演奏のレベルは高いが,既視感の強いChick Coreaの新作
"The Vigil" Chick Corea (Stretch)
実は私はこのアルバムを購入するべきかどうか非常に迷っていた。何せこのジャケットである。購買意欲をそそらないこと甚だしい。私は趣味の悪いジャケットが許せないクチなので,音楽が優れていようがなんだろうが,それだけで聞く気をなくすってことがないわけではない。しかし,これは某ショップで抱き合わせで手頃な価格だから購入したようなものだったが,やっぱりジャケはダメである。まぁ,それでも買ってきたのだからということで聞いてみた。
そうすると,冒頭の"Galaxy 32 Star 4"からしてなんだかElektric Bandの焼き直しのようなメロディ・ラインではないか。まぁ,このアルバムのリリースがアナウンスされた時から,楽器編成はElektric Bandと同じだということはわかっていたが,それにしてもかなり雰囲気が近い。とは言っても,キメについては若干ルースな感じもするし,Elektric Bandのようなスピード感にも欠けるが,いずれにしても既視感たっぷりの立ち上がりである。聞き進めていくと,ギターのCharles AlturaがFrank Gambaleに相当近いと感じさせるが,リズムのHadrien FeraudとMarcus GilmoreがElektric Bandからはだいぶ個性が違うかなぁと思わせる。そして,2曲目の"Planet Chia"が始まると,まごうことなきChick Coreaのピアノ・ソロからスタートである。フレーズをちょっとだけ聞いてもChickとわからせる個性は大したものだが,逆にそれも既視感を強めるのである。更に5曲目に至ってGayle Moranが登場すると,おぉっ,ポリドール時代のChick Coreaのソロ・アルバムのようではないか。
こんな調子なのだが,演奏のレベルは非常に高いので,ある意味安心感が強い。だが,比較的若手と看做される連中と新しいバンドを組んで,もっと冒険をしてもいいのではないかと思ってしまうところもあって,評価は若干微妙な部分が残存してしまうのである。そして,一番いいなぁと思えるのがStanley ClarkeとRavi Coltraneが客演した長尺の"Pledge for Peace"ではやはりちょっとなぁと思ってしまう。この演奏が非常にスリリングな感覚を持っているので,いっそこの編成でやればよかったのではないかとさえ思えてしまうが,逆に言えばこの曲の演奏がほかの曲から相当浮いている。だが,ジャズ本来の感覚に一番溢れているのはこの曲だと思えるのだ。
繰り返すが,演奏のレベルには文句はない。だが,私としてはもう少しはじける感覚が合ってもよかったのではないかと思う。そうしたところが若干の減点要素となり星★★★★。何だかちょっと惜しいような気がするねぇ。
ちなみにここで結構鋭いベースを聞かせるHadrien Feraudがこのバンドのツアーに参加していないのはなぜなんだろう?ここでの演奏がいいだけに解せないと思うのは私だけではないはずである。
Personnel: Chick Corea(p, key, synth), Tim Garland(ts, ss, b-cl, fl), Charles Altura(g), Hadrien Feraud(b), Marcus Gilmore(ds), Pernell Saturnino(perc), Gayle Moran Corea(vo), Stanley Clarke(b), Ravi Coltrane(ts)
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確かに、聴いてすぐチックの音楽と分かる演奏は既視感満載ではありますね。アドリアン・フェローのベースはゴダンのフレットレスを使っているようで、エレクトリックなんだけどアコースティックとの中間の音、ドラムスはジャズのセッティングという情報もあって、そこが完全にカチッとしたエレクトリックバンドとは違うサウンドになっているのではないかと思います。
それにしてもお腹いっぱいになる77分間ではありました。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2013年7月31日 (水) 12時07分
910さん,こんばんは。TBはお知らせの通り,入ってきていませんので,リトライをお願いします。
確かにElektric Bandに比べるとベースとドラムスはタイプが違いますね。Hadrien Feraudはスラッピングってしなさそうですしね。
まぁ,いろいろ文句も言いながら演奏の質ゆえに結構楽しんでいた私ですが,ライブでは"Hot House"とか"It Could Happen to You"とかもやってるんですよねぇ。私は仕事の関係で,日本でのライブは行けそうにありませんが,一体どうなるんでしょうね。
投稿: 中年音楽狂 | 2013年7月31日 (水) 20時54分
あれから毎日TBをトライしてましたが、やっと今日TBが通った形跡がありました。もしかするとスパムの方に入っているかも。ご旅行中なので急ぎませんので、ご確認いただければ幸いです。
投稿: 910 | 2013年8月 7日 (水) 14時13分
910さん,こんばんは。帰国致しました。TB入っておりましたので,公開させて頂きました。ありがとうございました。
当方からのTBもうまくいったようですね。一体何だったんでしょうか?
投稿: 中年音楽狂 | 2013年8月 9日 (金) 18時47分
チックコリア購入してもblogにあげないこともあったりしますが、これは、メンバーがメンバーなだけにとても面白かったです。
そして、閣下のようにチックコリアに大きな思い入れがなかったのか、、とても楽しく聴けちゃいました。
で、、、フェローのベースもすごかったのですが、私の結論はやっぱりMarcus Gilmoreのしなやかな美しい「煽り」♪
6曲目でのチックコリア&ギルモアのソロ奏者の煽り方すごかったです!
投稿: Suzuck | 2013年9月14日 (土) 09時46分
Suzuckさん,こんにちは。TBありがとうございます。
このアルバム,私は決して評価しないわけではないんですが,どこかで聞いたことがあるような感覚が強過ぎましたねぇ。せっかく今までと違うメンツを集めているんだから,新機軸を期待したくなるのも人情ですが,ChickはどうやってもChickだとも言えるわけで,まぁこれはこれでいいと思います。
それにしても,"Pledge for Peace"ですよねぇ。これはマジでスリリングな出来でしたね。ということで,追ってこちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2013年9月14日 (土) 16時58分