Joe Lovanoの貢献大のJohn Abercrombie新作
"Within a Song" John Abercrombie Quartet(ECM)
John Abercrombieの新作は,Joe Lovanoを迎えてのスタンダードを交えての作品ということで,同じくLovano参加のSteve Kuhnの"Mostly Coltrane"を思わせる企画と言えるかもしれない。Kuhn作もややECMらしからぬ部分はあったが,演奏としては極めて高いレベルの作品であり,私は2009年の年間ベスト作の一枚にも選出した(記事はこちら)。
あちらはColtraneが主であったが,こちらはオリジナルから,またまたColtrane,Miles,Bill Evans等いろいろな音楽を集めている。多少の違いはあるが,私には音楽のレベルとしては"Mostly Coltrane"に近いものがあるように感じられた。響きはかなり渋いのだが音楽が深いのだ。やろうと思えば,一丁上がりみたいなやり方も可能なレパートリーに対して,曲への敬慕も感じさせながらの滋味溢れる演奏に私は結構心を打たれてしまった。Joe Lovanoという人は何となくECMとは合わないのではないかと思わせて,これらの優れた作品に連続出演というのは意外でありながら,かなり凄いことである。改めてLovanoを見直してしまった私である。
何がこのアルバムの素晴らしさか?燃え上がるような音楽ではない。それは確かである。しかし,決して派手ではないのだが,そこに展開される見事なLovanoのフレーズという感じなのである。リーダーのAbercrombieが悪いわけではない。十分いい。近年で一番いいと言ってもいいぐらいだ。しかし,ここではLovanoのテナーの魅力がそれを上回ってしまっている。落ち着いた演奏の中にもクールに燃える青白い炎って感じのLovanoのテナーに私は心底まいってしまった一枚である。こういう演奏はLovanoには悪いが,彼のリーダー作では感じたことがない。これがECMというレーベルとLovanoが生み出したケミストリーと言っては褒め過ぎか?でもそれぐらいいいのである。
それにしても,先日取り上げたSteve Kuhnの新作"Wisteria"といい,本盤といい,ECMにしては結構サウンドがコンベンショナルな感覚を示しているのが不思議である。Manfred Eicherが我を通さなくなったのか,プロデューサーとしての音楽的な指向/嗜好が変わったのか,非常にミステリアスではあるが,こんな演奏を聞かせてくれるならいつでも歓迎である。"Mostly Coltrane"には及ばずとも,十分星★★★★☆には値する作品である。はっきり言って,何度でも聞きたくなるような佳品。それもこの演奏の落ち着きゆえ。Kuhnの新作と星の数は一緒でも,どっちが好きかと聞かれれば,私はこちらに軍配を上げるだろう。
Recorded in September, 2011
Personnel: John Abercrombie(g), Joe Lovano(ts), Drew Gress(b), Joey Baron(ds)
« 時間潰しにはなっても記憶に残らぬ「キラー・エリート」 | トップページ | 追悼,Bob Welch »
「ECM」カテゴリの記事
- 追悼,Ralph Towner。(2026.01.20)
- 2025年の回顧:音楽編(その2::ジャズ)(2025.12.29)
- Dino Saluzziの新作は哀愁度高く心に沁みるアルバムであった。(2025.12.17)
- "The Köln Concert: 50th Anniversary Special Edition"を入手。無駄遣いと言われればその通りだが。(2025.12.14)
- 全然ECMっぽくないのだが,音に痺れるジョンスコ~Dave Hollandデュオ。(2025.11.29)
「新譜」カテゴリの記事
- Chick Coreaの旭川でのソロ・ライブ音源が公開された。(2026.02.06)
- Joel Rossの新作はその名も"Gospel Music"。だが,典型的ゴスペルではない。(2026.02.07)
- Julian Lageの新作はまたもJoe Henryプロデュース。(2026.01.25)
- 今年最初の新譜はEnrico Pieranunzi。あの"Live in Paris"と同じメンツで悪いはずなし。(2026.01.05)
- 2025年の回顧:音楽編(その1:ジャズ以外)(2025.12.28)
「ジャズ(2012年の記事)」カテゴリの記事
- 本年もありがとうございました。皆さん,よいお年を。(2012.12.31)
- 2012年を回顧する:音楽編(その3)(2012.12.26)
- これまた痺れたVigleik Storaasのトリオ作(2012.12.18)
- 2012年を回顧する:ライブ編(2012.12.17)
- これもまた冬にフィット感が強いBobo StensonのECM作(2012.12.12)
コメント
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: Joe Lovanoの貢献大のJohn Abercrombie新作:
