2012年を回顧する:音楽編(その2)
本年の回顧シリーズ第5回はジャズとロック以外の音楽に関してまとめて書きたい。
まずはクラシックであるが,私は全ジャンルから今年1枚だけを選べと言われれば間違いなくこれを選ぶというのがBernstein/IPOによる「マーラー交響曲第9番」である。これに関する記事を書いた時も「クラシック部門ではこのアルバムを上回る作品は今年はありえないともはや確信している私である。まじで感動した。」と書いたのだが,その感覚は今でも変わっていないし,ほかのどの音楽よりも強烈な印象を残した。そんな演奏に心底まいった(まいり続けている)私である。このアルバムがあるゆえにほかのクラシック盤がかすむわけだが,記事にはしていないが,Isabelle Faustのベルク/ベートーベンのヴァイオリン・コンチェルトもレコード・アカデミー賞大賞もうなずけるような演奏だったと思う。器楽ではSchiffの「平均律」が非常に優れた出来だと思った。クラシックは買っている枚数はそれほどでもないが,今年は買ったアルバムは総じて出来がよく,何度も聞くチャンスがあったのはよかった。
ソウル/R&Bではジャケの雰囲気で買って大当たりだったRuthie FosterとMichael Kiwanukaを挙げてもいいのだが,この部門ではRobert Glasperの"Black Radio"にとどめを刺す。Glasperの場合,ジャズのカテゴリーに入れてもいいのかもしれないが,私は記事にも書いたとおり,「Robert Glasperは黒人音楽の全てを取り込み,全てを越境した」と思っているし,ソウル色も濃厚なので,この分野に入れて全く差し支えない。このアルバムがあまりに素晴らしいものだから,来日時もビルボードに駆けつけた私だったが,ライブはグルーブしないドラマーのせいでがっくりだったのは減点要因だとしても,このアルバムの出来はそれを補って余りある。素晴らしいアルバムであった。Glasperはまた来日するらしいが,ライブは前回で懲りたので,ドラムスにChris Daveを連れてこない限り,再参戦はなかろう。その代わりと言っちゃなんだが,Michael Kiwanukaは4月に来日が決まっているので,そっちは間違いなく行くなぁ(笑)。
次にブラジルであるが,今年はあまりCDを買っていないので,これしかないって感じなのがAdriana Calcanhottoの"Microbio Vivo"である。彼女の魅力をようやく理解できた私であるが,このライブ盤は非常に優れた出来であった。大量の紙吹雪が舞う様子をDVDでも見たいものだと思ってしまうぐらいのナイスなライブ。と思っているところに,実はMaria Ritaの母,Elis Reginaに捧げたライブの新譜がリリースされてきたのだが,これは未聴なので,来年の扱いとすることにしよう。
ワールド・ミュージックではSomiを挙げることにしよう。正確に言えば,これは今年の作品ではないので,ここでベスト盤に挙げること自体反則なのだが,反則をしてでもピックアップせねばならんと思わせるような出来だったのである。伴奏のメンツからすれば,ジャズ・ヴォーカルと言ってもいいのかもしれないが,ワールド・ミュージック的な感覚もあるので,このカテゴリーでの選出とした。
このほかに素晴らしいコンピレーションとしてArt Garfunkelの"The Singer"とYumingの「日本の恋と、ユーミンと」があったことは付け加えておきたいと思う。特に後者には通勤時間の友として,随分と世話になってしまった(笑)。
ということで,相変わらずの雑食ぶりを示す私であるが,それにしてもBernsteinは凄かったというのが正直なところである。あれを聞いてしまっては,ほかの「マラ9」を聞く気がしなくなってしまった。そういう意味では罪作りな作品である。
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