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カテゴリー「ジャズ(2011年の記事)」の記事

2011年12月31日 (土)

2011年:私のベスト3+α

これまで,2011年5回に渡って回顧してきたが,音楽に限って,2011年の私のベスト3は何だったかを明らかにしたい。Loureedmetallica_lulu

これまでの記事をご覧頂けば,ある程度想像はつくかもしれないが,今年,私にとってナンバー1となったアルバムはLou Reed & Metallicaの"Lulu"である。この作品がデリバリーされて,初めて聞いた時の衝撃というか,私は電撃を受けたように感じてしまったぐらい,この作品には最初からまいってしまった。とてつもない深みを音楽から感じたのは久しぶりの体験だったと思う。よって,今年のナンバー1はこれだとその時から決めていた。

Live_in_marciac_2

"Lulu"があまりにも強烈だったので,ほかの2作が悩みどころになるわけだが,次席はBrad Mehldauの"Live in Marciac"にしたい。ソロ・ピアノではあるが,強烈にジャズを感じさせる演奏として,このアルバムは強く印象に残っている。本作を含め素晴らしい作品をリリースしたBrad Mehldauであるが,私としてはつくづくBrad Mehldauのファンでよかったと思った1年である。今後,彼はどこへ向かっていくのかと心配にもなるが,真の実力者であるとともに,年を追うごとに凄みが増してきている。多くのリスナーがそうであるように,そろそろトリオでの吹き込みも期待したいところではあるが,この創造性を維持してくれるなら,文句は言うまい。これからも彼の活動は追い掛けていきたいと思う。

Maria_rita

そして,もう1枚は今年のマイ・ブームを作り出したMaria Ritaの"Elo"である。私はこれまで彼女の音楽を聞いたことがなかったことをまさに恥じた一枚。慌てて,逆時系列で彼女の作品を聞いていった私である。Maria Ritaのファンにとってはこの作品は最高ということにはなっていないようだが,私にはこのシンプルなバックで,素晴らしいグルーブを生みだすこれぞブラジル音楽という魅力を感じてしまった。

これらが2011年を代表する作品であるとは限らないが,私にとってはさまざまな要素を含めてこの3作をベスト作とすることにしたい。

Ondrej001

そして,本来は本年の回顧(ジャズ編)で取り上げるはずであった,チェコのテナー奏者Ondrej Stveracekを改めて紹介しておきたい。その記事を書いたとき,完全に失念してしまったのだが,まさに今年最大の発見,あるいは今年のRising Starとでも呼びたいテナーサックス奏者である。スタジオ盤もよかったが,私を更にしびれさせてくれたライブ盤をここにはアップしておこう。CDの入手は楽とは言わないが,ネットで注文もできれば,iTunesでダウンロードもできる。是非多くの人に聞いて欲しいという思いもこめた。

ということで,今年は震災もあれば,職場の環境の変化等,私にとっては辛くもいろいろ考えさせられることが多かった。そうした中で,音楽は私の生活の支えになっていたことは間違いなく,音楽によって救われたことも多々あった。来年はもう少しましな1年になることを期待しつつ,今年の音楽界は豊作だったなぁと改めて振り返る大晦日である。

読者の皆さんには,本年もしょうもないブログにお付き合い頂きましてありがとうございました。来年は6年目に突入するこのブログですが,引き続きよろしくお願い致します。

では,皆さん,よいお年をお迎え下さい。

2011年12月30日 (金)

Claudio Filippini:これが今年最後の新譜である。

Claudio_filippini

"The Enchanted Garden" Claudio Filippini(CAM Jazz)

年末もいよいよ押し詰まってきて,新譜が出るようなシーズンではないし,ショップに出掛けている暇もないので,これが2011年に取り上げる最後の新譜となる(残り2日なのだから当たり前だが...)。このアルバムはEnrico Pieranunziがライナーを書いていることからもわかる通り,基本的にはEnrico系の美しいピアノが聞けるアルバムである。だが,この28歳のピアニストにとって,メンターはEnrico Pieranunziだけではないことも明確に表れている作品である。

