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カテゴリー「ジャズ(2012年の記事)」の記事

2012年12月31日 (月)

本年もありがとうございました。皆さん,よいお年を。

いよいよ今年も大詰め。1年の経つのは本当に早いと感じるが,今年は仕事の性質の変化もあって,いろいろ自分でも考えるところの多い年だったように思う。

そんな中で,仕事の憂さを忘れるには音楽や酒に身を委ねることの必要性が更に高まったように感じる1年だったように思える。まぁ,体を壊しているわけではないので問題ないってことにしよう。

実は私は今年,自身の史上最高体重を更新してしまったのを機に,9月以降ダイエットに取り組み,体重を最大7キロ落としたのだが,今回のロンバケで緩いリバウンドが来ている。更に年末年始をはさむことにより,更なる体重増が心配されるわけだが,何とか史上最高体重マイナス5キロは維持したいと思っているが,一体どうなることやら。私のダイエット方法は朝食はがっつり摂りながら,ランチを極小化し,夕食の炭水化物を抜くこと,更には週末のジョギングである。ジョギングに関しては飽きっぽい私にしては結構続いていて,9月にウォーキングとして始めて以来,総距離は270キロを越えている。また,年明け早々からジョギングは復活させなければ,体重維持は難しいと思っているので,多少ペースを抑制しながら続けていきたいと思う。正直あと体重を6キロは落としたいと思っているので,更なる努力が必要であるが,いつまで続くか?

Ringers そして,今年最後のニュースとして,Abstract LogixレーベルのWebサイトからの情報を一つ。同レーベルに所属するミュージシャンから構成されるグループ,THE RINGERSがたった5回だけのショート・ツアーを来年2月に実施するそうである。そのメンツは...なんと,Jimmy Herring,Wayne Krantz,Michael Landau,Keith CarlockにEtienne Mbappe(John McLaughlin 4th Dimension)という超強烈な鼻血が出そうな面々である。Abstract Logixのことであるから,このツアーをリハーサルとして,アルバムを録音してくれるだろうと期待しているが,一体どんなことになってしまうのだろうか。生で見たいなぁ。2月後半に米国東海岸にいる方は是非って感じである。ツアー・デイトは下記の通り

Feb 19, Georgia Theatre ,Athens, GA
Feb 20, Neighborhood Theatre  Charlotte, NC
Feb 21, Lincoln Theatre , Raleigh, NC
Feb 22, BB Kings Blues Club, New York, NY
Feb 23, Howard Theatre, Washington DC

ということで,これにて本年は打ち止め。多くのビジターの方にお越し頂き感謝しております。本年は目標としてきた100万PVにも到達したものの,毎日更新が難しくなってきたと感じてきましたが,来年もできるだけ頻度を維持しながら運営していきたいと思います。どうもありがとうございました。来年もよろしくお願いします。皆さん,よいお年をお迎え下さい。

2012年12月26日 (水)

2012年を回顧する:音楽編(その3)

Sleeper

おそらくは皆さんには退屈であろうロンバケ・シリーズをちょいとお休みして,回顧シリーズをはさみたい。実はこの記事は出国前に書いてあったのだが,アップをしていなかったもの。本年の回顧シリーズもこれが最後。最後にジャズのカテゴリーである。今年も購入した枚数もアップした記事もジャズが一番多いのはいつも通りである。そんな中で,今年最も感動したアルバムは何だったかというと,録音は古いがKeith Jarrettの"Sleeper"だったように思う。これを今年のベスト作とするにはやや抵抗があるのは事実だが,このテンションは凄いと思った。ECMのアーカイブ・シリーズではMagicoのライブもよかったが,"Sleeper"の域には達していないようにさえ思わせる戦慄盤。いずれにしてもこんな音源を出されては,恐れ入りましたと言わざるをえないが,このように優れた音楽が聞けるのであれば大歓迎である。

