またも懐メロ:"Deodato 2"
音楽的に冬枯れのようになっている。仕事が忙しくて,ショップに行く暇もないということもあるが,今は注文してある新譜が届くのをじっと待っているような状態なので,昨今は手持ちの音源ばかりを聞く毎日である。まぁ,新しいものばかりではなく,たまには古い音源を聞くことも新しい発見を与えてくれるから,それは決して悪いことだとは思わない。
だからと言って,なんでこのアルバムなんだということになるが,たまたま棚の奥から見つけてきたからである。私はDeodatoの音源は最近のアルバム以外はもっぱらCTIのベスト盤を聞いているという感じなのだが,そちらには"Rhapsody in Blue"が入っていないため,それが聞きたくなったからというのが探索の理由であった。
"Rhapsody in Blue"に限らず,このアルバムを聞いていると,Deodatoの音楽はゆるやかなファンクと,ストリングスとホーンをうまく組み合わせた感じというのがよくわかる。DeodatoのRhodesがファンキーなフレーズをパラパラと弾く上にかぶさる弦とホーンが心地よいのだ。特にフルートのアンサンブルが効いているという感覚が強かった。強烈なホーン・セクションというよりも,フルート・アンサンブルをコアにして,その他のホーンは比較的おとなしめという感じに聞こえたのは結構新鮮だった。
いずれにしても,このアルバムは「ツァラトゥストラ」の入った"Prelude"の成功を受けて作られた「二匹目のドジョウ」的アルバムと言ってしまえばその通りなのだが,ベスト盤にも入っている"Super Strut"や"Skyscrapers"も入っていてかなり楽しめる作品である。また,クラシックのアダプテーションである「亡き王女のためのパヴァーヌ」は欧州映画の音楽のように聞こえるような気品さえ感じさせるところがまたまた面白い。ラヴェルが書いたこの曲は,Deodatoがアレンジしようが,やはり欧州的なのであった。
そうした中で,今回本作を聞き直してみて思ったのは,John Tropeaのギター・ソロの「いけてなさ」だったように思う。この人,カッティングをやっている分には全然気にならないのだが,ソロになった瞬間,これはいかんと思ってしまうのである。とにかくフレージングが面白くない。普段は聞き流すことが多いDeodatoの音楽ゆえに今まで気にしたことはあまりなかったように思うが,これではちょっとなぁという感じなのである。これは明らかに減点材料となったが,それでももともと私はDeodatoの音楽はかなり好きのようなので,星★★★★としてしまおう。Tropeaはいけていないが,Stanley ClarkeとBilly Cobhamのリズムのコンビはやはり強烈なのである。
ところで,ボーナス・トラックとしてSteely Danの"Do It Again"が演奏されているが,これは所詮ボーナスだと思って聞くべきものと言っておこう。正直言って大したことはないので,念のため。
Recorded in April and May, 1973
Personnel: Eumir Deodato(key, arr), Stanley Clarke(b), John Gilmore(b), Billy Cobham(ds), Rick Marotta(ds), Rubens Bassini(perc), Gilmore Degap(perc), John Tropea(g) with horns and strings
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