Iris Ornig:またも有望な女性ベーシスト現る
"No Restrictions" Iris Ornig(自主制作盤)
このアルバムのことを知ったのはDown Beatの今年の4月における批評だったが,何よりも私が注目したのはメンツである。Kurt Rosenwinkelのギターに,Marcus Gilmoreのドラムスというのが購買理由にほかならない。ついでにフロントでラッパを吹くのはCriss Crossから新譜を出したばかりのMichael Rodriguezだし,ピアノはこのブログでも取り上げたHelen Sung(この人ついてはジャズ界のあき竹城なんて失礼なことを言っている。記事はこちら)という地味ではあるが,相応のメンツが揃っている。Down Beatでも4つ星と高評価だったこともあり,CD Baby経由での購入である。
Iris Ornigという人はドイツ出身で,スイスとロンドンで学び,現在はNYC在住らしいが,昨今はMe'Shell Ndegeocelloは言うに及ばず,EsperanzaやLinda Ohのような女性ベーシストの活躍が目立つ中,またも新たに注目可能な女性ベーシストの登場と言ってよい。
ここで展開される演奏は,正直言ってゴリゴリのジャズ的な「熱」は発しているとは思わないのだが,ソフトでありながら,盛り上げるところはちゃんと盛り上げる演奏になっているところはリーダーの力もあろうが,共演者に依存するところが大きいように思う。特にRosenwinkelの存在が大きいように思える。だが,BjorkとMichael Jacksonの2曲を除けば,リーダーのペンになる曲群は相応の魅力を放っているのも事実であり,この人,なかなかの実力者であると思わせる。その一方で,誤解を恐れずに言えば,このソフトな感覚はやはり「女性的」という表現が適切なようにも思えるのである。例えば,大西順子に感じられるような力強さはこのアルバムからは感じられないので,その辺りがこの音楽を評価する際の一つの分かれ目になるように思える。
しかし,彼女のWebサイトでも見られる映像等を見れば,この人が真っ当なプレイヤーであることは確実に見てとれるし,ベースも結構いい音を出している。本作の冒頭を飾る"Autumn Kiss"のBlue Noteでの映像を貼り付けておくが,日曜日の昼に演奏しているにしてはかなりまともである。ベース・ソロは今イチかなぁとも思えるし,画像の字幕の日付が間違っていたり,編集が粗いのも笑えるが,まぁまぁいい線はいっている。ちなみにこれは2012/11/11の演奏というのが正しい。
繰り返すが,彼女は結構な実力者である。今回はメンツに恵まれたというところもあるかもしれないが,レギュラー・メンバーでやってもそう大きな違いはないだろうと思わせる作品。星★★★☆。次は「女性」ということを意識させない音楽性を聞かせてくれることを期待したいし,期待できるミュージシャンである。
Recorded on August 12, 2011
Personnel: Iris Ornig(b), Kurt Rosenwinkel(g), Mike Rodriguez(tp), Helen Sung(p), Marcus Gilmore(ds)
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» Iris Ornig No Restrictions [JAZZとAUDIOが出会うと。。。]
この盤は純粋にKurt Rosenwinkel買い。だけではなく、Helen Sungが入っていることも購入動機の1つになっています。
Iris Ornigという人は初なんですがドイツ人の女性のようです。昨今、女性ベーシストもいろいろな方が表舞台に出てきています。凄いことだと思います。
メンツは、上記2名に加えMarcus Gilmoreが!ですが、Mike rodriguezだって知ってる名前でした。
という以下のとおりとなります。
Iris Ornig(B)、Kurt Rosenwi..... [続きを読む]
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> 今回、メンツに恵まれた
というのは、まごうことなき事実であると(私も)認識しております。
ただ、それがゆえに、買って聴いている人(=私)がいたことも事実なので、次作以降、どんな演奏を聴かせてくれるか興味津々であります。
しかし、米国では女性ベーシスト(Esperanza Spalding筆頭に、Giulia Valle等々)がいい仕事をして表舞台に出てきている比率が高いような印象ができてきています。
TBありがとうございます。逆TBさせていただきます。
投稿: oza。 | 2013年5月 3日 (金) 19時39分
oza。さん,こんばんは。TBありがとうございます。
まぁ,メンツに恵まれたのは事実でしょうが,相応の実力を持っているからこそ,こういう人たちと共演もできるということだと思います。確かに次にどういう作品を出してくるかが楽しみですね。
投稿: 中年音楽狂 | 2013年5月 3日 (金) 23時47分