロベニアのピアニスト,Marko Churnchetzによるアルバムだが,メンツ4人の中で名前を知っているのはMark Shimだけであるから,今回はメンツで決めたのではない。テナーのワンホーンで,エレクトリック楽器も採用しているという編成と,ジャケで購入した私である。ジャケの写真だけ見ていると,ジャズっていうより,ロックみたいな感じもするしねぇ。

それでもって,結果はどうかって言うと,これは当たりである。このサックスの感じ,誰系なのかなぁってことで,新橋のテナーの聖地,Bar D2のマスターに聞いてもらったら,これはBranford系ですかねぇとおっしゃる。そう言えば,私は最近,Branfordの音楽を聞いていないので,認識していなかったのだが,言われてみればそういう気がしてくるから,私もいい加減なものである(苦笑)。

だが,そんなことはさておき,これは非常にコンテンポラリーな感覚も強く,リズミックなアプローチも面白い作品であった。まぁ,今風と言えばその通りであるが,一部シンセのように聞こえるのはMark ShimのテナーをMIDIにつないだ音であろうし,ベースもアコースティック,エレクトリックの両刀使いであるから,まぁ私の好きな音であることは間違いなのだが,変拍子を使ったオリジナルをスリリングに展開していて,これはなかなか燃える。まさに直感を信じて買って正解であった。星★★★★☆。

よくよく調べてみたら,ブログのお知り合いの松岡さんがとっくにこのアルバムを取り上げられていたのだが,私のアンテナに引っ掛かるには随分時間を要したとしても,これはまだまだ新譜として扱わせて頂くことにしよう。

Recorded on April 18, 2012

Personnel: Marko Churnchetz(p, el-p, key), Mark Shim(ts, MIDI), Christopher Tordini(b, el-b), Justin Brown(ds)

2014年12月15日 (月)

コレクターはつらいよ(17):"The Broadway Lullaby Project"にBrad Mehldauが1曲だけ参加。

Over_the_moon "Over the Moon" The Broadway Lullaby Project(自主制作盤)

ショップをうろついていたら,全く知らないアルバムに,Brad Mehldau参加というポップを発見してしまった。2枚組なのに,1曲しか参加していないとは承知しながら,ここはコレクターたる者見逃すわけにはいかんということで,早速購入である。ジャケにはBrad Mehldauの文字はないが,ポップを信じて購入である。確かにDisc 1の5曲目"How Much Love"において,Audra McDonaldという歌手のバックでMehldauらしい楚々としたピアノを弾いている。演奏の感覚としては,先日取り上げたRenee Flemingのアルバムでの演奏ぶりに近い。Audra McDonaldの歌いっぷりからしてもそれはまぁそうなるねって感じである。

このアルバムは2012年にリリースされていたものらしいのだが,そもそもは乳がん撲滅のためのチャリティ・アルバムで,ブロードウェイで活躍する歌手が子守唄を歌うという企画ものである。これではなかなかレーダーには引っ掛からないなぁと思いつつ,まぁ出会うことができたことを喜ぶべきであろう。このアルバム,Brad Mehldauだけでなく,Fred Hersch,Julian Lage,Gil Goldstein,Taylor Eigsti,Kevin Hays,Scott Colley,James Genus等の面々も参加しているから,「好き者」は注目してよいだろう。

この時期に,こういう「子守歌」を聞いていると,何とも落ち着いた気分になってしまうが,曲も結構バラエティに富んでいて,Brad Mehldauの参加とか関係なく,なかなか楽しめるアルバムである。だが,歌手陣がミュージカルの人であるから,ジャズ的な感覚は希薄なので念のため。

尚,Brad Mehldauが参加した"How Much Love"は本プロジェクトのWebサイト(http://www.overthemoonbroadway.com/)で試聴可能。まぁ,CDを買わなくても,メーリング・リストに登録をすれば,MP3音源は入手できるようだが,コレクターはそれだけでは駄目なのである(苦笑)。

2014年12月13日 (土)

