Brad Mehldauの楽歴を振り返る:その3 ~アンサンブル重視のノネットの一員として~
"Anthony Wilson" Anthony Wilson (MAMA Records)
Brad Mehldauの楽歴を振り返るシリーズの第3弾は,彼としては異色と言ってよいノネット編成のアルバムである。リーダーのAnthony Wilsonは今でこそDiana Krallのバックのギタリストとしての方が有名かもしれないが,元々はバンド・リーダー,Gerald Wilsonの息子として作編曲にもその才能を発揮していた人である。1995年にはMonkコンペティションの作曲部門で優勝しているしねぇ。そのWilsonがデビュー作としてリリースしたのが本作。
ホーンに参加しているメンツには,ビッグバンド系の音源でよく見る人たちが顔を揃えているが,その中ではBrad Mehldauだけがやや異色な感覚が強い。そもそもAnthony WilsonとBrad Mehldauの関係はよくわからないところだが,このアルバムが吹き込まれた頃には既にワーナーからリーダー作もリリースしていたMehldauが,なぜこうした作品に参加したのかは非常に興味深い。ここではアンサンブル重視の演奏とも言える中で,比較的楚々とした演奏に徹しているMehldauだが,ソロ・パートでは結構軽快なフレージングを聞かせている。いずれにしても,何でも器用にこなすものだと思わせるが,だからと言ってMehldau目当てにして買うと,そのキャリアにおける本作の異色感が際立つと言ってもいいかもしれない。まぁ,高校時代などにはビッグバンドでの演奏経験もあるようであるから,こういうのもありなのかなぁって感じだが,彼の楽歴を振り返っても,プロになってからはこういう編成はこれ一枚限りのはずである。
アルバム全体を通して聞いてみれば,ハイライトはBennie Wallaceが一曲だけ参加した"Southern Generation"になるのだろうが,全体を通しても良質なアンサンブルを聞くことができて,特にこうした演奏を好むリスナーには相応に評価されるものと思う。Wilsonに関して言えば,作編曲のみならず,ギタリストとしてもいけているところを感じさせる。だが,Brad Mehldauの演奏だけを考えれば,彼の個性が十分に発露できる編成ではないが,"Do Nothin' till You Hear from Me"のイントロやバッキングなんてさすがと思わせる演奏となっているのは立派である。
だとしても本作はMehldauのキャリアでは変わっている方の部類に入るであろうから,この記事で関心を持って頂いたとしても,購入する場合にはそうした点に留意する必要がある。私のような追っ掛けには必須アイテムだが,単純にMehldau目当てで購入するようなものではないと思える。そうは言っても演奏自体は悪くないので星★★★★には値する。よって,本作はMehldau云々に左右されず聞くのが本来の姿だろう。
それにしても,Wilsonのオリジナルが「カラオケ」だの「パチンコ」だってのはどういうことなのやら...。
Recorded on February 26 & 27, 1997
Personnel: Anthony Wilson(g), Carl Sanders(tp, fl-h), Ira Nepus(tb), Louis Taylor(as, ss, ts, cl), Peter Christlieb(ts, b-cl), Jack Nimitz(bs, b-cl), Brad Mehldau(p), Danton Boller(b), Willie Jones III(ds), Bennie Wallace(ts)
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