そうした感覚が最も顕著なのは4曲目の"Flying Horses"であるが,これは誰が聞いてもわかる通り,E.S.T.の影響大である。逆に言えば,この演奏がアルバム全体の中では非常に浮いているという言い方も可能であるが,まだ28歳だからいろいろな要素を吸収すること自体は悪いことではないし,今後の飛躍に向けてはこういうのもありだろうと思う。だが,浮いているものは浮いているので,次作以降のプロダクションには検討の余地があるだろう。

それにしてもクリアなタッチの人である。こういうトーンで演奏する限りは結構なファンも付くのではないかと思うが,私はLorenzo Tucciの"Tranety"でこの人を聞いていたことを思い出した(同作については記事はアップしていないが...)。そちらのアルバムでもクリアなトーンとフレージングが魅力だと思ったのだが,それを踏まえれば,私はこの人はアコースティック一本でも勝負できると思ってしまうがゆえに,一本筋が通った制作姿勢が重要だと考えるわけである。私としては「筋を通した」"Tranety"の方が好感度が高いということもあり,惜しいなぁと思いつつ星★★★。決して悪くないのだが,演奏や音楽の方向性は一本に絞っていくべきだと言っておきたい。

Recorded on February 14, 15 & 16, 2011

Personnel: Claudio Filippini(p,key), Luca Bulgarelli(b), Marcello Di Leonardo(ds)

2011年12月29日 (木)

2011年を回顧する(その5):音楽(ジャズ)編

2011年を振り返ってみれば,ジャズ界はかなりの豊作だったと言っていいように思う。特に今年前半から中盤にかけての,良作ラッシュは記憶にないほどのものだった。私のブログには2011年おすすめ作なるフィールドが右側にあって,ここを見ていれば,今年,私が気に入ったアルバム(星★★★★☆以上の新譜)はすぐにわかるわけだが,2010年よりもはるかに掲示している作品数が多いことがお分かり頂けるだろう。そういう意味では,ジャズに限らず,作品的には充実した一年だったと言えるように思う。

Live_in_marciacそうした中で,改めて振り返ってみれば,今年の私にとってのジャズでの最高作はBrad Mehldauの"Live in Marciac"ということになってしまうように思う。録音は5年前に遡るが,その時点で極めて高いレベルの演奏を展開していたBrad Mehldauにはまさに驚かされたというか,ソロでこのような演奏をしてしまえば,聴衆が熱狂するのも当たり前だと思ってしまう。私がBrad Mehldauのコンプリートを目指すということを差し引いても,この作品は極めて高く評価されて然るべき作品だと思う。Mehldauと言えば,もう1枚,Kevin Haysとの美しいデュオを聞かせた"Modern Music"も忘れ難い。ついでに年末に出た「トリオの芸術」ボックスの未発表ライブ音源も嬉しいものであり,まさにMehldauファンにとっても忘れられない1年だったと言ってもよいかもしれない。更に,MehldauのメンターであるFred Herschのヴァンガードにおけるソロ・ライブもよかったことも追記しておこう。

Prysm

一方,インパクトという観点ではPrysmの"Five"にとどめを刺す。彼らにとっては久々のアルバムとなった本作が,多くのブロガーの皆さんの支持を集めるのは,この強烈なインパクト,スピード感に対して感じる快感ゆえではないかと思う。このアルバムに関する記事を書いたとき,私は「火傷に注意」と記したが,それぐらいの高揚感をおぼえるある意味ハード・ロック的なアルバムである。

Michel_polga

また,同じくインパクトが強い作品としては,Fabizio Bossoがモーダルにラッパを吹きまくったMichele Polgaとの"Live at the Panic"は私のBossoに対するイメージを覆した作品であった。正直言って,お気楽ハードバップでもいいのだが,こうしたよりハードボイルドな路線は本当に歓迎したいと思ってしまう私である。やりゃできんだからさって感じであるが,期待以上の音が聞こえてきて嬉しくないリスナーはいないのである。とにかくこれはよかった。また,サウンドというよりも,音楽としての面白さという点では,Nguyên Lêの"Songs of Freedom"が魅力的だった。

