これぞECMみたいなメンツ,そして演奏。
"La Notte" Ketil Bjørnstad (ECM)
Ketil Bjørnstadの音楽と言えば静謐を絵で書いたような感じというか、淡い色使いの水彩画のような趣がある。ECMレーベルだから許されるようなものだが,ジャズ的な要素は希薄な場合が多く,ある意味,この人でしか成り立たないという演奏をする人である。その印象はどのアルバムを聞いても変わらないので,音楽性としては極めて一貫性を保った人だと言ってよい。
そのBjørnstadが新たにECMからリリースしたアルバムはなんとライブ盤である。ここでチェロがDavid Darlingなら,全てがECMからリーダー作を発表している面々ということになり,国際色豊かなオールスターズ的なメンツである。ここでチェロを弾いているAnja Lechnerだって,ECMには双頭リーダー作のような作品もあるから,Darlingならずともこれはやはり凄いメンツということには違いない。少なくとも日本では再現不能だろう。
で,ここでの演奏だが,これが実によい。ライブらしいダイナミズムと,Bjørnstadらしい静謐さと美しさが混じり合って,まさに静と動の絶妙なバランスを生み出している。まさに一本の映画を見るかのごときストーリー性が強く感じられる演奏と言える。この音楽を聞いて,こんなのジャズじゃねぇよという文句も原理主義者たちからは聞こえてきそうだが,私はそんな雑音には"So what?"と言い返すだろう。開き直りにも思えるかもしれないが,この美学を理解できないことの方がはるかに不幸なのだ。ECMレーベルの音楽を愛するのであれば,必聴,必須。そうでなくとも音楽の美的感覚とは何かを理解したいのであれば聞いて絶対損はない。繰り返すが,これはよい。共演者の貢献度も高く,私が知るKetil Bjørnstadのアルバムの中でも最も評価したいアルバムである。Arild Andersenのベースの増幅音が好きになれないという欠点がないわけではないが,あまりの心地よさ,ECMっぽさについつい星も甘くなり星★★★★★。
Recorded on July 21, 2010
Personnel: Ketil Bjørnstad(p),Andy Sheppard(ts, ss), Anja Lechner(cello), Eivind Aarset(g, electronics), Arild Andersen(b), Marilyn Mazur(ds, perc)
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2300番というキリ番なので、やはりECM的には大きな意味をもつアルバムなのかなあ、と想像してしまいますが、それがマンフレート・アイヒャーのプロデュースではなくて、An ECM Productionと書かれているんですよね。
でも間違いなくレーベル直球ど真ん中の演奏だし、そういう点ではけっこう気に入ってます。彼ってこういう演奏したことあったっけ、とも思いました。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2013年7月10日 (水) 22時15分
Toshiyaさん、日頃出張出張とお忙しそうで・・・・しかも暑いのにお元気そうで何よりです。
ECM派の私といたしましては、そこまでおっしゃられますと・・・買わないわけにはゆきません。さっそく注文させて頂きました(笑い)。楽しみです。
投稿: 風呂井戸 | 2013年7月10日 (水) 22時51分
トラバありがとうございました。m(_ _)m
朝一で、携帯から何度かトラバしてみたのですが、うまくいかなかった。。今度は、大丈夫そうですね。
わたしも、これはメロメロにお気に入りです。
深遠なる世界、もう、ベタベタヤネンナ、と、言われてもいいので、、「わたしと夜と静寂と」と、名付けます。(笑)
いい空気吸わせてもらいました♪
投稿: Suzuck | 2013年7月11日 (木) 17時52分
910さん,こんばんは。TBありがとうございます。
この辺の世界になると,Eicherプロデュースでなくても全然違和感がないです。キリ番は全く意識していませんでしたが,それなりの世界ってのはありましたし,Eicherも認めた「らしさ」ってのがあるのかもしれませんね。
本作,やっぱり好きです。
投稿: 中年音楽狂 | 2013年7月11日 (木) 20時55分
風呂井戸さん,こんばんは。
きっとお気に召すものと確信しております。って思っていないと不安になりますし(笑)。ご感想お聞かせ下さい。
投稿: 中年音楽狂 | 2013年7月11日 (木) 20時57分
Suzuckさん,こんばんは。TBありがとうございます。
いいんです。ベタでもなんでも,いいものはいいんです。川平慈英のようになってしまいましたが,これはナイスな作品ですよ。この世界を理解できない人の不幸を憐れみます(爆)。
ちなみに,SuzuckさんのこのTBが888件目です。縁起がいいですね。
投稿: 中年音楽狂 | 2013年7月11日 (木) 20時59分
音楽狂さん、こんにちはmonakaです。
今度のアルバムは基本的なビヨルンスタのスタイルにライブという華も加えてとてもまとまりのよいアルバムになりましたね。
最近の中では私も一番だと思います。
この人はこの人で定期的にオスローで作ってほしいですね。
TBさせていただきます。
投稿: monaka | 2013年7月11日 (木) 21時02分
monakaさん,こんばんは。TBありがとうございます。
まとまりもいいですし,演奏の質も高いのですから,文句のつけようがなかったです。心地よくこの音楽に身を委ねることができたと思います。本当にナイスな作品です。素晴らしいです。
投稿: 中年音楽狂 | 2013年7月11日 (木) 22時47分