森山威男の"Hush-A-Bye"が遂に再発された
"Hush-A-Bye" 森山威男クァルテット~向井滋春(Union/テイチク)
ずっと廃盤状態が続き,市場でも高値がついていた本作がリイシューされたことは実にめでたい。このアルバムが出た頃は,ちょうど私がジャズを聞き始めた頃と重なっていると思うが,そうした中でジャケの印象だけが残っていて,音として聞いたのは後にジャズ喫茶でのことではなかっただろうか。当時の私はまだまだ初心者であったから,そもそも日本のジャズよりも,所謂モダン・ジャズの名盤やフュージョンのアルバムを聞いていた頃であったし,それほど興味を持っていなかったのも事実である。だが,後になってこのアルバムを聞いて,その演奏能力の高さや熱さには驚かされたものである。しかし,その頃,このアルバムを買おうと思っても,高嶺の花だったというのも事実であるが,ここに来てようやくという感じである。これはめでたい。実にめでたい。
私はそうは言っても,何だかんだと言って森山威男のアルバムを保有していて,彼の演じるジャズの熱さというものに強いシンパシーを感じてきた。そして,このアルバムをこうして改めて聞いてみて,そのシンパシーが更に強まることを自覚してしまった。冒頭の"Sunrise"からして熱い。暑苦しいと言ってもいいぐらいである。正直なところ,McCoy TynerかBilly Harperかってぐらい熱い。そして,この曲を聞いて,びっくりしてしまうのが小田切一巳のテナーである。これが素晴らしいのである。タイトル・トラックのようなスタンダードでも,板橋文夫オリジナルのこの曲においても,小田切の実力がいかんなく発揮されていると感じるのはきっと私だけではあるまい。こんな素晴らしいテナー奏者がいたということに今更ながら驚くが,彼がわずか31歳で亡くなってしまったのはまさに惜しいと思わざるをえない。逆に言えば,命を削るようなフレージングだと言ってもよいのだが...。
もちろん,このアルバムは小田切だけでなく,リーダー森山も,ピアノの板橋も激演なのだが,それに加えて向井滋春のエッジの効いたトロンボーンが加わることで,演奏が更に強烈なものになったと思える。
そして面白いなぁと思ったというか,私だけがそう思っているのかもしれないが,私は"Sunrise"におけるドラムス・ソロを聞いていて,Deep Purpleの"Made in Japan"中の"The Mule"におけるIan Paiceのドラムス・ソロを思い出していたのである。何となく似ているのだ。森山はジャズ・ドラマーではあるが,そのエネルギーはハード・ロック・ドラマーに匹敵することには疑いはない。そうだとしても,ドラムスの歌わせ方までロック的な部分もあるのではないかと思ってしまったのである。本作はそんな森山のエネルギー全開,燃えたぎる演奏を聞かせる傑作。
いずれにしても,私はこのアルバムが再発されたことを素直に喜びたい。そして,このアルバムはこの飛行機の翼のジャケでないと感じが出ないと思っていたので,これで再発されたことはやはりめでたい。ありがちって言ってしまえば,そういうジャケであるが,若い頃のすり込みもあるとは言え,何となく印象に残る写真なのである。
そうした様々な要素も含めて,かつこの音源をより多くの人に聞いてもらいたいという思いも込めて星★★★★★としてしまおう。騙されたと思って聞いてみて欲しいものである。それにしても,特に冒頭2曲の小田切一巳。く~っとなること確実な演奏である。
Recorded on February 27, 1978
Personnel:森山威男(ds),小田切一巳(ts, ss),板橋文夫(p),望月英明(b)with 向井滋春(tb)
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