映像美が素晴らしい「ライフ・オブ・パイ」
「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」('12,米/台,Fox)
監督:Ang Lee
出演:Suraj Sharma, Irrfan Khan, Adil Hussain, Tabu, Rafe Spall, Gerald Depardieu
オスカー11部門にノミネートされている映画で,特に米国における世評が高いと思わせるこの作品を週末に見てきた。この映画は見ようによってはその解釈が非常に難しい映画ではあるのだが,そうしたことを忘れさせてしまうのが映像の美しさであろう。私はこの映画を2Dで見たのだが,これなら3Dで見てもよいと思わせるような映像が満載である。おそらくはこの美しさが更に増すように,演出が施されているに違いないと思わせるぐらいなのである。
ストーリー展開としては非常にゆったりしたテンポと言ってもよいが,それでもこの映画にはこの程度が適していると感じさせる作品である。だが,美しさの真骨頂はトラとの漂流が始まってからの数々のシーンにあるのであり,前半の展開はそこへ至る長いプレリュードだと考えてもよいだろう。
これを寓話あるいはメタファーと考えるかは個人の解釈の問題であり,シナリオにもそうした展開が準備されてはいるが,そんな難しいことを考えなくても,映画としては十分に楽しめるものである。この作品には「驚愕のラスト」という表現がよく用いられているようではあるが,実は映像的な驚きはそこにはない。むしろ,終盤にはギミックを排して,ストーリーで勝負しようとしているところにこの映画の優れたところがある。考え始めると,いかようにでも解釈可能であるという部分を残していることが,ある意味では映画の余韻を強めているのだと思う。
そうした意味では映像的な美しさだけでなく,どう考えようかなぁという意識を持ちながら劇場を後にした私である。そして何よりもこの映画を魅力的にしたのはトラだろう。CGを駆使したものとは思うが,これはまさに見事としか言いようがないものであった。
但し,私がこの映画に心底感動したかと言えば,必ずしもそうではない。これは映画に何を求めるかというところによっても違うと思うが,単なる好き嫌いの問題と言ってもよい。また,美感を打ち出すための映像演出に,若干のわざとらしさを感じたのも事実である。しかし,それでも高い評価をして然るべき映画だということには異論はない。私個人としては,敢えて3Dでこの映画を再見しようとは思わないが,これからこの映画を見ようという方には3Dをお勧めしたくなるような,そういう映像である。決して浅はかなファンタジーのような内容ではないし,併せて信仰ということについても考えさせられることもあって,子供には難しい映画であることは間違いない。正直言って,お子様連れで行くような映画でないということは心して劇場に足を運ぶべきである。星★★★★☆。
« イケイケ感は希薄だが,よく出来ているクリポタの新作 | トップページ | 久しぶりのコレクターはつらいよ(14) »
「映画」カテゴリの記事
- 「暗殺者の家」:やっぱりこれも初見だった...。(2026.03.09)
- Hitchcockの「三十九夜」:これも見た気になっていただけだったが,筋金入りの傑作であった。(2026.02.22)
- Hitchcockの「救命艇」:この歳にして初めて見たなぁ。(2026.02.12)
- 「トレイン・ドリームズ」:これほど地味な映画がオスカーにノミネートされることが素晴らしい。(2026.02.08)
- Netlflixで見たシュワちゃん版「トータル・リコール」。(2026.02.02)
« イケイケ感は希薄だが,よく出来ているクリポタの新作 | トップページ | 久しぶりのコレクターはつらいよ(14) »


































































コメント