Fred_hersch_trio_vanguard

発掘作ではないものから選ぶとすれば,感銘度からするとFred Herschの"Live at Village Vanguard"が最も高かったように思う。ここでのHersheは完全に闘病モードから脱しており,力強ささえ感じさせたのは驚くべきことであった。私はもとからHerschを高く評価しているが,ここでは非常にレベルも緊密度も高いトリオ演奏を聞かせてもらい,更に好きになってしまった。来年にはソロでの来日の噂もあるが,是非トリオでも来日して欲しいということで,本作をピックアップすることにしたい。ここからはFred Herschにつきまとう「病魔との闘い」というフレーズは全く不要。そんなものを微塵も感じさせない快演揃いである。これは本当に素晴らしいことである。

Mehldautriowheredoyoustart

同じくピアノ・トリオ盤ということになってしまうが,我がアイドルBrad Mehldauの"Where Do You Start"は素晴らしい出来であった。何よりもMehldauの様々な音楽への目配りが感じられて,曲の本質的な魅力をあぶり出す能力が十分に発揮された作品となった。本当にいろいろな音楽を吸収していると思わされるが,本作のタイトル・トラックにうっとりとさせられたリスナーは多いはずである。今年,Mehldauはトリオで2作をリリースしたわけだが,"Ode"も悪くなかったが,私はこのタイトル・トラックゆえに"Where Do You Start"を選んでしまうというのが正直なところである。ライブには必ずしも首肯できなかった私も,本作は完全にOKであった。いつものことながら,彼のファンでよかったわと思ってしまう私である。

Accelerando更にピアノ・トリオ盤ということで,まずいかなぁとも思いつつ,やはりこれは決して無視できないと思わされたのがVijay Iyerの"Accelerando"である。タイトルのごとく,音楽における「加速度的」訴求力を感じさせながら,非常に理知的な演奏を展開されていて,正直驚かされたのも記憶に新しい。音楽的に言ってしまえば,なかなか一筋縄ではいかない人だという気もするが,この演奏については非常に感銘を受けたし,今までこの人を聞いてこなかったことを後悔したと言ってよいだろう。米国でも玄人筋からの評価の高いIyerだが,ライブも見てみたいと思わせる本当の才人である。だが,日本に呼ぶのは難しいかなぁ。

Nik_bartschs_ronin_live

先述の"Sleeper"以外にも今年はECMレーベルからも多数の新作がリリースされたが,その中で私を興奮させたのがNik Bärtsch's Roninのライブ盤である。ミニマルな音楽でありながら,ファンクを感じさせる彼らの音楽は,一種特有のグルーブ感を生み出しており,聞いていて何とも心地よいのである。非常にカッコいい音楽として,より多くのリスナーに聞いて欲しいと思ってしまう。ただ,ミニマル・ミュージックに耐性がないと,何のこっちゃになってしまうわけだが,これが気持ちよいと一度感じてしまえば,癖になること請け合いである。私は前回のバンドでの来日は見逃しているので,次の機会は絶対見逃せないと思っている。ちなみにShaとのデュオ・ライブってどんな感じだったんだろうか。

The_eleventh_hourもう一枚,これにはびっくりさせられたということで挙げておくと,Johnathan Blakeの"The Eleventh Hour"である。初リーダー作にしてこれほど優れた作品を出してしまっては後で困るのではないかと思わせるほど,このアルバムはよく出来ている。Tom Harrellに鍛えられた成果が出ているというか,本当に才能のある人だったのねぇというのを感じさせてくれる作品であった。

このほかにもいいアルバムは多数あったということで,2012年も実り多き1年だったと言ってよいのではないかと思う。ここに挙げられなかったものではJohn TaylorやSimcock~Garland~Sirkis,そしてJerry Bergonziが最高の出来だったCarl Winther盤,超絶フリーを聞かせたBrotzman~佐藤~森山も記憶に残る。Unity Bandはどうした?って声が聞こえてきそうだが,私はあのアルバムは相応の評価はしているが,感銘度からすると,ここには上がってこないというのが正直なところである。期待値が高過ぎたせいもあるが,もっとはじけた感覚があってもよいと思えたからだ。ライブを重ねて,バンドはよりタイトなものへと変容しているはずであるから,来日時にはその神髄を聞かせてくれるであろうが,アルバムとしてはトップ10には入ってくるとしても,ここからは外す結果となった。

