私にとってはYellowjacketsと言えばこれが一番
"Four Corners" Yellowjackets(MCA)
今も現役で活動を続けるYellowjacketsであるが,私は正直言って,Bob Mintzerが得意ではないので,彼が加入してからのYellowjacketsの音楽にのめり込めない感覚を持っている。それは90年代のGRPレーベル時代からそうなのだが,その一方で,私にとってはYellowjacketsのアルバムとして最もいけていると思わせるのがこのアルバムである(と言って全部聞いているわけではないが...)。
このアルバムは正直言って,かなりハイブラウな曲や演奏が多い。Yellowjacketsは決してポップなバンドだとは思わないが,これはハイブラウさは相当なレベルである。冒頭の"Out of Town"からしてWeather Report的なテイストによるコンテンポラリーなジャズ・サウンドだし,それに続く"Wildlife"ではワールド・ミュージック的な響きを聞かせているところも後のZawinul的な感覚である。最初からがこんな感じなので,決してこれはスムーズ・ジャズではないし,私にとっては聞き流すことが難しいクォリティを持っていると思う。全編がそういった感覚を持っていて,これはかなりカッコいい音楽だと言えると思う。
その一方で"Mile High"のようなこの時代には受けがよかったであろうと思わせるサウンドもあるにはあって,一瞬,Rippingtonsか!?と言いたくなってしまうのもご愛嬌というところである。彼らとしては本音はハイブラウに徹したいと思っていたのかもしれないが,セールスを考えれば,こういう曲も入れざるをえないという判断が働くのも仕方ないだろう。ましてやWeather Reportに勝てるわけではないから,差別化が必要なのだ。ということで,アルバム後半は比較的スムーズな曲調も増えてくるのは事実だが,それでも軟弱というところまではいかない。そうは言っても"Out of Town"がやや突出した響きを持っているのは事実だが...。
繰り返すが,私はBob Mintzer加入後のどのアルバムよりもこのアルバムの方がいいと思っている。それは実のところ,"Out of Town"がそう思わせるのかもしれないし,単に私の好みというところもあるが,リリースから25年ぐらい経過してもそんなに古臭さを感じさせないところは非常にいいと思う。私個人としては結局このバンドにはBob MintzerよりもMark Russoの方が合っていたと思うのだが,そのRussoはこういう方向性は違っていると感じていたのかもしれない。
いずれにしても,久しぶりに聞いてもこのアルバムはやはり好きだった。質のよいフュージョン・ミュージックとして星★★★★。
Personnel: Russell Ferrante(key), Jimmy Haslip(b, vo), Marc Russo(as, ss), William Kennedy(ds, perc), Alex Acuna(perc, vo), Bill Gable(cello, perc, vo), Brenda Russell(vo), Diana Acuna(vo)
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コメント
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こんにちは。
yellowjacketsということででてきました。私個人としてはBob Mintzerは全く問題ないので最新作も含めて追いかけています。
2010年2月だったかにマニラ公演を見たのですが、一時期グループを離れていたWilliam Kennedy(ds, perc)が復活していたのが凄く嬉しかった。
日本に来ないかなあ。。
投稿: こうぞう | 2013年1月21日 (月) 17時10分
こうぞうさん,お久しぶりです。返事が遅くなって申し訳ありません。
私も何だかんだ言いながら,Mike Stern参加盤とか25周年記念盤とかは買ってます。おっしゃる通り,Will Kennedyの復帰はこのバンドにとってよかったはずです
ね。
そう言えば,日本には久しく来ていないようにも思えますね。私が最後に彼らを見たのは在米中ですからもう20年以上前になってしまいました。月日が経つのは早いですね。
投稿: 中年音楽狂 | 2013年1月23日 (水) 22時53分