身体がこういう音楽を求めることもある:Serkin Plays 武満
"Plays the Music of Toru Takemitsu" Peter Serkin(RCA Red Seal)
私にはストレスがかかったり,肉体的にきつくなると聞きたくなる音楽がある。それはハード・ロックの時もあれば,70年代Milesの時もあるが,何となく心理的に落ち着かない時によく聞くのがこれである。
そもそも私はPeter Serkinの弾く現代音楽のピアノ曲が好きで,海外出張の時は,それが入ったiPodを持って行くという嘘のような本当の話がある。その中でも最もプレイバック頻度が高いのがこの武満徹作品集である。
まわりの人に,現代音楽って何が面白いのよって聞かれても,全然理論的な説明など出来ない私であるが,別に説明できなくたっていいのである(きっぱり)。私にとっては,これがいろいろな意味でセラピーのような役目を果たしてくれているのだから,人からどうこう言われる筋合いはない。私にとってはこの音楽を聞いていると,なぜか非常に落ち着くのだから,それでいいのだ(バカボンのパパかっ!)。
もちろん,聞いていて高揚するような音楽でもなければ,楽しいと思える音楽でもない。音楽としてはアブストラクトそのものである。だが,例えば,石庭で雨音を聞いているような感覚と言えばいいだろうか。それは決して雑音にはならないし,不快感ももたらさない。この音楽を聞いていると,ある意味環境と同化してしまう部分があるという意味では,誤解を恐れずに言えば,私にとってはアンビエント・ミュージックの一種と言ってもよいのである。
では例えば,同じ武満の曲を弾いたものならば,高橋アキの演奏でもいいではないかと言われればそれは違うのである。高橋アキの演奏も優れたものだとは思うが,私の感覚にフィットするのは,どうしてもこちらのPeter Serkinの方である。好みの問題と言われればその通りだが,おそらく決定的なのは音色の違いだろう。私の身体がSerkinのタッチ/音色を求めるということだと思う。もちろん,この音楽を毎日聞くわけではないが,人生において,ないと困るのがこのアルバムということなのだ。録音は長い期間に渡っているのだが,アルバムとしての一貫性に何ら乱れがないのも素晴らしいことである。
ということで,いろいろな機会でこの作品には世話になっているが,今回のバタバタの間にもやはりついつい聞きたくなってしまったのであった。星★★★★★。だが,決して万人にお薦めできるタイプの音楽ではないので念のため。
Recorded in 1978, 81, 94 & 96
Personnel: Peter Serkin(p)
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ボクはゼルキンより高瀬アキを聴く方が多いです。
ゼルキンの切れ味は鋭利であり、またとても低温。それは嫌いではないのですが、きついときがあります。
高瀬アキの演奏に仄かに感じる「日本的な情感を遠くから眺めるような」感覚が好きです。
ノヴェンバーステップのような造作の曲は苦手ですが、武満の曲は概ね好きです。
投稿: ken | 2013年9月16日 (月) 08時36分
kenさん,こんにちは。TBありがとうございます。
Peter Serkinの「切れ味は鋭利であり、またとても低温」というのはその通りですねぇ。ただ,私の場合は高橋アキのタッチよりSerkinの方がフィットします。これはもはや好みの問題ですね。演奏としてはどちらもすぐれていますから。
ということで,追ってこちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2013年9月16日 (月) 14時38分
Toshiyaさん、こんにちは。
ピーター・ゼルキンも、武満も何だか懐かしい響きです。若い頃は、一般的に言われている現代音楽を聞いても、体に吸収していくどころか、拒否反応さえ感じていたのですが、歳を重ねる毎に、大分受け付けられるようになりました(笑)。音から刺激がほしいと時、クリエイティブな発想がほしい時に聴いたりすると、スッ~と体に入って行くような感じがします。味覚と一緒で、毎日はキツイけど、たまにならOK!という感覚しれません。。
あと、現代音楽って、聴く本人が良ければ、周りの人がどう思おうと構わない節があるような。。ジェリーさんとの録音も、私自身はデタラメ調(?)にやっていますが、分類すると、取りあえずは、現代音楽になるのかなぁ。。と思っています。ちなみに、本人は、大満足しています♪
余談ですが、また、ジェリーさんに「御願い事」をしちゃいました。
形になるのが、楽しみです♪。。
投稿: Laie | 2013年9月28日 (土) 23時56分
Laieさん,おはようございます。
おっしゃる通り,現代音楽は「毎日はキツイけど、たまにならOK!」というところですね。これを毎日聞いていてらさすがに変人と言われても仕方がありません(爆)。
それにしても,またまたBergonziの特殊音源が生まれるわけですか。凄いことです。確かに前回のデュオは「現代音楽」と言えば,そう言えないこともないですが,次回はどんな路線なのか,いやいや楽しみです。
投稿: 中年音楽狂 | 2013年9月29日 (日) 08時56分
Toshiyaさん、こんにちは。
あの音源は、「現代音楽」ではなかったでしょうか?(笑)
今回のお願い事ですが、ジェリーさんとのコラボには間違いないのですが、作品からは「音」は出ない予定です。前回とは順序が逆で、今回は、ジェリーさんが先に、作品に着手します!勝手なお願いついでに、二つの条件を出させてもらいました。ジェリーさんにとっては、大きな宿題になってしまったかもしれません。
別件で、お話がありますので、メールをさせて頂きます。
投稿: Laie | 2013年10月 1日 (火) 14時49分
Laieさん,こんばんは。返信が遅くなりました。
まぁ,現代音楽なんでしょうねぇ(笑)。面白かったですよ。次回作にも期待します。
別件の方はまた改めて返信させて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2013年10月 3日 (木) 00時12分