2012年12月18日 (火)

これまた痺れたVigleik Storaasのトリオ作

Vigleik_storaas

"Epistel #5" Vigleik Storaas (Inner Ear)

2012年の回顧シリーズをちょっとお休みして,年末に現れたナイスなアルバムを紹介したい。本作のリーダー,Vigleik StoraasについてはJohn Surmanの"Nordic Quartet"が初聞きであったが,その存在を強く意識したのはInner Earレーベルにおける"Now"だった。それは非常に美しいピアノ・トリオであり,このブログでも相応の評価をし(記事はこちら),Inner EarレーベルはECMライクな部分とも相俟って,俄然私の中では注目のレーベルとなった。その後は,リリースされても日本になかなか入ってこないことや,??なアルバムもあり,今イチ注目度が上がってこなかったのだが,久々のStoraasトリオといことで購入したものだが,これがまたこの手のピアノ好きにはたまらない出来である。

最後の1曲を除いてRainbow Studioにおける録音で,エンジニアリングもJan Erik KongshaugというところがECM的であるが,ノルウェイのピアニストなのだから,オスロで録音するのは当たり前と言えば当たり前なのだ。だが,本作から聞こえてくるサウンドはECM的だと言っても十分通じるものであるのは"Now"と同様である。メンツも"Now"と同じであるから,それもまたむべなるかなというところだ。だが,そうしたサウンドの同質性など忘れてしまうぐらい,ここには美しいピアノ・サウンドが収められていて,寒い冬も少し暖かさを取り戻すような気がしてくるのだ。

冒頭のKenny Wheeler作"Aspire"からして静謐な出だしで,まずはこれで心をつかまれ,時に美しく,時に哀愁さえ感じさせるメロディに時間の経つのも忘れると言っては大袈裟か。イントロは不思議な感じで始まる曲もあるが,途中からはメロディにやられてしまうのである。やはりこれはいいねぇ。そして8曲目にはSam Riversの"Beatrice"が控え,最後はMichel Legrandの「シェルブールの雨傘("I Will Wait for You")」で締められてはまいったというしかない。「シェルブール」はライブ音源というのも凄いねぇ。

今月になってアップする新作ピアノ・トリオ盤はこれで3枚目で,そのどれもがいい出来だが,本作も勝るとも劣らぬものとして推薦できる。今年来日も果たし,お知り合いのブロガーの皆さんも話題にされていたMats Eilertsenも素晴らしい助演ぶりである。星★★★★☆。欧州ジャズ・ファンは必聴。いやいや,これはええですわぁ。

Recorded May 31, 2011 except Track 9 Recorded Live on May 4th, 2010 at Festiviteten, Eidsvoll

Personnel: Vigleik Storaas(p), Mats Eilertsen(b), Per Oddvar Johansen(ds)

 

2012年12月17日 (月)

2012年を回顧する:ライブ編

Chris_potter_underground 今年は私にしてはライブに足を運んだ方だと思う。Tedeschi Trucks Bandに始まり,Keith Jarrett,Rachael Yamagata,クリポタ×2,Robert Glasper,Brad Mehldau,Wayne Krantz,The Dukes of September Soul Revue,Marcin Wasilewski,そしてRadu Lupuということになるが,今年の白眉は誰が何と言ってもChris Potter Undergroundであった。

