新たに発見されたRichard Teeのライブ音源
"Real Time Live in Concert 1992" Richard Tee(Video Arts)
ほぼ20年前の音源が発掘された。1993年に亡くなったRichard Teeがその前年にオールスターと言ってよいメンツで来日したときの演奏である。気にはなっていたのだが,購入には至っていなかったものを中古で発見して,めでたくゲットである。
Richard TeeはStuffのメンバーとしても著名であるわけだが,Stuffに限らず,数多くのセッション・ワークにおいて,一音でTeeとわからせてしまうその個性を感じさせるスタイリストであったと思う。それはピアノでもそうだし,Rhodesでもそうなのだ。これって凄いことだと言える。中でも印象に残っているのはセントラル・パークで復活したS&Gのバックでゴスペル的なイントロを聞かせた"Bridge Over Troubled Water"だが,それは後楽園球場で豆つぶのようなS&Gを観た時も同じ感覚であった。あの曲の持つゴスペル的な性格をあぶり出したのがTeeのピアノだったと言えると思う。
私は,Richard Teeのライブを一度だけだがNYC在住中に見ている。クラブの名前は忘れてしまったが,Mikell'sのオーナーだったPat Mikellがやっていた"Chinaなんたら"というアップタウンの店だったように記憶している。そこにはSteve Gaddはいなかったはず(確かChris ParkerかBuddy Williamsで,多分後者)でが,ここにも参加しているようなメンバーが集まっていたように思う。サックスはLenny Pickettだったかなぁ。もう20年以上前のことなので,記憶が定かでないのは仕方がないが,そこでもこうしたメンツが集まり,こういった演奏をしていたのである。そうした記憶を思い起こさせる音源であることは間違いない。
そして演奏される曲はいかにもというものばかりで,安心感のあるサウンドだと思う。でもやはり耳をそばだててしまうのは"Strokin'"であり,"Take the 'A' Train"なのは仕方ないかもしれないなぁなんて感じてしまう私である。ほかも悪くはないのだが,やはりこの2曲にTeeの魅力が凝縮されているように思えるのだ。やっぱりTeeはこの「ノリ」が一番だ。逆に言えば,それがTeeの限界でもあるのだが,この「ノリ」を示されては大概のことは許す(笑)。
その一方,このアルバムでも,「明日に架ける橋」をやっているわけだが,そこで登場する伊藤君子にはどうもピンとこない。本人はソウルフルに歌い上げているつもりかもしれないが,本当にソウルフルに歌うならAretha Franklinをちゃんと聞いてから,顔を洗って出直して欲しいって感じなのである。伊藤君子には悪いが,この歌唱はどうしても好きになれない。
そうしたことを割り引いても,アルバム全体を通じて,この翌年に亡くなってしまうなんていうことは信じられないような演奏群であるが,どこを切ってもTeeらしさが横溢したアルバムである。ライブの冗長な感覚もあるので,星★★★☆とするが,Richard TeeはどうやってもRichard Teeであったという作品。ちなみにRonnie Cuberはバリトン・プレイヤーだが,ここではバリトン以外も演奏しているように思えるのは私だけだろうか?
Recorded Live at インディゴ・ブルース,新宿 on October 28, 1992
Personnel: Richard Tee(p,rhodes), Steve Gadd(ds), Ralph MacDonald(perc), John Tropea(g), Will Lee(b), Ronnie Cuber(sax), 伊藤君子(vo)
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初めまして。いつもながら冴えまくりの文章、お見事です。
大阪公演に行った者です。
そうです、ロニー・キューバーはテナーやソプラノも吹いていました。
このライブ、第1部はこのバンドをバックに伊藤君子のライブ、第2部がティーのライブという構成でした。本作品は第2部とアンコールを丸々収録しています。
投稿: heaven | 2013年6月 4日 (火) 23時47分
heavenさん,はじめまして。返事が遅くなって申し訳ありません。
私の凡庸な文章をお褒め頂き,赤面する思いです。
やはりCuberはバリトン以外も吹いていましたか。音的にもそうですもんね。また,当時のライブの模様を教えて頂きありがとうございます。へぇ~って感じですね。
いずれにしましても,今後ともよろしくお願いします。
投稿: 中年音楽狂 | 2013年6月 6日 (木) 22時44分