祝来日,Wayne Krantzが強力トリオで3月にやってくる

来年の3月にWayne Krantzの来日が決定した。メンツはAnthony Jackson,Cliff Almondという面々。このメンツと言えば,Abstract Logixレーベルの面々が揃ったライブ,"The New Universe Music Festival 2010"で1曲だけ演奏が聞けた組合せだが,誰がどう見たって手数は多いよなぁ(笑)。しかし,久々のKrantzである。行かぬ手はない!Cotton Clubにて3/13(金),14(土)の両日。よくよく考えたら,件のフェスのDVDを持っているのに,見たことないなぁ(爆)。ちなみにKrantzとAlmondのデュオがYouTubeにあったので,貼り付けてしまおう。ここにJacksonが加われば,まぁ,どういうことになるかは見えてますなぁ。

2014年12月10日 (水)

ギャグのようなタイトルだが,中身はなかなか面白いJames Farmの第2作

Jamesfarmcityfolk

"City Folk" James Farm(Nonesuch)

Joshua Redman,Aaron Parks,Matt Penman,Eric Harlandという強力なメンツを揃えたJames Farmの第2作がリリースされて,記事をアップできないうちに,そこそこ時間が経過してしまった。この牛が4頭並んだ写真に"City Folk(町の人々)"ってギャグかっ?と突っ込みたくなるのは私だけではなかろうが,まぁそれはさておきである。

このメンツが揃っていれば,リスナー側としては,期待してしまうのが筋とは思うが,2011年の第1作から3年以上経過しての,満を持しての第2作ってことだろう。以前にも書いたが,私はJoshua Redmanがあまり得意でない中,このバンドはほかの3人に注目が行き,それがいい感じで機能していて,前作も相応に評価した私である。その後,Aaron Parks,Eric Harlandはリーダーとしてもいい仕事をこなしての再集結であるから,更にバンドとしての魅力も高まろうというものである。レパートリーもJosua Redman,Aaron Parks,Matt Penmanが各々3曲ずつ,Eric Harlandが1曲と分け合っており,やはりバンドとしての意識が強いということがわかる。

冒頭のMatt Penman作曲による"Two Steps"は不思議な感じの曲調に面食らうが,2曲目のAaron Parksによる"Unknown"で私としては,「おぉっ,これ,これ」って感じになる。そしてHarlandの"North Star"でその魅力に拍車が掛かるってな具合であるから,私がプロデューサーだったら曲順を変えたかもなぁなんて思ってしまうが,それでも続々と出てくる快演には嬉しくなってしまう。決してこれはコンベンショナルな音楽ではなく,現代のジャズだよなぁと思わせてくれる演奏集であり,かつレベルが高い。

どうせなら,よりエレクトリックな感覚を持ち込んでも面白かったのではないかと"Aspirin"でのParksのRhodesを聞いていると思ってしまう(正直,Aaron Parksは効果音的にかなり細かくエレクトリック楽器を交えていてもである)が,これはやはりなかなかによく出来たアルバムである。Parksの楽器の使い分けのニュアンスを聞き取るためには,もう少し音量を上げて聞いた方がよかったかなぁとも思うが,それは環境が許さないというのも事実である。今度,通勤途上でボリューム上げて聞いてみますか(笑)。曲によって,魅力にバラツキがあるように思えるので星★★★★。

Recorded between January 4 and 7, 2014

Personnel: Joshua Redman(ts, ss), Aaron Parks(p, el-p, synth, vo), Matt Penman(b), Eric Harland(ds, perc, dulcimer)

2014年12月 7日 (日)

超お買い得のQuestによるライブ音源

Testament

"Testament - Live in Stockholm 2012" Quest(Vaju Production)

本作は今年の秋口にダウンロード音源としてリリースされたもののようなのだが,Dave LiebmanのWebサイトにすらまだ記述がないので,新橋のテナーの聖地「Bar D2」のマスターに教えてもらわなければ,絶対に認識できていなかったであろうものである。

