Pat Metheny Unity Band観戦記:そこに見られた光と影?
昨年の音楽市場において,ジャズというカテゴリーに属する音楽に関心を持つリスナーであれば,Pat Methenyが久々にホーン入りのバンドを組んだということで,このUnity Bandに対する関心が高かったことは否定しようのない事実である。天邪鬼の私でさえ,そもそもMethenyが好きな上に,ホーンがクリポタでは無視できるはずがない。だからと言って,私は彼らのアルバム"Unity Band"を高く評価しつつも,最高だとは思っていなかったのが事実である。それはその時の記事(こちら)を読んで頂ければいいのだが,それでも彼らが来日するとなれば,どうしても行きたい,どうしても聞きたいと思ってしまうのが人間の,あるいはより限定的に言えば,中年音楽狂としての私の「性」である。
そして,今回,ブルーノート東京に出掛けてきたわけだが,私としては演奏としてはほとんどケチがつけようのないレベルのものだったとは思っているが,主題の通り,いいところである「光」の部分と,納得できない「影」の部分が混在するライブであったと思えるのだ。それはMethenyに起因する部分と,彼には責任がない部分にわかれるので,そこをはっきりさせたいと思う。
まずは「光」である。何よりも,このクァルテットを形成するミュージシャン4名の質が無茶苦茶高いということで,安心して聞けるのは当たり前,Methenyについては平均点と言ってもよい出来だと思うが,私の贔屓目もあるが,クリポタの素晴らしいフレージングにまいってしまった。彼がUndergroundで来た時も興奮したが,今回のフレージングは,私に「く~っ」と言わせるに十分な出来であった。とにかく凄い。それが第1の要素。第2の要素は,Antonio Sanchezの素晴らしい反応能力である。ソロイストのフレーズに対し,これほどビビッドに反応できるのかと思えるほどの素晴らしいミュージシャンとしての身体能力である。ソロは冗長と感じさせたが,Sanchezのバッキングの能力は誰も否定できまい。第3の要素はBen Williamsのベースの音色である。この人はライブでのベースの鳴らし方をわかっている。Ron Carterよりはるかにまともな音色づかいで,この人は極めて有能である。目立たずとも実力は十分。こうした実力者の集結の結果,いい演奏になるのは当たり前だが,そこでのMethenyのリーダーシップも認めなければならないだろう。
だが,今回のライブ,いいことばかりだったとは言い切れない。それが「影」ということになるが,まず言いたいのはとにかく「イェ~」を連発すればいいと思っているアホな聴衆の存在である。個々人が音楽を楽しむことに私は何の文句もないが,タイミングの悪い「イェ~」,そして演奏と何の関係もないところでの何に受けているのかさっぱりわからない「笑い」,更には誰がどう聞いても無駄というか,全く音楽の本質を理解していないような会話(例えば,全然演奏としてはこのバンドに合っていると思えない"James"のイントロでのPatのソロを聞いて,「カッコいいよねぇ~」とか言っている無神経/無知ぶり)の数々にはまじで辟易とさせられた。迷惑でしかない聴衆については,Keithのライブでも批判が集中していたが,今回も根本は同じである。ステージに向かって左側後方の4人がけのボックス・シートに座っていたヒゲのバカ親父は,私を辟易とさせた責任を取ってもらいたいもんだ。バカにつける薬はないが,あれほどのバカはなかなか見られるものではない。音楽の本質もわかっていないにもかかわらず,身勝手に盛り上がる姿はみっともない以外の何ものでもない。私ならあいつは出入り禁止にするわ。とにもかくにももう少し恥を知って欲しいものである。
次に気に入らなかったのが,ライブ盤の制作を意識しているのかと思わせるような人工的なクリポタの音色である。エコーが掛かり過ぎで,ライブ感を損ねていたのは納得できない。サックスやバスクラの響きに,ライブならでは感覚が足りないと思ったのは私だけではないはずだ。クリポタのフレージングが見事だっただけにこれは惜しい。また,このバンドがMethenyのバンドということは厳然たる事実としても,バンドのサウンドとしてバランスが悪い瞬間がかなりあったのは問題だ。特に私の嫌いなオーケストリオンのセットが鳴り出した後,クリポタのサックスがほとんど聞こえなくなったのは論外である。そもそも,これだけ優秀な人材を集めているところに,なぜオーケストリオンが必要なのか私には全く理解できない。Methenyが趣味を開陳するのも勝手だが,それを私は許したいと思わない。Pat本人の趣味に付き合わされるバンド・メンバー,そして聴衆(少なくとも私)にとっては迷惑千万である。全然面白くないのだから,さっさとやめて欲しいものである。
そして,最後に商売っ気出し過ぎのPat Methenyはいかん。アパレルやその他諸々のグッズはよしとしよう。しかし,サイン入りCDを4,000円で販売するってのはどういうことか。普通,印税に貢献したリスナーには,無償でサインに応じるのが当たり前のミュージシャンの姿である。私は,そうした商売っ気を出し過ぎたところには失望さえ感じてしまった。あれは絶対駄目である。その一方でマグカップを土産につける気前のよさがあるので,それで相殺って話もあるが,ならば,アドミッション・チャージを下げることを考えるのもオプションだったようにも思える。
そういうネガティブな要素はあったが,演奏のレベルにはほとんど文句はない。オーケストリオンの使用をやめ,そしてライブとしてのサウンドをもう少しまともに考えれば,完璧だったと言ってもよいのだ。特にクリポタである。あのフレージングに悶絶したのは私だけではないことを私は知っている(謎)。全体的に見れば,影の部分を上回る光に満ちたライブであったが,どうしても影の部分については書いておかなければならないということでのライブ・レポートである。
ついでに書いておけば,クリポタのフルートは真面目な感じで好感度が高かった。そしてバスクラをあたかもテナーのように響かせるのは誠に立派と思った私である。やっぱ,クリポタだよね~。クリポタ,クリポタ,いぇ~い,いぇ~い(笑)。
Live at Blue Note東京 on May 23, 2013 (2nd Set)
Personnel: Pat Metheny(g, g-synth), Chris Potter(ts, b-cl, fl), Ben Williams(b), Antonio Sanchez(ds)
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サイン入りCD、4000円!
