2014年の回顧(その3):音楽編(ジャズ以外)
いよいよ年の瀬も押し迫ってきたので,今日は今年のジャズ以外の音楽に関する回顧である。
正直言って,以前よりも,アルバムの購入枚数は減ったという実感が強い私である。これはリアルのショップに出没する頻度が低下したため,新譜や中古盤との接点が減少したからだと言ってもよいと思うが,それでもブログのお知り合いの皆さんの記事や,ネット情報を参考としながら,購入を進めてきた。そうした中で,ジャズ以外の音楽で,私の印象に残ったものを挙げておきたい。実を言えば,ジャズ以外のカテゴリーにおいて,今年聞いたアルバムでは決定的なアルバムというのが簡単に思い浮かばないというのが実態なのだが,そうは言っても記憶に残る作品もそれなりにあったと思う。
まずはロックであるが,今年何と言っても嬉しかったのはBen Wattが31年振りにリリースした"Hendra"である。この人の持つ瑞々しさは何年経っても健在であった。しかもライブでもサマソニ,そして単独公演と1年に2回も来日していることにも驚かされた。残念ながら,そのライブに行きそこなったのは私には痛恨事であったが,まぁ,それはそれで仕方がない。このアルバムを改めて聞き直しているが,やっぱりこれはいい作品である。
瑞々しさっていう点ではDeacon Blueの"A New House"も同様に優れた作品であった。前作"The Hipsters"からの好調が持続されていて,これも本当によかった。どうも流通がよくないのか,あるいはそもそも日本で人気がないのかよくわからんが,このアルバムがほとんど話題にものぼらないってのはどういうことなのか?この音楽のよさをより多くの人に知って頂くためにも,改めてご紹介しておきたい。尚,写真は私がPledge Musicで取り寄せたサイン入りのアルバムのもので,通常盤にはこういうサインは入っていませんので,念のため。
次に,これはどのカテゴリーに入れるか悩んだのだが,基本はジャズ的でありながら,Laura Nyroに捧げた大音楽絵巻として,Billy Childsの"Map to the Treasure: Reimagining Laura Nyro"をポップ部門で挙げることにしよう。私はこのアルバムに関する記事において『トリビュート作にありがちなとっ散らかった印象がなく,作品として一本筋が通っていることである。優れたオムニバス映画を見るかのような趣と言うか,多数の登場人物により物語を精妙に作り上げた「トラフィック」や「ナッシュビル」のような映画に通じると言えるかもしれない。そこに通奏低音のように流れているのが,私はBilly ChildsのLaura Nyroの音楽を愛する心だとさえ思ってしまった。』と書いたが,その印象は時間が若干経過した今でも全く変わらない。まさに愛に溢れた作品。
ソウルはLeon WareとD'Angeloが2強ということになるが,全体的な評価としてはD'Angeloが上ということになるだろうが,私の好みからすれば,Leon Wareを取りたい。これは完全に好みの問題であるが,74歳にしてこのスウィートさ加減ってのはまさに驚異的である。心地よいグルーブとはまさにこれのことである。12月になって,Leon WareとD'Angeloの2人のアルバムが出たことは,まさに音楽的なお歳暮であったと言いたい。
ブラジル音楽については,大した数を聞いているわけではないが,聞いた瞬間には今年もMaria Ritaで決まりだと思っていた。しかし,そこに突如として割って入ってきたのが,Antonio Loureiroの"In Tokyo"である。日本人ミュージシャンとのセッション・アルバムという性格にもかかわらず,ここまで出来のよさを確保できるのは,Antonio Loureiroの音楽の質そのものが高いからだと思わざるをえない。私のMaria Ritaへの信頼はゆるがないが,今年はAntonio Loureiroを取ることにしよう。こういう作品が日本で作られたことは実に誇らしい。
最後にクラシックであるが,今年も大して枚数は買っていないが,AbbadoのRCA/Sonyボックス,同じくAbbadoの韓国で集成されたグラモフォンでのマーラー・ボックス,超弩級85枚組のSeonボックス,更にはLazar Bermanのドイツ・グラモフォンへの録音の集成ボックスなど,箱モノで精一杯みたいな感じであった。しかし,枚数が枚数なだけに,まだ全然聞けていないというのが実態なのだ(爆)。そうした中で,Myung-Whun Chungのピアノ小品集は疲れた身体を癒すには最適な音楽であった。だが,音楽的な感覚では児玉桃の"La Vallee Des Cloches"の印象が最も強い。もちろん,年末に出たFrançois-Xavier Roth / Les Sièclesによる「春の祭典」も忘れ難い作品であるが,そっちはレコードアカデミー大賞受賞で一気に世間の注目を浴びること必定なので,ここでは児玉桃を私のベストとしておこう。尚,蛇足ながら,Abbadoのマーラーは,再録よりも70~80年代に吹き込んだものははるかに素晴らしいものであったと言っておきたい。
それにしても,私も相変わらず何でもありだなぁと思いつつ,いい音楽は生活に潤いを与えるものとして,このスタンスは来年以降も変わらないだろうなぁ。
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コメント
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おはようございます。
HendraはCDを買ってからLPも買いました。
ジャケが大きいのでその分ちょっとした工夫がされており楽しめました。
サウンド的にもベスト5に入れても良かったのですがLP・CD両方持っているものは敢えて外しました(それだけで結構ウエートを占めてしまいましたので(汗))。
Map to the Treasureは文句なしに良かったです。
A New HouseはLPを確保済みですが纏め買いしている関係で入手は1月末近くになりそうですが楽しみです。
Leon Wareは候補に挙げていますが未だ発注はしていません。
今年も色々良いアルバムのご紹介有難うございました。
ジャズ関係も楽しみにしています。
投稿: EVA | 2014年12月29日 (月) 09時16分
EVAさん,こんにちは。
私も我ながらよくやるわと思いつつ,音楽が好きなんで,こればっかりはやめられません(苦笑)。
できるだけ審美眼は保ちたいと思いますが,年とともに音楽への嗜好は変わってきますよね。来年以降もできるだけ頑張ります。
投稿: 中年音楽狂 | 2014年12月29日 (月) 10時37分