Faithful

静謐系ではMarcin Wasilewskiの"Faithful"がECMレーベルらしい美しさ炸裂ということで,やはり今回も期待に応えてくれたと思う。とにかく,最近の彼らの音源にははずれはなく,透徹な美学というのは彼らの音楽のためにあるとさえ言いたくなってしまうような素晴らしさである。ポーランドってのは冬は物凄く寒いところだが,あの寒さに耐えながら,音楽を生みだすというところは,北欧にも通じる部分があるのかもなぁなんて思ってしまう。それにしても,本当にこの人たちがアルバムを出すたびに,まいった,まいったと連呼する私である。

Gravity

また,Wasilewskiとはちょっとスタイルは違うがJulian & Roman Wasserfuhrの"Gravity"がロマンティシズム溢れる演奏で,思わずおぉっ!となってしまった。ドイツのミュージシャンから,このようなロマンティックなサウンドが聞けるとは思っていなかったので,これは純粋に驚いたと言ってもいいだろう。"Five"や"Live at the Panic"と同列で,こうした作品をベスト作に挙げる私はやはり精神分裂症なのか...(苦笑)。しかし,Mehldauを除けば,これらの作品をリリースしているのがみんな欧州のレーベルだということに気がつく私。アメリカ・メジャーにはあまり期待できないのかもしれないなぁなんて思ってしまう。

そうは言いながらも米国系のレーベルにもPar Martinoの新作,James Farm,Gary Burtonの新バンド等,光る作品がないわけではない。だが,欧州系レーベルの「わかってるね」感が一歩も二歩も上回っているように感じている私である。米国メジャーに期待するのであれば,MilesのBootleg Seriesのような発掘が中心になっていくかもしれない。

Gretchen_parlato

尚,私が日頃あまり手を出さないジャズ・ヴォーカルだが,今年聞いた中ではGretchen Parlatoの"The Lost And Found"が非常によかった。私はこのアルバムを取り上げた時,「サウンドがずっとコンテンポラリーなので,私にはカテゴリーなど関係ない女性ヴォーカルとして聞けてしまった」と書いたわけだが,結局,ジャズ・ヴォーカルを前面に押し出していない感覚が私が気に入る理由なのだろうと思う。こうしたところに私の嗜好が如実に表れているなぁなんて感じてしまったが,いいものはいいのである。

ということで,ほかにもまだまだいいアルバムはあったと思うが,記憶に残った作品ということでは上述のような感じだろう。そしてJazz Man of the YearはBrad Mehldauということにしよう。また贔屓目強過ぎと言われそうだが,今年の作品はLee KonitzたちとのBirdlandでのライブも含めて,どれも優れていたのだから,文句は出ないだろう。

最後に,自分だけのレーダーだけではいくつかの作品には出会っていないはずであり,こうした作品をご紹介頂き,新しい音楽に触れる機会を与えて頂いたブログのお知り合いの皆さんに感謝したいと思う。

2011年12月24日 (土)

今年のホリデイ・シーズンはSingers Unlimitedで。

Singersunlimited_christmas "Christmas" The Singers Unlimited(MPS)

世の中はホリデイ・シーズン真っただ中である。そんな時に何を聞こうか迷った時には私の場合はGRPのコンピレーションに依存することが多かったのだが,今年は昨日紹介のMichel Legrandのゴージャスなアルバムと,美しいハーモニーによるその名もずばりの本作だけで終わりである。

この人たちのコーラスは本当に美しいとは思うのだが,発声法はポピュラー音楽そのもの,特にBonnie Hermanがそうであるから,お馴染みの,あるいは馴染みの薄いクリスマス・ソングを聞いていても,宗教くささは感じない。本来,こういう音楽は敬虔な気持ちで聞くべきものだと思うので,私はクラシック的な発声の方がしっくりくるような気もするが,それでもこのコーラスを聞いて心の癒しを得られればいいのではないかとさえ思ってしまう。

本作でもほとんどの曲は彼らの代名詞であるアカペラ(そして多重録音)で歌われるので,変化には乏しいという指摘があっても反論はできないが,多重録音により生み出されるナチュラルなエコー感が彼らの音楽の魅力であり,それにずっぽりとはまっていれば腹も立たない。この音に身を委ねればいいのだと思ってしまう。

いずれにしても,こうした音楽を聞きながら,本質的には神への感謝を捧げるというのが筋であり,ちゃんと神を讃える歌詞にも耳を傾けたい。今年は結構辛い1年だっただけに,こうした音楽でいろいろなことを洗い流してしまいたいと思ってしまうし,それを許してくれる1枚である。音楽がこの世界にあることを感謝したくなる瞬間。このアルバムには採点は不要である。

ということで,Season's Greetings to You All. I Wish You Happy Holidays and a Great New Year!!