私はライブにそれほど熱心なタイプではないから,単一バンドの同一期間来日中に2回足を運ぶというのは実に稀なことである。その稀なことを発生させたのがクリポタであった。誰が何と言おうと今年では彼らのライブがベストである。そのほかにもTedeschi Trucks Band,Wayne Krantz,Rachael Yamagataも楽しかった。Fagen~Scaggs~McDonaldから成るDukes of Septemberも楽しめたが,特にBozがよかったねぇ。Mikeはいけてなかったが...(苦笑)。

一方,痛恨だったのがKeith Jarrettのソロ公演の第1部に間に合わず,ロビーでモニターを見ながら聞かざるをえなかったことである。あれはもったいなかったと思いつつ,第2部,そして"I Loves You, Porgy"で落涙できたのでまぁよしとしよう。

期待が大き過ぎて今イチだったのはBrad Mehldau。演奏そのものは悪くないと思うのだが,やはり会場がよくないと言うべきだろう。Marcin Wasilewskiもできればクラブで聞きたかったところである。そして期待を完全に裏切ったのはRobert Glasper。ドラマーが変わるだけでグルーブが生まれなくなったのではどうしようもない。あれはまじでいかん。

もう一点,非常に残念だったのがCecil Taylorの来日中止。次はいつ見られるかわからないだけに,中止は本当に残念だった。

ということで,いいものもあれば,ダメなものもあったライブ観戦であったが,ライブにはライブなりの楽しさがあるのは事実なので,来年もできる限り足を運びたいと思っている。5月のKeith Jarrett Trio,Unity Bandはマストだとして,Patti Smithとかも行きたいなぁ。さてどうなることやら。

2012年12月12日 (水)

これもまた冬にフィット感が強いBobo StensonのECM作

Bobo_stenson

"Indicum" Bobo Stenson(ECM)

このアルバムには"December"だとか"Ave Maria"といった曲が収められているから,むべなるかなという気がしないでもないが,今年のような厳しい冬の夜に聞くと,非常にフィット感が強いアルバムである。冒頭のBill Evans作"Your Story"からしてしっとりと始まり,それだけでつかみはOKという気がするが,本作には清冽な響きという表現が最適な音が詰まっていると言える。

決して熱く燃える音楽ではない。しかし,彼ら3人の共作となっているおそらくはフリー・インプロヴィゼーションで演奏された曲でさえも,フリー的なものも顔を出さず,落ち着いた印象を醸し出しているのだから,これは相当に確信犯的なアプローチだったと言ってもよいかもしれない。そうした音楽であるから,ハードなジャズを好む向きには全く適さないが,ECMファンにとってはこれはまさにECM的なトリオとも言えて,相応の満足度を得られるはずである。タイトル・トラックは"The Most Beautiful Sound Next to Silence"の線を狙ったのではないかと言ってはうがちすぎかもしれないが,その次に現れるWolf Biermann作の"Ermutigung"に至って,ECM好きのリスナーは完全にハート鷲掴み状態になること必定であろう。これは美しい。アルバム全体を通じて,そうした響きが強いが,これとかJormin作の"December"とかはまじでしびれる出来である。そのほかにもアルゼンチンのAriel Ramirezの曲があったり,George Russellの曲があったりと,更にはCarl Nielsenの曲まであり,選曲についてはよくわからないところがあるが,これらはあくまでも素材として使い,このピアノ・トリオの美学を徹底したっていう感覚が強いアルバムである。

このアルバムは,サウンド的にこの季節にフィットしているのも事実だが,この響きには心を落ち着かせる効果があるように思える。よって,熱く燃える必要は全然ないが,傾聴にも聞き流しにも耐える優れた音楽であると言っておかねばなるまい。全体的に見れば最高というところまでは行かずとも,これはなかなかいいアルバムである。とにかく私を痺れさせる曲(ノルウェイのトラッドらしい
"Ave Maria"もそうだ)だけに限って言えば満点でもいいが,全体では星★★★★ぐらいだろうか。

