Patti Smith,やっぱりこの人は凄い
"Banga" Patti Smith(Columbia)
Patti Smithはパンクだと言われる。でも私は彼女の音楽をパンクだと思ったことはない。私は正直言ってパンクは好きではないが,Patti Smithの音楽には強いシンパシーを感じてしまうのである。だからこそ,パンクではないと思えるのだ。所謂パンクだったら,私はもっと簡単に拒絶反応を示すが,Patti Smithの音楽は私にフィットしているとさえ感じてきたから,彼女はやはりパンクではない(きっぱり)。
今回のアルバムを聞いても,そうした印象は変わらない。それどころか,更に穏やかになったとさえ感じさせるのだ。冒頭のメロディを聞いていたら,これがポップまではいかずとも,相当聞き易い。しかも穏やかである。だが,これを全編聞いてしまえば,ある意味金縛りに近い感覚にとらわれると言ってもよいぐらいだ。とにかく深いのだ。
ポップ・ミュージックなんてある意味チャラチャラしていたって全然問題ないのだが,Patti Smithの音楽にはそうした軽さは一切感じられない。音楽がいくら聞き易くなったとしても,その底流にある志が違うと言うべきか。金も儲けようと思っていないというのはもちろん,思想をこちらに伝えようとしているのではないかというほどの強いメッセージ性を感じさせるのである。私はちゃんと歌詞を聞きとっているわけではないが,サウンドだけでそれを感じさせてしまうというのはこれはやはり物凄いことである。「そんなのお前の思い込みだろうっ!」という声も聞こえてきそうだが,そう思うならまずこの音楽に耳を傾ければいいのである。そうすればわかる。凡百の音楽と違うということは一聴すればわかるはずだ。
私がこれに近い感覚をおぼえたのはLou Reed & Metallicaの"Lulu"以来だと言ってもよいと思うが,ロックのアルバムを聞いていて,強い思想,思念を感じるというのは滅多にあることではない。そうした思いに支配されてしまった以上,私はこのアルバムには星★★★★★をつけざるをえないのである。聞き終わった後にどっと疲れが出るかもしれないが,それは心地よい疲労感であるはずだ。それほどの深みを感じさせるロックはやはり稀有だと言ってよい。とにかく聞いて欲しいって感じのアルバムである。こんなアルバムの中に"Fuji-san"という曲が入っているが,これは昨年の東日本大震災に心を痛めたPattiとLenny Kayeが日本のために書いてくれた鎮魂歌である。心して聞くべきメロディと詞だと言っておこう。
そして最後が"After the Gold Rush"ってのもたまらん。感動した。間違いなく年末のベスト・アルバム候補の一枚。素晴らしい。日本ではどう考えても売れそうにないので,微力ながら私としては全面バックアップ体制を取らせてもらおう。皆さん,買いましょう。そして聞きましょう。
それにしてもJohnny Deppがギターとドラムスでゲスト参加ってのも珍しいなぁ...。つながりが理解できん。でもJohnny Deppファンは買ってね。但し,ほとんど存在感はないので念のため(笑)。
Personnel: Patti Smith(vo), Lenny Kaye(g), Jay Dee Daugherty(ds, mandocello), Tony Shanahan(key) with Tom Verlaine(g), Jack Petruzzeli(org), Jackson Smith(g), Johnny Depp(g, ds), Jesse Smith(p), Louie Appel(ds), Rob Morsberger(p) and Strings
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