Personnel: Bonnie Herman(vo), Len Dresslar(vo), Don Shelton(vo), Gene Puring(vo)

2011年12月23日 (金)

超ゴージャスなつくりのMichel Legrandによるホリデイ・ミュージック

Michel_legrand

"Noël ! Noël !! Noël !!!" Michel Legrand(Emarcy)

世の中ホリデイ・シーズンである。この季節ならではの音楽が巷にも溢れているが,今年出たホリデイ・アルバムの中では最も予算が掛かっているだろうと確信させるような作品である。

主役はMichel Legrandであるから,立派なオーケストラ作品に仕立てるだろうことは想像に難くないのだが,ここではゲストで参加するヴォーカル陣が何と言っても目を引く。まぁIggy Popを除けば,想定内って気がしないでもないが,やはりLegrandらしい人選と言うべきだろうか。

そうしたメンツがお馴染みのホリデイ音楽を,それぞれの個性で歌っているが,それでもやっぱり思ってしまうのが,「なんでここにIggy Popが出てくるねん?」という点ではないだろうか。はっきり言って浮いていると言えば,これほど浮いているものはないって気もするが,それでもLegrandの伴奏に乗って,Iggy Popすらそれっぽく聞こえてくるから不思議である。

この豪華さに気を取られていてしまう確率が高く,音楽としての評価がおろそかになってはいかんが,これはこれで王道と言ってもよさそうなホリデイ・ミュージックであると言ってもいいだろう。こういう音楽がバックで流れているだけで,豪華なホリデイ気分が味わえるのではないかとさえ思ってしまう。去年はこの時期,私はカナダでの休暇を過ごしていたが,今回は日本でわびしく過ごしている。そんな中でも,少しはゴージャス感を覚えさせてくれるという意味では相応の存在意義がある作品。星★★★★。それでもIggy Popは浮き過ぎである(我ながらしつこいっ!!)。

Personnel: Michel Legrand(arr, cond) with Jamie Cullum, Mika, Teddy Thompson, Rufus Wainwright, Madeleine Peyroux, Iggy
Pop, Carla Bruni, Emilie Simon, Ayo, Imelda May, Renan Luce, Olivia
Ruiz, Cœur de Pirate and Many Others...
         

2011年12月22日 (木)

Michal Bugala:今度はスロヴァキア出身のギタリストである。

Michal_bugala001

"!st Touch" Michal Bugala(HF Bratislava)

先日チェコ出身のOndrej Strevacekが凄いなんて話をこのブログに書いたばかりだが,今度はお隣スロヴァキアのギタリストである。リーダーについては聞いたこともないが,バックのメンツは豪華版である。Danny GrissettのトリオにSeamus Blakeを加えたクインテットであるが,正直言って完全なメンツ買いだったにもかかわらず,これがコンテンポラリーな響きを持ったジャズ・ギター・アルバムとなっていて,これはなかなか満足度が高い。

リーダーのBugalaは1982年生まれらしいので,まだ30歳手前というところであるが,フレージングなんかはNYCで活躍するギタリストとの共通項が多いように思える。変拍子も多用していかにも現代的な演奏であるが,まぁメンツからすればそれも当然という気がしないでもない。アコースティック・ギターで演じられる"Nowhere Now"はかなり味わい深く,サウンドがJohn Abercrombieのようだと思ったら,Bugalaはジョンアバのワークショップにも参加したことがあるとのこと。なるほど,影響受けてるのねぇなんて思ってしまった。

このアルバムに関しては先述の通り,バックのメンツにつられて買ったと言っても過言ではないが,このBugalaというギタリスト,なかなかの実力者である。様々なタイプの楽想にも適切に対応したフレージングを連発して,結構な才能を感じさせる。Seamus Blakeとの丁々発止のやり取りも聞きたかったところであるが,ここではSeamusはあくまでもゲスト扱いで全面的な参加ではない。しかし,それを補って余りあるのがGrissettのレギュラー・トリオである。彼のリーダー作にギターが乗っかったようなかたちと考えてもいいように思えるような出来である。Grissettはピアノ,Rhodesともにいけているフレーズを展開して,リーダーを見事にサポートしている。特にRhodesを弾いた"QuadraPop (...What?)"がベストの出来か。