だが,このアルバムの効用はほかにもあったことを追記しておく必要がある。電車で座ってこのアルバムをプレイバックすれば,必ず寝られるのだ(笑)。私の場合,3/3の100%である。この音楽の持つそうした誘眠効果も認めなければならない。というより眠りに誘ってくれる音楽はある意味いい音楽なのだと私は思っている。やはりこれはいい音楽なのである。先日取り上げたRobert  MajewskiのバックでのStensonもよかったが,同様
のリリシズムを聞かせた本作も相応に評価したい

Recorded in November and December, 2011

Personnel: Bobo Stenson(p), Anders Jormin(b), John Fält(ds)

2012年12月11日 (火)

John Taylorが美しくしっとりと歌い上げたCarlo Rustichelliの世界

John_taylor "Giulia's Thursdays" John Taylor(CAM Jazz)

これを新譜と呼ぶことには抵抗を感じざるをえないぐらい,記事をアップするのに時間が掛かってしまったアルバムである。師走になって,駆け込み記事のアップみたいなかたちになっているのは情けない限りだが,それでもこれも素晴らしいアルバムなので,どうしても今年のうちに紹介しておきたいと感じたものである。

ここでJohn Taylorが弾いているのは全てイタリアの映画音楽の名作曲家,Carlo Rustichelli(通称カルロ・ルスティケリ)の作品である。私のような年齢になると,Carlo Rustichelliと言えば,「刑事」の「死ぬほど愛して(Sinno Me Moro)」になってしまうと言っては大袈裟(その映画に関する記事はこちら)だが,イタリア映画とRusticheliはやはり切っても切り離せない存在である。私は子供の頃,結構映画音楽が好きで,関光男がMCをやっていたNHKの映画音楽の番組はよく聞いていたので,実はかなり古い曲も知っているのである。当時はRustichelliとかGeorges Delerue(通称ジョルジュ・ドルリュー)とか舌を噛みそうな名前だと思いつつ(笑),彼らの名前を覚えては悦に入っていたのだから,私のデータ好きはその頃からかもしれない。

と話が脱線したが,ここで取り上げられている音楽は次のような映画のものである。もしかすると違っているかもしれないが,大体まぁってことで...(爆)。「バグダッドの盗賊」,「イタリア式離婚狂想曲」,「ローマの恋」,「祖国は誰のものぞ」,「誘惑されて棄てられて」,「クレオパトラの息子(Il Figlio di Cleopatra:日本未公開)」,「ジュリアの木曜日(I Giovedì Della Signora Giulia:日本未公開)」,「Armiamoci e Partite(翻訳不能<笑>,日本未公開)」と,全然知らない映画もあるが,これは相当渋いチョイスだと言ってもよいだろう。そもそもRustichelliのメジャーなものが必ずしも入っていない。だが,そんなことに対する不満を感じさせないほどイタリア映画音楽の適切な甘さや哀愁を織り交ぜて,非常に詩的に出来上がったアルバムなのである。ECMレーベルでのJohn Taylorはクールさを感じさせたが,ここでのTaylorはもう少し甘口だ。だがそれは甘いだけではない。まさに甘美なのである。こうしたアルバム,演奏が出来上がったのはCAMレーベルがサウンドトラックのリリースにも熱心だということと無関係ではなかろうが,それにしても意表を突いた選曲ながら,John Taylorの持つ美意識を見事に表出させたことが素晴らしい。このピアノを聞いて,イギリス人のピアノだと一発で聞きわける人は相当耳がいいと言いたくなるぐらいの,ある意味イタリア・オペラのよさと同質の美的感覚をおぼえる私であった。

いずれにしても,これをずっとアップしないでおいた私はアホだと言いたくなるぐらいよく出来た美しいアルバム。星★★★★☆。それにしてもこんな演奏を6年近くも寝かしておくとはCAM Jazzは一体何を考えているのか?このレーベル,出し惜しみが結構多いが,そう言えばPieranunziもそうだったよなぁ。もう少しタイムリーに出せばいいものを...。だが,いい作品なので全面的に許す(爆)。いやいや,それにしてもムーディなトリオであった。

