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2014年4月 3日 (木)

病に臥せった時には最適だったMyung-Whun Chungのピアノ曲集

Piano "Piano" Myung-Whun Chung (ECM New Series)

日頃の不摂生がたたり,風邪をひいてしまった私である。会社は休んで病院に行き,その後は家で休養していたのだが,こういう状態では聞ける音楽もある程度限定されてくるのは当然である。ここ数日,風邪が悪化する状態の中でデリバリーされたのが本作である。今や指揮者が本業と言ってよいMyung-Whun Chungが,ピアニストとしてECMレーベルに吹き込んだアルバムである。

彼の次男のSun Chungは今やECMのプロデューサーとしていくつかの作品をものにしているが,その次男からのアイディアによってこの作品は生まれたとMyung-Whun Chungは書いている。本人もライナーに書いているが,自身を「リアルなピアニスト」だとは思っていないMyung-Whun Chungが本作を吹き込んだのは,これらの曲を孫に聞かせたいという思いからのようである。それはここに吹き込まれた曲が,キラ星のごときピアノ曲の名曲群であるということからも伝わるし,むしろ,近年こうした企画のピアノ・アルバムというのは聞いたことがなかっただけに,何とも言えぬ感慨すら覚えてしまうと言ってもいいだろう。この歳になって「エリーゼのために」が収録されたアルバムを聞くとは思っていなかったし,そのほかも「月の光」だ,「トロイメライ」だ,「アラベスク」だ,「ノクターン」だ,更には「きらきら星変奏曲」だと古今東西の名曲が並んでいるのだ。改めて,こうした名曲群に耳を傾けることはまさに温故知新と言わなければならない。そんな名曲群の中で,私の心を最も刺激したのはシューベルトの「4つの即興曲」からの2曲であった。改めて聞いても何とも素晴らしい曲である。

Myung-Whun Chungはチャイコフスキー・コンクールで第2位となったピアニストであるし,姉たちとの室内楽のアルバムもあるから,技巧を披歴したければできないわけではなかろう。しかし,ここでの演奏には何のギミックもない。ただシンプルにピアノに向かい,優れた曲を演奏するという行為である。そこには孫たちへの思いが溢れているように感じられる。そうしたギミックのなさゆえに,没個性的で,ごくごく当たり前に聞こえてしまう演奏だと言えばその通りかもしれない。だが,そのシンプルさゆえに,原曲の持つ美しさや魅力が際立っていると私には思えた。いずれにしても,ここでの演奏を聞いていて,非常に落ち着いた気持ちを得た私である。病の時にはこれを聞いていれば,悪いものもよくなると思いたくなるような愛すべき小品集。私の精神状態や健康状態へのヒーリング効果も含めて星★★★★★としてしまおう。

そこにはヴェネツィアのフェニーチェ歌劇場の生み出したレゾナンスも効果が大きいであろうことも追記しておく。これには本当に癒される。こんな愛すべき作品も作り出してしまうManfred Eicher,さすがである。

Recorded in October, 2013

Personnel: Myung-Whun Chung(p)

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コメント

ECMで今までありそうでなかったピアノの名曲集、楽しんで聴けました。クラシックをあまり聴かない私でも知っている曲が多く、それも楽しめた要因だと思います。これを機会に、こういうアルバムをもっと出してくれるといいんですけれども。

4月は1日発売の4枚からはじまって、下旬まで、情報をつかんでいるだけでもECMが12枚は出そうです。ECM専門ではなくても聴く者を絞り込んでいくと必然的にECM比率が高くなってしまいます(笑)。

TBさせていただきます。

910さん,こんにちは。TBありがとうございます。

ECMに限らず,特定のピアニストによるこうした選曲のアルバムはほぼ「絶滅危惧種」と言ってよいのではないかと思います。EicherがプロデュースしたのもSun Chungの関係もあったでしょうし,ソウルのイベントの時にMyung-Whun Chungが協力したこともその背景にあったのではないかなんて思っています。

そんなことは抜きにしても,このアルバムは一枚の優れたアルバムとして聞けるものと思いますし,今一度,こうした曲群に触れ合う機会を与えてくれただけでもよかったです。

それにしても,昨今のECMのリリース・ラッシュには驚かされますよね。私は全部買いはしていませんので,適切に取捨選択していきたいと思います。

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