今年一発目の新譜情報:Sam Rivers盤が素晴らしい
"Reunion: Live in New York" Sam Rivers / Dave Holland / Barry Altschul (PI Recordings)
今年はどの程度新譜を購入するのか予想ができないところであるが,基本的にこの時期はリリースがスローな時期なので,これはっ...というアルバムに出会うことはあまり多いとは思えない。だが,新年早々に仕入れてきたアルバムが非常に素晴らしい出来で嬉しくなってしまった私である。
その作品は2011年にこの世を去ったSam Riversが,2007年に行った演奏のライブ・レコーディングである。本盤の実際のリリースは昨年の秋口のようなので,最新盤ということではないが,全然これまで情報が引っ掛かってこなかったこともあり,ここでは新譜扱いとさせて頂くこととする。本作は2007年にコロンビア大学の学生が運営するFMステーション,WKCR主催で行われた"Sam Rivers Festival"での演奏の模様だそうだが,学生が運営するFM局があって,しかもそれが主催しているのが"Sam Rivers Festival"ってのはコマーシャリズムからこれほど乖離したものもないわと思わせるものと言ってもいいかもしれない。だが,こうしたイベントそのものが開催されること自体が非常に素晴らしいことであるし,ここで演奏した3人も,聴衆の期待に十分応えた演奏を繰り広げている。ここでの演奏はおそらく完全即興と思われるが,ここまで緊密なコンビネーションを成し得たこと自体が素晴らしい。ここでの演奏を聞いて,この3人が一堂に会するのが25年振り以上のことだったと信じられようか。
Sam Rivers,Dave Holland,Barry Altschulの3人と言えば,私が思い出すのはECMレーベルにおける"Conference of Birds"であるが,そこにはAnthony Braxtonが加わっていたから,このトリオってわけではない。そのアルバムも久しく聞いていないが,そちらはCircle - Chick Corea+Sam Riversなわけで,まぁ録音時期からしても,Braxtonがいることからしても,フリーになるよなぁって感じだが,ここでの演奏はフリーというよりも,前衛と伝統がうまくミックスしたバランスの取れた演奏と言えると思う。Sam Riversは印象としてはよりフリーなアプローチを取りそうな感覚があるが,ここでの演奏はフリー的な展開は見せつつも,調性の枠から完全に逸脱しているわけではないところに,何とも言えないスリルを生み出しているわけである。まぁ,Milesが初来日時にSam Riversを連れてきているわけで,そうしたところからもコンベンショナルな部分も兼ね備えたミュージシャンという評価も成り立つから,そうした演奏が聞けるのは当然だとしても,これは予想以上に素晴らしい演奏群である。
そして驚いてしまうのが,Sam Riversの弾くピアノが意外にもいけているということであり,更にはフルートの音色もなかなか素晴らしいものがあるという点である。そして,そこにDave Hollandのベースが相俟ってこの手の演奏が好きな人間にはたまらない出来になっていると言えると思う。Barry Altschulって人は実は私はよくわからないドラマーであるが,それでもバンドとしてのバランスを維持するには十分な仕事ぶりである。
これが私が今年最初に仕入れた複数のアルバムの一つだったわけだが,それがこういう素晴らしい演奏だと,今年も春から縁起がいいわいとでも言いたくなってしまう。決してくつろぎを与えるような音楽ではないが,ジャズの持つ即興音楽としてのスリルを見事に切り出して見せたことにこの3人のミュージシャンの高い創造性を感じざるをえない。万人受けはせずとも,見逃すにはあまりに惜しい傑作。星★★★★★。いや~,これはよい。
Recorded Live at Miller Theater at Columbia University on May 25, 2007
Personnel: Sam Rivers(ts, ss, fl, p), Dave Holland(b), Barry Altschul(ds)
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ECMでのSam Riversの録音は指摘の鳩首会議(トリオからの邦題)の他、Contrast
http://www.ecmrecords.com/Catalogue/ECM/1100/1162.php?lvredir=712&doctype=Catalogue&acat=Artists%2FRivers+Sam%23%23Sam+Rivers
がありました。鳩首会議は比較的分かりやすいインプロヴィゼーションだと思うのですが、tbのジョージ・ルイスとの完全なimprovised musicで熱狂のない、冷たい音。参りました。
それにしてもメンバーがいいですね。Hollandは言わずもがな、ですがBarry Altschulは密かに好みでした。先日、ペトルチアーニの映画で見かけて、健在なのを知りました。
投稿: ken | 2013年1月 5日 (土) 00時47分
kenさん,あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
本作はメンツもいいですが,演奏も非常に密度が濃くて素晴らしいです。こういうのを即興ライブでやってしまうってところが,この人たちの凄いところです。それにしても,Riversが素晴らしいです。比較的温度感を感じさせる演奏ですので,"Contrast"とはかなり違うと思います(あれも久しく聞いてませんが...)。
投稿: 中年音楽狂 | 2013年1月 5日 (土) 14時11分
コメントありがとうございます。さすが、クレマーのネクサスを取り上げていたブログ!
ここまで書いて、すでにコメントを書いていたことに気がつきました。買い忘れていますね(驚いた)。
リバースのピアノはかなり聴かせますね。晩年はどのアルバムも3点セットですが、どれも隔たりなく、いいですね。改めて、もっと語られても良い奏者だと思いました。
投稿: ken | 2019年5月 4日 (土) 11時35分
kenさん,こんにちは。改めて見てみると,以前にもコメントをいただいておりましたね。
John Klemmerを取り上げたのも随分前になりますが,kenさんが反応して下さったことはちゃんと覚えておりましたが,こちらの記事へのコメントは失念しておりました。すみません。
いずれにしても,この演奏,非常に印象深かったという記憶があります。最近はあまり聞いていないので,改めて聞いてみたくなりました。
投稿: 中年音楽狂 | 2019年5月 4日 (土) 14時43分