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2012年8月21日 (火)

Neneh Cherry & The Thing: ローファイなサウンドから浮かび上がる不思議な感覚

The_cherry_thing "The Cherry Thing" Neneh Cherry & The Thing (Smalltown Supersound)

Neneh Cherryその人に興味があるわけではないのだが,ジャズ・トリオをバックにOrnette Colemanや父のDon Cherry等の音楽をカバーすると聞いて,どういうことになるのかという関心があっての購入である。しかし,伴奏をするThe Thingはジャズ・トリオと言っても,フリー・ジャズ・トリオである。だからこそ私にとっては期待が高まってしまったのである。そもそもNeneh Cherryが真っ当なピアノ・トリオをバックに歌うわけがないのだ。だからこそどうなるのかが興味深い。

そして聞こえてくるのが,物凄くローファイな音である。これが意図的に録ったとしか思えないぐらいのローファイぶりなのである。そしてまた私は思う。これでハイファイな音だったらNeneh Cherryっぽくないし,この音楽には合わない。そんなことをNeneh Cherryがするはずがないのである(笑)。

聞こえてくる冒頭の"Cashback"からしていかにものサウンドで,嬉しくなってしまうリスナーは多いはずである。と言っても,一般のリスナーではない。Neneh Cherryと聞いて反応してしまうどちらかと言えば,ちょっとへそ曲がりなリスナーにとってである。私としてはフリー・ジャズとNenehのヴォーカルをミックスして,ファンク的な世界を生み出すのではないかと想像していたのだが,1曲目は想定通りである。しかし,全編がそうした音楽で占められているわけではない。2曲目に登場するのはSuicideをオリジナルとする"Dream Baby Dream"であるが,ファンク度は落ちるものの,ここでの演奏は1曲目に引き続いて訴求力が強い。Neneh Cherryは元々はスウェーデンの人だが,北欧的なヴォーカルとは対極にあると言ってもよい。どちらかと言えばソウル的な感覚さえ感じさせる声である。

そして展開される音楽も全然北欧の白人的ではない。伴奏をするThe Thingとてスウェーデンとノルウェイのミュージシャンから構成されるトリオだが,北欧的なところは皆無と言ってよい。特にサックスのMats Gustafssonのフリーキーな吹きっぷりは,ここまでやると爽快だぜと言いたくなるぐらいである。

ということで,ここまで書いているとこのアルバムが非常に優れているようにも思えるが,実は全編を聞いていると,狙いどころが実ははっきりしなくて,やや欲求不満が残ってしまうのである。私としてはフリーなリズムを使うのはいいとしても,もう少しファンク・フレイヴァーがあった方がこの人たちの音楽は映えるのではないかと思えたのである。そうした点を除けば,非常に面白い音楽だと思えるのだが,でもこの音楽が好きかと言えば,私の場合は微妙である。むしろ,この音楽が好きだと公言する人もいようが,それは結構スノビッシュではないかと思えるのである。まぁ,世の中にはそういう音楽も必要だが,万人に愛されるものでは決してない。

しかし,Nenehが歌わない局面では完全にフリー・ジャズ化するのはいいとしても,The Thingの本音はこっちなのねぇと強く感じさせてしまうところに,私はこのコラボレーションの中途半端さを感じてしまう。悪くはないのだが,もう少し突き抜けた音楽をやることで,相乗効果を生み出して欲しかったように思える。そこが惜しい。

まぁ,このディスクに期待をかけた私とて,相当のスノッブと言われても仕方がないが,残念ながら私をノックアウトするところまではいかなかった。ということで星★★★☆。だが,やっぱりこのローファイな音は確信犯だろうなぁ。こういう音を聞いて,雰囲気がよく出ていると思えてしまうのが,この人たちの音楽の特質ってところか。だが,この音楽がリスナーを選ぶであろうことは間違いない事実であり,お子様は決して手を出すべきではない。それにしてもこれは分類不能な音楽だなぁ。ということで,完全ジャズでもなく,完全ロックでもなく,ましてや完全ソウルでもないが,それらにカテゴライズした私。う~む,我ながらいい加減だ。

Personnel: Neneh Cherry(vo), Matts Gustafsson(ts, bs, org, electronics), Ingebrigt Haker Flaten(b, el-b, vib, electronics), Paal Nilssen-Love(ds, perc) with Christer Bother(guimbi, donso n'goni), Mats Aleklint(tb), Per-Ake Holmlander(tuba, cimbasso)

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