これ、マジですか?
これは、いかんですねぇ!絶対にいかんですね!
これ、メセニー本人がやってるんですかね?
だとしたら、ショックです。
うーん、演奏の内容より、そっちの方が気になります。
投稿: ガーシャ | 2013年5月25日 (土) 04時23分
ガーシャさん,おはようございます。
私の記事に怒りのコメント(あまりに悪辣,かつよくあるパターンで匿名なので公開しませんが...)を寄せてきた方がいますが,その方によれば,CDの値決めをするのはブルーノートであって,Patに責任はないと言いたいらしいです。
しかし,Patのスタッフが会場で販売に携わっている以上,Patがプライシングについても全く無関係だとは言えないはずですし,ロイヤリティを除けば,利益はPat側に入ると考えれば,CDの価格を考えれば,やはりやり過ぎだというのが正直なところです。アパレルだって安くはないですが,ネットでも買えますし。だからこそCDの値付けには違和感がありました。
投稿: 中年音楽狂 | 2013年5月25日 (土) 09時16分
おはようございます。
「影」の部分面白く読ませていただきました。
超有名人が関わるライブには色々な事情があるのですね。私も非常識な他のオーディエンスに折角のライブを台無しにされたことがあります。飲んで騒ぎたければ居酒屋へ行け!ですね。
やはり、¥4,000-はいかんですよ、これは・・・・・
買った人いるんでしょうか?
私もこのライブ行きたかったのですが、1万超えのチャージにはちょっと懐がきつかったので断念いたしました・・・・・0rz
サンチェスとベン、生で聴きたかったなぁ・・・・・・sigh
投稿: Izui Ochoswiyer | 2013年5月25日 (土) 10時12分
中年音楽狂様
こんにちは
私も5/24の1stみてまいりました
私が見たセットでも、変なところで大声で叫ぶ人がボックス席にいて、同じセットを見たのかと思いましたが、違うセットでした。
ちなみに、その人は、勇敢なお客さんの1人に注意され、
その後は静かにされていました。
また、ちなみにですが、クリポタの音は、この日はエコーがあまりかかっていなかったです。
妻は、中年音楽狂様同様、こんなに素晴らしいメンバーなのにオーケストリオンを使う必要ないではないか という意見でしたが、僕は結構オーケストリオン好きです。
私は、クリポタはじめてみましたが、すごい奏者であることを
実感しました。
投稿: dozenaday | 2013年5月25日 (土) 11時52分
Izui Ochoswiyerさん,こんにちは。確かに今回のチャージは高いですよねぇ。
「やはり、¥4,000-はいかんですよ、これは・・・・・
買った人いるんでしょうか?」というのはまさしくその通りなんですが,買っている人がいたというのもまた凄い事実です。ただ,やはりサインをもらう時のミュージシャンとの直接コミュニケーションも大事だと思うんですよねぇ。それが思い出になりますし。
また,同じ入場料を払っているのに,ほかのオーディエンスに配慮できない人間はやはり困ります。私はその場にはいませんでしたが,Enrico Pieranunziの日本でのライブ盤に残されている「奇声」は雑音でしかありませんでした。本当に迷惑はかけないで欲しいもんです。
投稿: 中年音楽狂 | 2013年5月25日 (土) 12時23分
dozenadayさん,こんにちは。
いいですねぇ。勇敢なお客さん。人に迷惑をかけていることを自覚できないんだから,言われても仕方ないでしょう。
私の書き方も足りなかったのですが,クリポタの音は,全編でエコー過剰ってわけではなかったんです。一部の曲でそういう印象が強かったことは事実ですし,また,オーケストリオンがなっている時はほとんどテナーが聞こえませんでした。
ということで,私は奥様と同意見(笑)ですが,いずれにしてもオーケストリオンの使用が私にとってサウンド・バランスを崩していたのは間違いないです。
それでもそれ以外のパートでのクリポタのキレキレぶりは見事でしたが。
投稿: 中年音楽狂 | 2013年5月25日 (土) 12時27分
Toshiyaさん、こんにちは。
「合いの手」を入れるお客さん。。かなり強烈な感じですね。酔い過ぎてテンションが上がってしまったのでしょうか。。他のお客さんに迷惑をかけてしまう「ノリ」は過度になってしまいますね。。
振り返ってみると、こちらのライブ会場で、一度だけ、合いの手が完全にズレている男性がいましたが、こんなものなのかぁ。。と納得したことがありました。でも、嫌味な感じではなかったです。
