John Taylorが美しくしっとりと歌い上げたCarlo Rustichelliの世界
"Giulia's Thursdays" John Taylor(CAM Jazz)
これを新譜と呼ぶことには抵抗を感じざるをえないぐらい,記事をアップするのに時間が掛かってしまったアルバムである。師走になって,駆け込み記事のアップみたいなかたちになっているのは情けない限りだが,それでもこれも素晴らしいアルバムなので,どうしても今年のうちに紹介しておきたいと感じたものである。
ここでJohn Taylorが弾いているのは全てイタリアの映画音楽の名作曲家,Carlo Rustichelli(通称カルロ・ルスティケリ)の作品である。私のような年齢になると,Carlo Rustichelliと言えば,「刑事」の「死ぬほど愛して(Sinno Me Moro)」になってしまうと言っては大袈裟(その映画に関する記事はこちら)だが,イタリア映画とRusticheliはやはり切っても切り離せない存在である。私は子供の頃,結構映画音楽が好きで,関光男がMCをやっていたNHKの映画音楽の番組はよく聞いていたので,実はかなり古い曲も知っているのである。当時はRustichelliとかGeorges Delerue(通称ジョルジュ・ドルリュー)とか舌を噛みそうな名前だと思いつつ(笑),彼らの名前を覚えては悦に入っていたのだから,私のデータ好きはその頃からかもしれない。
と話が脱線したが,ここで取り上げられている音楽は次のような映画のものである。もしかすると違っているかもしれないが,大体まぁってことで...(爆)。「バグダッドの盗賊」,「イタリア式離婚狂想曲」,「ローマの恋」,「祖国は誰のものぞ」,「誘惑されて棄てられて」,「クレオパトラの息子(Il Figlio di Cleopatra:日本未公開)」,「ジュリアの木曜日(I Giovedì Della Signora Giulia:日本未公開)」,「Armiamoci e Partite(翻訳不能<笑>,日本未公開)」と,全然知らない映画もあるが,これは相当渋いチョイスだと言ってもよいだろう。そもそもRustichelliのメジャーなものが必ずしも入っていない。だが,そんなことに対する不満を感じさせないほど,イタリア映画音楽の適切な甘さや哀愁を織り交ぜて,非常に詩的に出来上がったアルバムなのである。ECMレーベルでのJohn Taylorはクールさを感じさせたが,ここでのTaylorはもう少し甘口だ。だがそれは甘いだけではない。まさに甘美なのである。こうしたアルバム,演奏が出来上がったのはCAMレーベルがサウンドトラックのリリースにも熱心だということと無関係ではなかろうが,それにしても意表を突いた選曲ながら,John Taylorの持つ美意識を見事に表出させたことが素晴らしい。このピアノを聞いて,イギリス人のピアノだと一発で聞きわける人は相当耳がいいと言いたくなるぐらいの,ある意味イタリア・オペラのよさと同質の美的感覚をおぼえる私であった。
いずれにしても,これをずっとアップしないでおいた私はアホだと言いたくなるぐらいよく出来た美しいアルバム。星★★★★☆。それにしてもこんな演奏を6年近くも寝かしておくとはCAM Jazzは一体何を考えているのか?このレーベル,出し惜しみが結構多いが,そう言えばPieranunziもそうだったよなぁ。もう少しタイムリーに出せばいいものを...。だが,いい作品なので全面的に許す(爆)。いやいや,それにしてもムーディなトリオであった。
Recorded on October 20-22, 2006
Personnel: John Taylor(p), Palle Danielsson(b), Martin France(ds)
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ジョン・テーラーは昔からあまり聴いてこなかったけれど、CAMから2008年にでた「whirlpool」は青磁のの器をながめるような静けさと深さを持ったアルバムだった。
同じCAMから同じメンバーのアルバムが出たのを知ってすぐ買ってきたけれど、よく見ると2006年の録音でちょ...... [続きを読む]
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"Whirlpool"以来(その前にAngel of the Presenceもありますが)このTrioは気に入っています。気心の知れているPalle Danielssonは勿論のこと、若手のMartin FranceのDrumとも調和が良いですね。John TaylorはECMでは冷静、CAMでは甘美、この二つのちょうど中間ぐらいがCharlie HadenとのNightfallぐらいでBittersweetだと思います。それにしてもこの作曲者は、いいMelodyだなとは思っていましたが、結構著名な映画音楽の作曲家だったのですね。
投稿: カビゴン | 2012年12月11日 (火) 11時19分
音楽狂さん、こんにちはmonakaです。
このアルバム、同じようなとらえ方をされてますね。
それでそこにはまってしまうと、結構聴いたりして、聞かないとまたかなりの間聞かないことになります。
ですっかり忘れていたけれど聞きたくなりました。
TBさせていただきます。
投稿: monaka | 2012年12月11日 (火) 14時05分
このトリオもご贔屓です。(笑)
で、これはとても良かった。ブラザーじゃないけど、着たときにはずっと聴いてた。何回かブログにあげようと思ったんだけど。イタリア映画音楽集でしょう。。何せ、その辺疎くてね。
でも、ジョンテイラーが映画音楽弾いたら、、そりゃ、誰が考えてもわかるよねぇ。。。
話題になり損なっているのがおしいですねぇ。
年末までにどうにかしたいけど。。
と、少し、ブログの方法を変えないと追いつかないな。
自己管理能力零なわたし。。
投稿: Suzuck | 2012年12月14日 (金) 08時22分
カビゴンさん,こんばんは。返事が遅くなってしまいました。申し訳ありません。
「John TaylorはECMでは冷静、CAMでは甘美、この二つのちょうど中間ぐらいがCharlie HadenとのNightfallぐらいでBittersweetだと思います。」とは全くおっしゃる通りです。私はこの甘美さにまいってしまいましたが,John TaylorにCarlo Rustichelliをやらせるという判断をしたプロデューサーの慧眼だと思いました。
投稿: 中年音楽狂 | 2012年12月15日 (土) 18時55分
monakaさん,こんばんは。TBありがとうございます。返事が遅くなってしまい誠に申し訳ありません。
これはよくよく聞いてみると非常に美しく,この手のピアノ好きにはど真ん中って感じでした。巷ではあまり話題になっていないのが不思議に思える好アルバムですね。
ということで,こちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2012年12月15日 (土) 18時56分
Suzuckさん,続けてこんばんは。早く記事をアップして下さい。
私もこのアルバムであれば,もう少し話題になってもいいのではないかと思いますが,この辺りのアルバムに反応するブロガーは大体どのお方みたいに想定出来てしまうかもしれません。
でも,これは絶対にもっと聞かれて然るべきナイスなアルバムだと思っています。たまりませんよね。
投稿: 中年音楽狂 | 2012年12月15日 (土) 19時13分