"KIN(←→)" Pat Metheny Unity Group(Nonesuch)
Unity Bandのアルバムがリリースされたのが2012年6月であるから,比較的短いインターバルで届けられたPat Metheny Unity Groupとしての新作である。前作との違いはマルチ・インストゥルメンタリスト,Giulio Carmassiの加入だが,この人は昨年末にWill Leeのバンドで来日していて,その時には,私はこのブログに「キーボードだけでなく,ギター,サックス,フリューゲルホーンもこなすマルチ・インストゥルメンタリストで,そのどれにも破綻がないのは立派である。まだまだ若いと見たが,やはり米国の音楽界は奥が深いねぇと思ってしまった。」なんて書いている。Will Lee とMethenyでは随分と音楽は違うようにも思えるが,実力のある人は何でもできるってことである。
それでもって,この新作だが,10分を越える曲が4曲も収められていて,これは力が入ってるねぇと想像させるものだった。そして,冒頭のイントロからして期待値を膨らませる出だしなのだが,その長尺の"On Day One"が全くもって素晴らしい出来である。私はUnity Bandのアルバムについては評価しつつも,もっと行けると思っていたクチだが,このアルバムは冒頭の1曲からして私の期待に完全に応えたものである。まさに進化を遂げたグループ・サウンドであり,これだけでも燃える。この曲は結構起伏がある構成だが,時折Steve Reich的なミニマルな部分が顔を出すのもPat Methenyらしいと言える。2曲目の"Rise Up"はクリポタが出てくるまでは"First Circle"を激しくしたように思わせる曲だが,1曲目に続いてこれも相当にきている。テーマのメロディに関しては,今イチ感がないわけではないが,ここまで聞いただけで,クリポタのバンドでの立ち位置が進化していると感じさせるものになっているのは,Methenyだけでなくクリポタ・ファンでもある私のような人間にとってはまさに嬉しいものである。そして,Ben Williamsのベースのラインが非常に魅力的に響いている。
3曲目の"Adagia"がインタールード的な役割を果たした後に来る"Sign of the Season"は激しさこそないが,アルバムのバランスを良好に保つためにはこういう曲がいるという感じであるが,ここで実はスパイスとして効いているのがCarmassiのピアノではないかと思える。ピアノが加わることによって,サウンドのテクスチャーに適切な色彩が加わっていると言えるだろう。この人の本作への貢献度は過小評価してはならないと思える。そして,タイトル・トラックの"Kin (<-->)"はAntonio Sanchezのスリリングなドラムスのショーケースのようなかたちになっており,それぞれのメンバーの演奏についても聞きどころが準備されているところが素晴らしいではないか。
続く"Born"は徐々に盛り上がる展開が印象的な,ロッカ・バラッドって感じである。次のわずか38秒の"Genealogy"はPatの好きなOrnette的なサウンドのインタールード。"We Go On"は歌詞をつけたくなるようなメロディ・ラインが魅力的であり,そしてラストの"Kqu"で穏やかにアルバムの幕を閉じる。前半から中盤の激しい展開と,比較的穏やかな後半という構成と考えてよいが,最後に一発ガツンと行ってもよかったように思えないこともない。だが,全体を通せば,これでお腹いっぱいになって,大満足してしまうフレンチのフルコース料理のようなものである。
いずれにしても,この作品,ドラマチックな曲の構成と言い,各人のソロと言い,スリリングな展開と言い,私は"Unity Band"をはるかに凌駕すると聞いた。これほどの見事な演奏を聞かせてくれるのであれば,私は本作に星★★★★★をつけることになんの躊躇もない。いやいやこれはまじでよいし,特に前半から中盤は燃える。この作品の出来を聞いていると,PMGの復活は相当先送りか?と言わざるをえなくなるようなものである。このバンドのライブは絶対に聞きたいが,その一方でそろそろPMGもと思っている人も多いだろう。しかし,こんなアルバムを出して,ライブに勤しんで,グループとしてのエクスプレッションを高めていったとしたら,それこそ末恐ろしいし,PMGは暫くお預けを食らっても我々リスナーとしても納得するしかあるまい。
最後になるが,私としてはPat Methenyの近年の作品においても,本作を最高の出来と評価する。まさしくお見それ致しました。2月も初旬というのに,今年中にこれを凌駕する作品にはそう出会えないだろうと確信させるに足る傑作。ついつい興奮して記事もいつもより長くなってしまった(笑)。
Recorded in June, 2013
Personnel: Pat Metheny(g, g-synth, synth, orchestrionics), Chris Potter(ts, b-cl, ss, cl, a-fl, b-fl), Antonio Sanchez(ds, cajon), Ben Williams(b), Giulio Carmassi(p, tp, tb, fr-h, cello, vib, cl, fl, recorder, as, el-p, whistling, vo)
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