» Within a Song / John Abercrombie Quartet [My Secret Room]
大好きな利休梅。花の白さも潔いけど、葉っぱの緑が実に爽やか。 清く、爽やかは、わ [続きを読む]
» Within A Song/John Abercrombie Quartet [ジャズCDの個人ページBlog]
ECMレーベル新譜聴き2日目。ジョン・アバークロンビーの新譜が出ました。ジョー・ [続きを読む]
» Within a Song / John Abercrombie Quartet [あ/た/ま]
Within a Songクリエーター情報なしEcm Records
ECMからリリースされた John Abercrombie のバラード集。リーダーはAbercrombieだが、Joe Lovano の存在感が大きく、同じECMからのリリースでLovanoが参加していたSteve Kuhn の Mostly Coltrane を思わせる...... [続きを読む]
» Within A Song/John Abercrombie Quartet [ジャズCDの個人ページBlog]
ECMレーベル新譜聴き2日目。ジョン・アバークロンビーの新譜が出ました。ジョー・ [続きを読む]

































































やっぱり、、閣下は、、タフですねぇ。
わたしは、クリポタのサックスに惚れ直し過ぎちゃって、、
なんか、次に進めないで困ってました。。
テクニックだって、歌心だってあるんだもん。
でも、デモですよ、、ロバーノはそういう比べ方できない。
彼も唯一無二の存在で、頭の1発目からぐぃっと世界に引きずりこみます。
アバクロさまも、覚悟の上での共演でしょう。。。(笑)
投稿: Suzuck | 2012年6月 7日 (木) 18時02分
これは、Lovanoのリーダーアルバムのような出来上がりですね(笑)。そばで地味にAbercroも渋い味出してますって感じで。Lovanoの「客演では良い」は伝説の域に達しているような。Mostly Coltraneとこのアルバムで、LovanoのECMでの客演は買いというTheoryが生まれようとしているのかも。
投稿: カビゴン | 2012年6月 8日 (金) 10時40分
すずっくさん,こんばんは。TBありがとうございます。熱いレポート見ましたぜぃ。いやいや,気合の入り方が違うわ,な~んて思っていました。
それにしても,このアルバム,素晴らしいです。Lovanoが(笑)。絶対合いそうにないレーベル作で,傑作をものにするとはLovano恐るべし。これはしばらく愛聴できると思いました。
ということで,こちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2012年6月 8日 (金) 22時21分
カビゴンさん,こんばんは。コメント全文まさにおっしゃる通りです。
確かにセオリーだ(笑)。これからも信じる者は救われる,かもしれませんね(爆)。
投稿: 中年音楽狂 | 2012年6月 8日 (金) 22時22分
近年、オルガントリオのアルバムが多かったように思いましたけど、このロヴァーノとのクァルテット、曲もおなじみのものが多かったし、ここでもたまに4ビートが出たりして、ECMとしては異色だけど、聴いていて満足感はありました。
しかし、このメンバー、渋いですよね。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2012年6月 9日 (土) 08時15分
910さん,おはようございます。TBありがとうございます。
本当に渋いメンツです。そして出てくる音楽も渋いながらも,感動さえ誘うような素晴らしい出来でした。Lovanoは私の中では評価が定まらない人なんですが,カビゴンさんもおっしゃっていた通り,ECMへのLovano客演=買いのセオリー成立だと思います。
こちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2012年6月 9日 (土) 10時08分
Lovano がアルバムの雰囲気を支配していると感じられるほど存在感が大きいのに、彼自身のテイストとは違うという不思議なアルバムですね。私も真っ先に"Mostly Coltrane"を思いだしました。双方ともとてもお気に入りのアルバムです。というわけで、当方からもTBさせて頂きます。
投稿: 1irvingplace | 2012年8月19日 (日) 06時48分
1irvingplaceさん,こんにちは。TBありがとうございます。
このアルバム,"Mostly Coltrane"ほどの痺れる感覚はないかなぁとも思いますが,いい出来ですよねぇ。Lovanoってここまでよかったのかとまた認識を新たにしました。来月にはMarc JohnsonのECMのアルバムにLovanoがまたまた客演するらしいので,そちらも期待してしまいますね。
投稿: 中年音楽狂 | 2012年8月19日 (日) 11時03分