
"Howie 61" Wayne Krantz(Abstract Logix)
Wayne Krantzの新作である。もうCotton Clubでのライブから2年以上経過してしまって月日の経つのは早いと思わざるをえない。そんな私がリリースがアナウンスされてからこれも首を長くして待っていた作品だが,これが踏み絵(正しくは「絵踏み」らしいが…)のような作品と言ってよいものとなっている。
Krantzは前作でもヴォーカルを聞かせていたし、昔は"Seperate Cages"で一曲とは言え、まるでSSWのような感じの演奏を聞かせたこともあるから,根本的にはギター一本に命をかけるタイプの人ではないようにも思える。
しかし、あまり表現力豊かな歌手とは言えないKrantzの歌をほぼ全編で聞かされれば、微妙に感じるリスナーがいてもそれは不思議なことではない。おそらく多くのリスナーにとってはそうしたアンビバレントな感覚が存在するはずである。だからこそ踏み絵なのだ。基本的なKrantzのイメージは、やはりギタリストとしてのものだから、ここでの演奏がギタリストとしてのKrantzとして最高だとは当然言えない。歌う暇があれば、もっと弾き倒してくれと考えるのが人情である。
アルバムとしてはタイトに引き締まった演奏ではあるが、ギターの露出が少ないのが不満に思える。
ではこれがKrantzの演奏のコアな部分になるかと言えば、それも違うように思えるのだ。私が本作のリリース記念のギグをNYCのIridiumで聞いていたら、もう少し確信めいたことも言えるのだが、それも果たせなかった現状では、あくまでも想像の域を出ない。だが、Krantzの本質は,予測不能性の高い,都度変転していく演奏にあるわけで、そうした自由度の低下をもたらすであろう歌が主流になるとは思えないのである。
私にはKrantzにとっては、アルバムはアルバム、ライブはライブという割り切りがあるのではないかと感じられる。そうでなければ、ライブにクリポタや、Lefevbre~Carlockのような凶悪なメンツを集めるとは思えないのだ。いずれにしてもKrantzの活動の方向性はまだまだ読み切れないというのが正直なところではある。
ともあれ、本作も何度も聞いているのだが、まだ違和感をぬぐい切れないでいる私である。Krantzのアルバムだと思わなければ、それなりに楽しめる作品と言えるが、Krantz作品としてはやはり微妙である。
もし、この作品でKrantzに初めて出会うリスナーにとっては、ライブの演奏がいつものような感じであったら、大いに戸惑い、一方、長年のファンはそうした演奏に快哉を叫ぶという罪作りな状況を生み出しかねない作品である。何がKrantzをこうさせたのかはわからないとしても,全面的には支持できないなぁ。ちなみにここで一曲だけ聞かれるDavid Binneyのソロは,私が今まで聞いた中で,一番よかったように思える。繰り返すが,音楽としてはあまり文句はないが,Krantz作という点を考えれば星★★★☆ってところだろうか。カッコいいんだけどねぇ。
Personnel: Wayne Krantz(g, vo), Paul Stacey(slide), Henry Hey(p), John Beasley(p), Owen Biddle(b), John Patitucci(b), James Genus(b), Tal Wilkenfeld(b), Pino Palladino(b), Nate Wood(ds), Charlie Drayton(ds), Keith Carlock(ds), Vinnie Colaiuta(ds), Kenny Wollesen(ds), Anton Fig(ds), Jeremy Stacey(ds), Gabriela Anders(vo), David Binney(sax), Yasushi Miura(sonics)
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