アーチストのCD価格の設定ですが、ブルーノートさんは分かりませんが、私の知る限り、アーチスト側で決めているはずだと思います。総売上の仮に10%とか、20%を会場側に場所賃として納めて、会場側とは別にCDを売る人がいれば、また、その売り子さんにもマージンを渡す仕組みになっているかと思います。
こちらのジャズライブで販売されるCDは、高くても20ユーロ(サイン入り、写真撮影あり)ですが、個人的には20でも、高いと思ってしまいます。日本は、やはり、破格だと思いました。
投稿: Laie | 2013年5月25日 (土) 19時28分
Laieさん,こんばんは。「合の手」もタイミングよく決まるとカッコいいんですが,そうでないと悲惨です(苦笑)。
CDの価格設定については何とも言えないですけれども,誰が値決めをしているにしても,4,000円はぼったくりですよ。ネットではサインなしなら1,500円もしないわけですから...。サインの付加価値をいくらとするかは買い手が決めればいいと思いますが,私にはリーズナブルなものとは全然思えません。
投稿: 中年音楽狂 | 2013年5月25日 (土) 20時20分
ご無沙汰です。
いろいろとありますが、、
ライブ後にまで、、萎えることも多かったわけですが、、(笑)
やっぱ、わたしは楽しかった。。です。
「Methenyが趣味を開陳するのも勝手だが,それを私は許したいと思わない。Pat本人の趣味に付き合わされるバンド・メンバー,そして聴衆(少なくとも私)にとっては迷惑千万である。」
でもさ、SFの世界さながらだったじゃん。
テクノロジー酷使して、アナログって、事ですよねぇ。
しかも、今を大事にしてるんですよねぇ。
不思議な人ですね。
投稿: Suzuck | 2013年6月 1日 (土) 12時40分
Suzuckさん,こんにちは。お久しぶりです。
楽しかったんですよ,ライブそのものは。クリポタには悶絶していましたし。でも私のオーケトリオン嫌いは筋金入り(笑)ですから,クリポタの音が聞こえなくなるようでは,納得がいかないんですよ。
SFっていうか,趣味は趣味としてやってもらえればいいです。私はやっぱりオーケストリオンはあのバンドには必要だとは思えません。その点は頑固にそう思っています。
投稿: 中年音楽狂 | 2013年6月 1日 (土) 13時29分
遅ればせながら、ライブ記事を拝読しました。わたしは5月24日の前後半を観ました。席のポジションはクリポタの真ん前♪
クリポタがUndergorundでのライブよりは控え目ながら、期待を裏切らないすんばらしい演奏で、それだけで高いアドミッションの価値は十分にありましたが、ベンのベース、凄い!例えば、Breakdealerのスピード感は、彼のベースワークによって、より強烈にターボチャージされてた、そんな印象でした。さほど音量はでかくないのに、一音一音に力感が漲っており、まあ、とにかくカッコいいプレーヤーでした。
オーケストリオン、1セット目はオーケストリオンがそこまでTwo Folk Songsなどでクリポタが上げたセットの良さを残念ながら壊していました。そこまで、躍動していたリズムとバンドのダイナミックレンジが瞬時に退屈なものに変わってしまい、危うく最前列で居眠りしそうになりました。
但し、2セット目は、バンドの生の躍動感がオーケストリオンをを呑み込んでしまったかのような印象で、そのようなバランスの下では、オーケストリオンが意外にもちょっと面白いガジェットと感じました。ミキシングのバランスが変わっていたようにも感じました。
いずれにせよ、他の日に観た知り合いからは、クリポタの音量バランスがかなり低めだったという情報を得てます。私自身は、なんせ、最前列クリポタ前だったので、そのフラストレーションはほとんど無かったです。
因みに、ネット予約者限定ギフトのマグカップは、いかんせんデザインがダサかったので、かみさんに家から追い出されて、現在私のオフィスのデスクでの湯飲みをやっています。。。
投稿: catszoo | 2013年6月14日 (金) 14時10分
catszooさん,おはようございます。
最前列クリポタかぶりつきですか。羨ましいです。確かにそれだったらバランスも気にならないかもしれませんね。
私はオーケストリオンを否定している人間なので,私も自分が観に行った時は居眠りしそうになりました。正直言ってそこだけは退屈でした。まぁ,それでも全体的な演奏自体には文句はなく,凄いバンドだねぇと思っていた私でした。
投稿: 中年音楽狂 | 2013年6月15日 (土) 10時16分