ストックホルムにおける2012年のライブというのはタイトルからわかる通りであるが,詳しいデータがないので,ヴェニューや録音日等は不明である。だが,そんなことはどうでもいいと思えるぐらい,Questらしい緊張感に溢れた素晴らしい演奏を聞くことができる。しかも全10曲,2時間を越えるのだから,おそらくはライブ・ハウスにおけるファースト,セカンド・セットを完全収録したものであろう。そんな演奏が某サイトでは900円で買えてしまうのでは,これはお買い得を通り越して,「ありがたや~」と叫びたくなってしまったのは私だけではあるまい。

Questは2007年に"Redemption"をリリースして復活後,音源は結構リリースしている,先日はNYCのBirdlandにも出ていて,ライブ活動は続けているようだが,来日は難しいだろうなぁと思わせるだけに,こういう音源だけでも出してくれるだけでもありがたい。そして,音はどこから聞いてもQuestらしいスリリングでハイブラウな音楽である。こういう音楽が売れるとは思えないが,ジャズという音楽のテンションを感じさせるだけでなく,この4人のミュージシャンの資質の高さを見事に実証したライブ音源だと思う。

私は常々,最近はそば屋でもBGMがジャズだぜなんて皮肉を言っているが,決してそうしたBGMにはならないジャズもある。耳触りのよいものだけがジャズだけでなく,こうした演奏にはちゃんと対峙することも必要なのだと強く感じてしまう。演奏のクォリティに加え,値段も含め星★★★★★としてしまおう。素晴らしい。

実際のデータはわからないので,あくまでもFacebook上等のデータからの推測だが,多分この演奏が行われたのはFasching Clubというところで,2012/10/30だった模様。

Recorded Live in Stockholm in 2012

Personnel: Dave Liebman(ts, ss), Richie Beirach(p), Ron McClure(b), Billy Hart(ds)

2014年11月28日 (金)

"Hamburg '72":凄過ぎるECMの蔵出し音源

Hamburg72

"Hamburg '72" Keith Jarrett / Charlie Haden / Paul Motian (ECM)

これまでにもびっくりするような蔵出し音源をリリースしてきたECMレーベルである。Keithの"Sleeper"然り,Majicoの"Carta de Amor"然りである。そして今回はKeith~Haden~Motianのトリオである。本作は今年亡くなったCharlie Haden追悼の意味合いが強いと思われるが,それにしてもこれまた凄い音源が登場したものである。まぁ,この音源は既にブートやら"NDR Jazz Workshop '72"やらでリリースされたことがある音源のはずであるが,だからと言って,本作の価値が下がることは決してない。何と言っても,今回リマスターされたらしいここでの音が非常に生々しく,40年以上前の音源とはとても思えないからだ。Charlie Hadenは亡くなったが,彼の作りだしたレガシーがこうしてより多くの人の耳に触れる機会ができたことに彼の人徳を感じざるをえないし,亡くなったことの不幸はさておき,我々はHadenに感謝しなければならない。

冒頭の"Rainbow"のピアノが聞こえてきた瞬間にこれは凄いことになるだろうと直感させるような響きである。あまりに美しい響きに陶然とさせられる思いである。更に,演奏が進んでいくと,これは美しさとともに,ジャズという音楽を越えたテンション,そしてスリルも持ち合わせた作品だということが明らかになってくる。いまやKeithはピアノ専門となっているが,ここではフルート,ソプラノ・サックス,そしてパーカッションも演奏しているところに時代を感じさせるが,ピアノを弾いていないからと言って,Keithの趣味だけでやっているものではなく,演奏としての必然性を感じさせるものである。もちろん,ピアノだけの方がいいという意見もあろう。だが,私には違和感なくこの演奏が入ってきたし,これはこれで非常にいいと思えるのだ。

