"The Vanguard Date":祝再発!でもオリジナルの価格が下がるとは思えんが...。
"The Vanguard Date" Steve Kuhn(Owl→Sunnyside)
本作の姉妹盤に当たる"Life's Magic"も昨年,同じくSunnysideから再発になっていたはずであるが,それに続いて,中古市場でとんでもない価格がついていた本作までリリースされたのは誠にめでたい。なんせCDが5ケタの値段というのはやはり行き過ぎであり,さすがにそこまで金は出せんという人が多かったのではないだろうか。それが,こうして手軽に聞けるようになっただけで喜ばしい。
本作が「幻」化したのはそもそもの発売元であるOwlのサブ・レーベル,Owl Time Lineがあまり枚数をプレスしなかったからではないかと思われるのだが,"Life's Magic"がKuhnのファンあるいはそれ以外のリスナーにも結構人気があることを考えれば,Owlももう少し商売っ気を出してもよかったのではないかと思えるが,それを差し置いても,このアルバムも"Life's Magic"には及ばないとしても,「幻」化させるには惜しい出来である。全編を通して,Kuhnらしいピアノを楽しめる。
そうは言っても,私はRon Carterのベースの音が本当に嫌いなので,それがなければなぁなんて思ってしまうのだが,ここでもCarterの音は下品極まりない。リアルなベースってこんな音ではないはずであるが,とにかくオーバー・アンプリファイドなのだ。それがどうにも気に入らない。"I Thought About You"なんて雰囲気ぶち壊しと思うのは私だけではないはずである。そうした瑕疵はあるものの,最も長尺の"Music Prayer for Peace"なんていい出来である。
この時期のSteve Kuhnは,ECM期のタッチから後のよりコンベンショナルなスタイルへ移行する端境期だったとは思うのだが,それでもバランスの取れた演奏をしていて,これはこれで十分に楽しめる作品である。
それにしても不思議なのは"Life's Magic"とこの"The Vanguard Date"はプロデューサーもエンジニアも一緒であるにもかかわらず,前者がBlack Hawk,後者がOwl Time Lineという異なるレーベルからリリースされたことである。結局はこれはプロデューサーが切り売りしたってことかもしれないが,それが最終的にはSunnysideというレーベルによって集約されたのだから,めでたし,めでたしということにしておこう。こういう仕事をするから,カタログは地味でも,レーベルとしてDown Beatの国際批評家投票では常に高く評価されるのである。星★★★★。だが,オリジナルに何万も出すほどの作品とは思っていないが...(苦笑)。
Recorded Live at the Village Vanguard on March 27, 28,29 & 30, 1986
Personnel: Steve Kuhn(p), Ron Carter(b), Al Foster(ds)
« Seamus Blake,学生バンドに客演す。 | トップページ | Jeremy Peltの新作は映画音楽のようだと言いたくなる... »
「新譜」カテゴリの記事
- Chick Coreaの旭川でのソロ・ライブ音源が公開された。(2026.02.06)
- Joel Rossの新作はその名も"Gospel Music"。だが,典型的ゴスペルではない。(2026.02.07)
- Julian Lageの新作はまたもJoe Henryプロデュース。(2026.01.25)
- 今年最初の新譜はEnrico Pieranunzi。あの"Live in Paris"と同じメンツで悪いはずなし。(2026.01.05)
- 2025年の回顧:音楽編(その1:ジャズ以外)(2025.12.28)
「ジャズ(2013年の記事)」カテゴリの記事
- Jim Hallを偲んで,今日は"Jim Hall in Berlin"(2013.12.30)
- 2013年の回顧(音楽編):その2(ジャズ編)(2013.12.29)
- 遂に出た!"Complete Thursday Miles at Fillmore"(2013.12.27)
- Ed Bickertの未発表音源現る!これまた私にとってはホリデイ・ギフトである。(2013.12.24)
- ECMからのホリデイ・ギフト?(2013.12.22)
コメント
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: "The Vanguard Date":祝再発!でもオリジナルの価格が下がるとは思えんが...。:
» The Vanguard Date/Steve Kuhn [ジャズCDの個人ページBlog]
ちょうどCDの黎明期(といってもこのアルバムはCDの登場からは4-5年経っている [続きを読む]
« Seamus Blake,学生バンドに客演す。 | トップページ | Jeremy Peltの新作は映画音楽のようだと言いたくなる... »

































































私も、通常価格で再発されたので聴いて良かった、と思ったので、やはりCDの初期には発売枚数が少なくて、あとになって集めるのに苦労したのはこの時期のアルバムが多かったでした。
ロン・カーターの音は、当時はそう言えばこういうような音が多かったなあ、なんてことを思い出しながら聴いていました。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2013年6月 1日 (土) 17時52分
910さん,続けてこんにちは。TBありがとうございます。
本作の中古盤市場での値付けには苦笑せざるをえませんでしたが,こういうかたちで再発してくれるSunnysideは偉いです。"Life's Magic"も出していますが,あちらはジャケを変えたのは今イチでした。しかし,再発の意義をちゃんとわかっているレーベルがあるだけよかったと思います。
投稿: 中年音楽狂 | 2013年6月 2日 (日) 11時45分