今聞いても素晴らしいPhoebe Snowのデビュー・アルバム
"Phoebe Snow" Phoebe Snow(Shelter)
Phoebe Snowが一昨年亡くなって,その後,Columbiaレーベルの諸作が紙ジャケで再発になった。それらのアルバムも私は"Never Letting Go"を筆頭に結構好きだが,Phoebe Snowについて考えるならば,やはりこのデビュー・アルバムが最高であることには異論はないだろう。
シンガー・ソングライターとしての素晴らしさとブルージーな感覚,ソウルフルな歌いっぷりを聞いて,当時の彼女が23歳とか24歳だったと信じられる人がどれぐらいいるだろうか。かつ,アコースティック・ギターの弾き手としても味わい深いのだからこれは大した才能だったと言ってよいだろう。
バックにもジャズ系のミュージシャンも交えて展開される音楽は相当に渋い。Zoot Simの参加も驚くが,Teddy Wilsonまで入っているのには恐れ入ってしまうと言ってよいだろう。しかもそうしたジャズ界の大物がThe PersuasionsやDave Masonのような別のフィールドのミュージシャンと同居していても,全く違和感がないのである。これはまさに優れたプロデュースの賜物とも言えるが,それを実現してしまうPhoebe Snowは偉い。
そして,このように渋いアルバムが全米トップ5に入ったというのも今にして思えば凄いことだが,それでもこういう音楽が評価される土壌があること自体が素晴らしいとも言える。今だったらAdeleがバカ売れする感覚に近いものかもしれないが,それにしてもこのアルバムの曲のクォリティには驚いてしまう。リリースからもはや40年近くが経過しても,ちっとも古びたところがないのは私がここに収められた類の音楽が好きだという理由だけではないだろう。これはやはり立派なアルバムであったのだ。
私がこのアルバムを聞くのは久しぶりのことだったのだが,私の記憶の中にあるレベルよりもはるかに優れた演奏が聞こえてきて,正直,自分の耳の至らなさを反省してしまった。Columbiaの作品もいいが,この作品に比べると何かが足りない。あるいは,逆に何かが過剰だったのかもしれないが...。
1974年のPhoebe Snow,彼女はまさに後年のアルバム・タイトルではないが,"Something Real"であった。星★★★★★。素晴らしい。
尚,オリジナルのカヴァー・アートは上のものであるが,ちょっと素っ気ない感じもする。当時のこの作品の邦題は「サンフランシスコ・ベイ・ブルース/ブルースの妖精フィービー・スノウ」というものだったため,日本盤には金門橋の写真を被せたジャケになっているが,どっちかというとこっちの方が雰囲気出ているように思うのは私だけではあるまい。でもPhoebeは生粋のニューヨーカーではあるが...
Personnel: Phoebe Snow(vo, g), Teddy Wilson(p), Bob James(el-p), Steve Burgh(g), Dave Mason(g), Hugh McDonald(b), Chuck Domanico(b), Chuck Israels(b), Steve Mosley(ds, perc), Margaret Ross(harp), Zoot Simes(ts), The Persuasions(vo)
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コメント
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ご無沙汰しています。
最近チョイ昔の名盤紹介に同感の想いを強く感じています。特に今回は感じ入ってしまい思わず書き込みをしてしまいました。
時代を超越した実に好い盤です。私も探し出して聴こうと思っています。
こういう盤の特集も面白いかもしれませんね。
投稿: 山帽子 | 2012年2月12日 (日) 10時30分
山帽子さん,こんにちは。
昨今のジャズ系の新譜にあまり魅力的なものがないということもあるのですが,保有している音源をちゃんと振り返ることも重要だと思っている今日この頃です。このアルバムなんて,これまでこのよさを理解していたかどうかの自分の音楽の聞き方に疑問さえ感じてしまいました。
温故知新というのは真理だと思いますよね。
投稿: 中年音楽狂 | 2012年2月12日 (日) 12時03分
今晩は!紙ジャケで出たんですか?知りませんでした!それと金門橋が入ったジャケットもあったんですね?
このアルバムは中学生の時、洋楽を聴き始めて最初にFMでエアチェックしたアルバムなんですよ!その後レコードを中古で数年前に購入したらどうも初回盤のようで音も良いんですよ!500円くらいで購入したものなんですけどね!今でも時々聞いているアルバムの1枚です!
投稿: takeot | 2012年2月12日 (日) 20時43分
takeotさん,こんばんは。すみません。誤解があるといけないのですが,このアルバムの紙ジャケが出たわけではありません。以前,当ブログにもアップしましたが,紙で出たのはColumbia時代の4枚です。
まぁ,ジャケが紙であろうが,プラであろうが,いいものはいいということに違いはありませんが。しかし,本作のオリジナルですか。それはよさげですよねぇ。私は地味にCDで我慢します(笑)。
投稿: 中年音楽狂 | 2012年2月12日 (日) 20時57分