Recorded on October 20-22, 2006

Personnel: John Taylor(p), Palle Danielsson(b), Martin France(ds)

2012年12月 6日 (木)

吉報!Fred Hersch再来日。

世の中にはものすごい情報収集能力と驚くべきフットワークで音楽に接し,ライブに参戦される方がいらっしゃる。私のヴァーチャル世界でのお知り合いではShogahさんがその代表と言ってもいい方である。そのShogahさんがFBにお書きになっていたのを受け売りさせて頂くが,Fred Herschが来年春日本でソロ公演をするようである。4/17〜19@Cotton Club。これは何があっても参戦せねば。

振り返れば私がHerschのライブをカザルス・ホールで見てからもう5年の時が流れたが,その後のHerschは昏睡状態に陥ったり,そこから復活したりと,物凄い時を過ごしてきたが,その後は本年屈指のトリオ・アルバムと言ってよいVanguardでのライブをリリースしたりして,明らかに体調も復活しているようなので,本当にこの来日は楽しみである。行きます。行きます。絶対行きます(笑)。

2012年12月 1日 (土)

Robert Majewski: 寒い季節にあまりにぴったりなバラッド・アルバム

Robert_majewski "My One And Only Love" Robert Majewski (Zair, 自主制作盤?)

実際のリリースからは結構時間が経っているようだが,日本国内で流通するようになったのは最近のようなので新譜扱いとさせて頂く。

リーダーには申し訳ないのだが,完全にバックのメンツ買いのアルバムである。そもそもリーダーの名前も聞いたことがなかったし...(笑)。多くの人にとっても購入動機ってそういうことになってしまうだろうし,Stenson,Daniellsonのコンビはまぁ想像できるとしても,そこにJoey Baronが加わるとどうなるのかは極めて興味深い。清冽な響きにBaronがテンションを持ち込むという展開が最も想像しやすい世界だろう。だが聞いてみて出てきた音楽はそんな想像とは全く異なる音楽だったのには驚いた。まさに正調のバラッド・アルバムなのである。

収録曲を見てもほとんどがそれこそ「手垢のついた」と言うべき曲で占められているわけだが,オリジナル重視,変拍子炸裂のアルバムが多い昨今において,逆に新鮮さ,あるいは潔ささえ感じさせるものとなっている。元々が素晴らしい曲ばかりであるから,それなりのミュージシャンが演奏すればそれなりの成果は期待できるが,それでも,ここではバラッド表現に徹したことこそ評価されるべきであろう。ある意味テンポを上げてごまかしたり,おかしなアレンジメントでギミックを感じさせることもできる曲を,「清く正しく美しく」演奏するのは逆に勇気が必要な場合もあるからである。

ここでの演奏を聞いていると,これから寒さが厳しくなっていく今の季節にぴったりの演奏だと思ってしまう。寒さの中で,心を落ち着かせ、暖かくする効果を強く感じさせるからである。これは猛烈に冬が厳しいポーランド出身のMajewskiらしいということにもなるかもしれないが,まさにわかっているねぇって感じである。暖炉に火をくべながら聞いたらまさに最高ってところであろう(実現は甚だ難しいが...)。

いずれにしても想像の音とは違ったとしても,本作に収められた演奏を聞けば,充実した冬を過ごせると言える作品であり,静かなホリデイ・シーズンを過ごしたいと考える人々にもフィットするであろうナイスな作品である。星★★★★☆。

Recorded on December 12-14, 2010

 Personnel: Robert Majewski(fl-h), Bobo Stenson(p), Palle Daniellson(b), Joey Baron(ds)

2012年11月28日 (水)

ライブも素晴らしいNik Bärtsch's Ronin

Nik_bartschs_ronin_live "Live" Nik Bärtsch's Ronin (ECM)