この演奏が録音された時にはKeithは27歳,Hadenが35歳,Motianが41歳という年齢であったわけだが,既にミュージシャンとしては3人とも完成している。むしろ,極論に聞こえるかもしれないが,今のKeithよりも私にははるかに魅力的なピアノを弾いているように聞こえてしまうぐらいである。決して若さゆえの勢いだけではなく,このピアノの美的な感覚は既に誰しもが平伏すぐらいの魅力に溢れている。そして,この時代らしいフォーク的な響きも聞かれて,これが実によい。また,その名も"Piece for Ornette"でKeithはソプラノを吹いているが,Keithの音はOrnetteとは違っていても,Hadenの伴奏がOrnetteっぽさを増幅させているように思わせるのが面白い。

とにかく,この時の演奏はどこから聞いても楽しめるし,Keith Jarrett,Charlie Haden,Paul Motianのファン,ECMレーベル好きはもちろん,ありとあらゆるジャズ・ファンに一聴を勧めたくなる傑作。とにかくよく出してくれたと改めて言いたい。これには星★★★★★しかない。何っ?興奮し過ぎ?そう言われても結構,と開き直る中年音楽狂(爆)。聞けばわかるのだ。

世はまさにThanksgivingであるが,私は改めてCharlie Hadenの偉業に今一度感謝を捧げ,この音源を聞きながら彼のご冥福を祈りたい。

Recorded Live at the NDR Jazz Workshop on June 14, 1972

Personnel: Keith Jarrett(p, fl, ss, perc), Charlie Haden(b), Paul Motian(ds, perc)

2014年11月26日 (水)

いきなりのアフリカン・フレイヴァーにびっくりする"Virgin Beauty"

Virgin_beauty "Virgin Beauty" Ornette Coleman &Prime Time(Epic)

私はそこそこOrnette ColemanのCDも保有しているが,大ファンってわけでもないものの,ジャズ史の中で,重要な位置づけにある人だという認識はしている。だが,基本的にはそれまでになかったスタイルを打ち出したことにこし意義があるのであって,何でもかんでもいいというつもりもない。だが,エレクトリックな構成になっても,一種独特な味を醸し出す人であることは間違いないところである。

そんな私がこのアルバムを買ったのは,完全な気まぐれである。本当は"Of Human Feelings"を買うつもりだったのではないかと思うのだが,そっちがなかなか見つからないので,こっちを買ったって感じである。まぁ,DeadのJerry Garciaが参加していることも興味あったし...。

そしてアルバムを聞いてみると,素っ頓狂な(笑)感じの"3 Wishes"で幕が開くのだが,このアフリカ的なフレイヴァーはジャケに見られるような感じとイメージが合致するなぁって感じなのだが,そうしたフレイヴァーはこの1曲だけで,その後はどちらかというとファンクっぽさが強くなり,違和感なく進んでいく。Ornetteはここでは2ギター,2ベース,2ドラムスというバックを従えているが,編成から想像されるような音の重さは感じられないのが,Ornette Colemanらしいと言えばその通りだろう。この人の音楽はある意味での土臭さは感じさせるが,ヘヴィーだと思ったことはないのだが,何とも軽い感じのファンクである。

注目のJerry Garciaの参加であるが,3曲に留まるが,明らかにPrime Timeの2人のギタリストとはフレージングが違うので,すぐにわかってしまう。やっぱりGariciaはロックな感覚が強いのだ。そういう意味ではOrnetteが異分子と混ざるとどうなるのかってところに興味が湧くわけだが,Garciaの出番はあくまでも控えめなものなので,シナジーが効いているってところまでは行っていないと思う。一方で,80年代のポップ/ロックみたいな感覚を感じさせるところもあって,やっぱり時代だねぇなんて思ってしまった。

まぁ,それなりに面白いアルバムだと思うが,Ornette Colemanを聞くならこれからってことではないって感じである。星★★★☆ぐらいってところにしておこう。

Recorded in 1988

Personnel: Ornette Coleman(as, tp, vln), Denard Coleman(ds, key, perc), Calvin Weston(ds), Jerry Garcia(g), Bern Nix(g), Charles Ellerbie(g), Al MacDowell(b), Chris Walker(b)

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