曲の良さが炸裂するNick Drakeカヴァー集
"Way to Blue: The Songs of Nick Drake" Various Artists(StorySound)
Brad MehldauがNick Drakeの曲をレパートリーとしていることはよく知られたことであるが,私はこれまで,Nick Drakeの音楽を真面目に聞いてきたわけではない。もちろん,本人のアルバムも持っているが,そのうち聞こうと思っているような感じで,後回しにしてきたようなものである。しかし,先日,アルバム"Pink Moon"を聞いて,これまで聞かなかったことを大いに反省したものである。そういうタイミングで,リリースされたのがこのアルバムである。実を言うと,このアルバムを購入したのもScritti PolittiのGreenが参加しているからだから,動機はかなり不順だったのだが,結果的には,様々なミュージシャンがNick Drakeの曲をライブで演奏するというこの企画作を聞いて私はますますNick Drakeに魅かれることとなったと言わなければなるまい。Brad Mehldauが取り上げるのはおそらくこの心の琴線に触れるメロディである。
本作の演奏は2010年のロンドン,バービカンにおける演奏と,2011年,オーストラリアのメルボルンでの演奏が収められているが,ライブでありながら,編集によってオーディエンスの声は消されている。Nick Drakeのメロディ・ラインに触れるにはこうした演出も減点にはならないと思いたくなるほど,このアルバムはNick Drakeの曲への愛が感じられると言っては言い過ぎだろうか。
そもそも本作はNick DrakeをプロデュースしたJoe Boydの企画によるもののようだが,演奏,歌唱もいいのだが,そのバックのストリングスがDrakeの曲のよさを盛り立てるような何とも言えない絶妙な効果を上げている。どれも内省的な曲と言ってよいが,その雰囲気をこのストリングス・セクションが増幅させるのである。
ということであるから,この音楽に刺激を求めてはならない。Nick Drakeというミュージシャンが書いた曲がいかに素晴らしいのかということに身を委ねるというのが私の感覚である。これは正直言ってNick Drakeの魅力を再認識させるに十分なアルバムであり,私は相当感動したと言ってしまおう。
こうした真摯なトリビュートは本当に気持ちがよい。これまでNick Drakeの音楽を聞いたことがない人が聞けば,その魅力を確実に認識できるアルバムだと言ってしまおう。参加しているミュージシャンは必ずしもメジャーな人たちばかりとは言えないとしても,ミュージシャン達の志,心意気を買ってちょっと甘いかもしれないが星★★★★★としてしまおう。沁みる。
Recorded Live at the Barbican on January 20, 2010 and at the Elisabeth Murdoch Hall on November 15 & 16, 2011
Personnel: Kate St. John(oboe, cor anglais, vo), Neil MacColl(g), Danny Thompson(b), Zoe Rahman(p), Leo Abrahamas(g, bandora), Steve Jones(g), Martyn Barker(ds, cajon) and strings with Luluc, Scott Mathews, Green Gartside, Shane Nichoson, Krystle Warren, Robyn Hitchcock, Vashti Bunyan, Lisa Hannigan, Teddy Thompson(vo)
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