ECMでリーダー作をリリースしたWolfgang Muthspiel
"Driftwood" Wolfgang Muthspiel (ECM)
Wolfgang Muthspielはギター3重奏の"Travel Guide"でECMデビューを飾っているが,あちらはRalph Towner人脈かなぁなんて思っていたら,今度はリーダー作がリリースである。ってことはManfred Eicherのお眼鏡にかなったってことか。結構キャリアも長くなったMuthspielであるが,私の中では佳作は作れども,決定的なアルバムがない感じだったので,ECMでの録音が彼にどういう影響を及ぼすかは興味津々であった。そして,メンツはLarry Grenadier,Brian Bladeという鉄壁のリズム・セクションである。これは期待値が高い。
そして,一聴したところ,昨日聞いたTerje Rypdalのような同じような浮遊感を感じさせるが,もう少しメロディが強調されるというところだろうか。何てたって,タイトルが「流木」なのだから,流れるというか漂うような感覚があっても不思議ではない。
MuthspielにはベースがMarc Johnsonに代わった"Real Book Stories"というアルバムもあったが,あちらはスタンダード,ジャズ・オリジナルで固められていたのに対し,こちらはオリジナルで固められているので,随分雰囲気が違う。あっちはあっちでそれなりによかったが,ちょっと地味なのだ。だが,本作の持つ感覚は,静謐かつ地味めの音であることは一緒かもしれないが,やはりECMの個性というか,レーベル・カラーがちゃんと出ていて,Manfred Eicherプロデュースの強力な磁場を感じてしまう。
本作では一部,ギターの多重録音も行われているようだが,全編を通じて静謐な感覚で時間が過ぎていく。これこそECMの音だなぁと思ってしまう私のようなリスナーには全く問題ないとしても,このメンツなら,もう少しビートを利かしても違った個性を聞かせただろうなぁなんて想像をしてしまった。だが,最後に収められた"Bossa for Michael Brecker"の冒頭のアルペジオに聞くに至って,素晴らしい構成だと思ってしまうのである。最後にこの曲が入っていることによって,このアルバムはだいぶ印象が変わったからである。これがあるとないとでは,ジャズ的な要素に大きな違いがあったように思えるが,Muthspielのアルペジオと言い,Grenadierのアルコといい,極めて品のよい音で収められていて,これはいいわ。
私はRalph Townerも入ったギター3重奏を除けば,今までのMuthspielのアルバムでは最も気に入った作品といっていいだろう。ちょっとECMに甘いかなぁと思いつつ,特にアコースティック・ギターの響きがよかった。星★★★★☆。
Recorded in May 2013
Personnel: Wolfgang Muthspiel(g), Larry Grenadier(b), Brian Blade(ds)
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ECMレーベルからまた新譜が届いたので、聴いてみました。スゴいメンバーなので、さ [続きを読む]
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ななーんと、、あちこち梅雨入りっていうことで。。皆さまには、納涼的1枚を ささげ [続きを読む]

































































やっぱり私も思っていることは似ていますが、これはこれで、この3人にしかできないような空間的表現もいいなあ、と思っていたので、聴けて良かったです。あとは収録時間がもう少し長くてもいいかなあと思いました。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2014年5月30日 (金) 06時23分
910さん,TBありがとうございます。
このアルバムを聞いても,やっぱりMuthspielって地味だよなぁって感覚は消えませんが,改めてちゃんと聞いてみようと思わせるものでした。
収録時間の短さは,私はCDが長過ぎる(LP時代を振り返れば,何でも2枚組にしなければならない感じ)と思っていますので,いいんじゃないっていう肯定派です。
投稿: 中年音楽狂 | 2014年5月30日 (金) 23時09分
閣下、、
サッカーの観戦中でございますね!
と、とらば ありがとうございました。とどいたかな。。
ギタートリオのアルバムですけど、なんか、音が全宇宙にちりばめられてる感じで、「間」にあたる空間の部分にみえない音がたくさんありそうな感じがしちゃうところが、、凄い気がします。
とか、、このひんやりかげんはECMですよねえ。。。
投稿: Suzuck | 2014年6月 7日 (土) 10時16分
Suzuckさん,こんにちは。TBありがとうございます。
「みえない音がたくさんありそうな感じがしちゃう」というのがSuzuckさんらしいっすねぇ。いずれにしても,Muthspielだけではこうはならなかっただろうなぁって思いますし,Eicherの影響も大きいんでしょうね。それがECMらしさの根源かもしれません。
ミュージシャンからすると,Eicherって難しい人って感じる場合も多いみたいです。まぁ,オーナー社長ってそんなものかななんて...(笑)。
投稿: 中年音楽狂 | 2014年6月 7日 (土) 16時30分