Stanley Turrentineは渋いのだ
"Cherry" Stanley Turrentine(CTI)
Earthyという言葉がどこから生まれたのかは謎である。しかし,ジャズ界においてEarthyと言ってなるほどと思えるミュージシャンって誰かと考えると,私にはStanley Turrentineではないかと思える。正直言ってしまうと私にとってはTurrentineはかなり縁遠い人(ほとんどまともに聞いていない)なので,それが正しいとは限らない。勿論,Turrentineは下品なホンカーでもなんでもなく,まともなジャズマンという評価が正しいだろうが,それでも私にとってはそういうイメージしか当てはまらないのである。こういう印象を持つのは、私の唯一のTurrentine経験であるJimmy SmithとのFat Tuesdayにおけるライブの影響があることは間違いない(それに関する記事はこちら)。そこでは洗練されているというのではなく,グルーブ勝負って感じには直球勝負的泥臭さを感じさせた。
だが,改めてCTIレーベルでの作品を聞いていると,Earthyというのもはばかられる印象を与えると同時に,思い込みって怖いよねって思ってしまう私である。今回聞いた"Cherry"の売りはMilt Jacksonとの共演だと思うのだが,Miltゆえにブルージーな感覚がもっと出るかと思いきや,一聴した感覚はもっと普遍的ジャズなのだ。ある意味,セッティングに関係なくこうした演奏を展開してしまう,バランス感覚に優れたのがTurrentineの本質ではなかったのかと思えるような作品である。
本作もメインストリームとフュージョンの中間を行くような作品だが,リズムは8ビートだろうが16ビートだろうが、ジャズ的なフレイヴァーが強烈なのには感心してしまった。端的に言えばTurrentineはどうやってもジャズ的にしかならないのである。
本作はジャズ原理主義者に言わせれば,聞くに値しない(あるいはギリギリジャズと認めてやるぜという)作品になるかもしれないのだが,私は結構楽しく聞けた。毒にも薬にもならないならないという言い方も可能と言われればその通りである。だが,本作が凡百のミュージシャンの演奏とは明らかにレベルが違うことはちょっと聞けばすぐわかることである。その事実こそがTurrentineをTurrentineたらしめているように思えるのだ。ということで星★★★★。この時代になってもCTIっていけていると思わせるのはマジで大したものである。
Recorded on May 17, 18 and 24, 1972
Personnel: Stanley Turrentine(ts), Milt Jackson(vib), Bob James(p, el-p), Cornell Dupree(g), Ron Carter(b), Billy Cobham(ds)
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コメント
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昔、CTIは色眼鏡で見ていましたね。よくよく考えると、ヴァンゲルダーの音だし、案外、いい感じのアルバムが多いですね。個人的にはセベスキーの田舎臭いアレンジは耐えられないけど。タレンタイン、ハバード、ファレルあたりは、すかっと聴くにはいいなあ、といつも思います。はい
投稿: ken | 2012年9月30日 (日) 00時38分
kenさん,こんばんは。確かにDon Sebeskyのアレンジメントは笑っちゃうところがありますよねぇ。
おっしゃる通り,アレンジはされていても,それが前面に出ないぐらいの方が音楽としての聴きごたえはありますし,私もCTIは挙げられた3人はよく聞きますかねぇ。でもなぁ,Deodatoはどうするねんと言われると,「好き」と言ってしまうんですけど...(笑)。
投稿: 中年音楽狂 | 2012年9月30日 (日) 18時49分