Joey Calderazzoの新譜は悪くはないんだけど...
"Live" Joey Calderazzo Trio(Sunnyside)
私はかなりのJoey Calderazzoファンだと言ってよいと思っている。彼がBlue Noteレーベルに吹き込んだ作品群は今聞いても燃える,いい作品集であった。そこからのCalderazzoはバンド活動としてはMike BreckerのバンドやBranfordのバンドを渡り歩き,サイドマンとしては順風満帆だったと言ってもよいだろう。だが,リーダー作はあまり面白くないと思える作品が増えてきて,どうも長年のファンとしてピンとこない作品が続いてきた。特にMarsalis Musicレーベルからの作品は彼らしいスピード感やシャープなフレーズが影をひそめてしまい,私としてもはプレイバックする機会はほとんどなかったと言っても過言ではない。よって,私の中では,近年のCalderazzoの評価は決して高いものではなかった。
そんなCalderazzoが,レーベルとしては信頼度が高いSunnysideからトリオでのライブ盤をリリースすると知り,これはやっぱり聞いておかねばと思ってしまうところが,ファンとしての性であるが,今回の作品を聞いてもやはりアンビバレントな感覚が残ったというのが正直な感想である。
今回の作品について,どうもピンとこない部分があるとすれば,まず録音状態があまりよろしくないことにより,Calderazzoのピアノのシャープさが伝わってこないところにまず問題がある。バンド全体としてもどうもクリアさに欠けるので,それが印象を悪くしているような気がする。だが,音についてはさておき,ここでの演奏にはかつてのCalderazzoに聞かれたようなスピード感が欠けていると思わせるのはやはり痛い。これを成熟と見るか,加齢による退行と見るかには議論の余地はあるが,例えば70歳を過ぎてもHerbie Hancockがキレたフレーズを繰り出すのと比べると,まだ50前のCalderazzoがコンベンショナルな方向に走るにはまだ若いだろうと言いたくもなる。
そんな私に,おぉっ,これならと思わせるのがアルバムも後半の"Time Remembered"まで待たなきゃならんというのはやはり辛い。それでもこの演奏のCalderazzo感は認めたいと思うし,こういう調子で弾いてくれるのであれば,私も文句はない。最後のPaul Motian作"Trieste"はECM的な出だしでびっくりするが,途中から出てくるCalderazzoらしいシャープなフレージングでほっとして終幕を迎える。私としてはこの終盤2曲だけでもいいやって思えてしまうのが今のCalderazzoの問題である。ジョギングをしながら,CalderazzoのBlue Note時代のトリオ・アルバム,"The Traveler"を聞いていてもそう思っていた私である。残念ながら,もう旬の人ではなくなってしまった印象が強いが,それでもまだ復活の可能性があることを示せただけでも,このアルバムはよしとしなければならないのかもしれない。
ということで,期待も掛けつつ,そうは言っても星★★★☆が精一杯。
Recorded Live at Daly Jazz in Missoula, MO
Personnel: Joey Calderazzo(p), Orlando Le Fleming(b), Donald Edwards(ds)
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