今でも,彼らのアルバムを初めて聞いた時の感覚は鮮明に覚えている。リズム・フィギュアはファンクなのに,メロディ・ラインは完全にミニマルである。そこで思い浮かんだ言葉が,それこそまんまであるが,「ミニマル・ファンク」だった。それ以外に形容しようがないというのが正直なところではあったが,このアルバムを聞いた理由はECMレーベルだったからにほかならないとしても,これは心底カッコいいと思ってしまったのである。私はその後Nik BärtschのアルバムをECMに限らず聞いているが,私のミニマル好きとも相俟って,本当に彼らの音楽にしびれてしまった私であった。

そんな彼らのライブ・アルバムは東京を含む各地で収録された2枚組だが,まさに彼ららしい音楽満載の充実作である。Nik BärtschとShaのフロントはやはりミニマルなのだが,実はこのバンドのリズム隊は結構自由度高く演奏しているのではないかと思わせるものとなっている。ベースにしても,ドラムスにしても,パーカッションにしても,楽譜の縛りはあまりないように思えるのである。特に本作でのファンク度合いを高めているのがBjørn Meyerのベースであり,この心地よいファンクに私はぞくぞくする思いをしてしまった。惜しくもBjørn MeyerはRoninを脱退したとのことであるが,それでもこの演奏を残したことで,多くの人の記憶に残るはずだと思いたい。

彼らの演奏どれを聞いても同じように聞こえるという批判もあろうが,ミニマルなんてそんなものだし,こういう音楽は難しいことを考えるよりも,この心地よいファンクに身を委ねればいいのである。私が今年聞いた中でも最もカッコいいもののひとつと言ってよい1枚である。私は彼らのやっている音楽は全面支持ということで星★★★★★である。ということで,改めて彼らの旧作もまた聞いてみることにしよう。気持ちよ過ぎである。

Recorded Live between 2009 & 2011

Personnel: Nik Bärtsch(p, key), Sha(b-cl, as), Bjørn Meyer(b), Kaspar Rast(ds), Andi Pupato(perc), Thomy Jordi(b)

2012年11月27日 (火)

今聞いてもやはりよいMarc Copland~Ralph Townerデュオ

Songs_without_end "Songs without End" Marc Copland & Ralph Towner (Jazz City)

今やこの二人は私の音楽生活において欠かすことのできない人たちである。その二人のデュオ作品が出たのも随分前になってしまったが,この頃はまだ私はMarc Coplandにはまっていなかったし,Ralph Townerについても好きではあったが,今ほどではなかったはずである。しかし,そんな私でもついつい手が伸びたというのはなぜだかはわからないとしても,どちらかと言えばTowner聞きたさであったと思う。

まぁ,この音源は確かに彼らのいつもの感じと違うって気がしない部分もないではない。時にフリーに近いアプローチさえ聞かせるのだから尚更である。だが,そこはCoplandとTownerである。やはりリリシズムが勝つってところであろう。一方で私がこの音源をしょっちゅう聞かないっていうのはそのいつもの感じとの違いがあるからではないかとも言えるわけで,CoplandにしてもTownerにしても想定外のダイナミズムを感じさせる瞬間もあるのも事実である。

よって,私としてはこのアルバムは彼らの演奏としてファイヴァリットと言うつもりはないのだが,それでもこの二人の演奏というのが今にして思えば貴重なわけである。おそらくはこれ一回きりの共演だったはずだが,相性が悪いってことではないと思うんだけどねぇ...。双方とデュオで共演しているGary Peacockという例もあるし。

まぁ,それはさておき,かなり久しぶりに聞いたのだが,この演奏は悪くない。Townerが多重録音で聞かせるギターとピアノのデュオとは質感が違うとしても,これはこれで微妙な部分もありながら好きだなぁ。ってことで星★★★★ぐらい。いずれにしても本作をプロデュースした増尾好秋には感謝せねばなるまい。

Recorded in November 1993

Personnel: Marc Copland(p), Ralph Towner(g)

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