いずれにしても,こういう全く知らない人を聞いて,改めて世界にはいろいろな人がいるものだと感心させられるが,このまま米国で活動を展開すればいいのではないかとさえ思ってしまうようなナイスな初リーダー作。星★★★★には十分値する佳作である。

それにしても,リーダーの弾いているGibsonのセミアコ,インディゴ・ブルーとマリン・ブルーの中間みたいな色ってのは結構カッコいいなぁ。

Personnel: Michal Bugala(g), Seamus Blake(ts), Danny Grissett(p, rhodes), Vicente Archer(b), Kendrick Scott(ds)

2011年12月20日 (火)

2011年を回顧する(その1):ライブ編

Ecsw

2011年も大詰めが近づいた。そろそろ今年の回顧モードに入りたいと思うが,今年は3/11の地震のインパクトが大きかったことと,4月に職場の環境が変わったこともあり,4月末ぐらいまでは非常にブルーな感情に支配されていたと言っても過言ではない。そんな私がようやくふっ切れたのは5月に米国に出張し,NYCでSmallsに2日間通ったことが契機になったように思えてならない。ライブで音楽に触れて,いつまでもウジウジ言っていてもしょうがないよなぁって気分になったからである。まさに音楽のヒーリング効果?

Smallsで聞いたのはLage Lundのライブ・レコーディング(おそらくSmalls Liveシリーズで出るのだろう)とAlex Sipiaginのグループだったのだが(記事はこちらこちら),やはりNYCでのライブ環境は素晴らしいと思わせるものだった。特にSipiaginのグループのメンツは強烈で,私は相変わらずのミーハーぶりを発揮して,CD持参で臨んだのであった(笑)。

それ以降はライブに通う機会は2010年よりは少なく,記事にはしなかったものとして11月に聞いた内田光子のシューベルト後期ソナタ演奏会と,更には先日記事にした12月のClapton/Winwoodのジョイント・ライブぐらいしか行っていないはずである。内田光子は21番のタッチを明確化するために,前半の19番,20番は敢えて軽いタッチ(弱音)で弾いたのではないかと思わせるような演奏スタイルであったように思う。しかし,シューベルトのソナタを続けて3曲弾き切る集中力は見事なものであった。久しぶりのサントリー・ホールであったが,たまにはこういうのも必要だなと思った次第。但し,シューベルトってもっと「個人的な体験」かなって気もするが。

しかし,今年のライブにおけるハイライトはClapton/Winwoodにほかならない。記事(こちら)にも書いた通り,Winwoodのヴォーカルと相俟って,鬼のようなClaptonのギターが聞けたことには本当の幸せを感じた私であった(アップした写真はほかのサイトからの拝借。勝手に転載ごめんなさい)。

ということで,今年はあまりライブに行く機会には恵まれなかったが,行ったものについては相応に印象に残るものであったと言ってよいだろう。来年はもう少し行けたらと思うが,まずは2月のTedeschi Trucks Bandに向けて準備を整えることにしよう。

2011年12月19日 (月)

こいつはまじで凄いぞ,Ondrej Stveracek。

Ondrej001 "Jazz na Hrade" Ondrej Stveracek Quartet(Multisonic)

先日このブログでこの人のアルバムを取り上げた際にも書いた(記事はこちら)が,この人たちのライブ盤を新橋のテナーサックスの聖地"Bar D2"で聞かせてもらい,一発で気に入ってしまった私は,はるかチェコのサイトへと発注をかけたのだが,何とあっという間に到着(プラハから実質4営業日で来たのにはびっくり)である。しかも保険付きの書留便での到着ではないか。これだけでも嬉しくなってしまうカスタマー・サービスだが,音を聞いてまたまた小躍りしたくなってしまった私である。

先日紹介のアルバムは購入意欲をそぐようなジャケだったが,こちらは随分雰囲気があるではないか。この人,年はいくつやねん?という疑問も浮かぶが,ライナーによれば1977年生まれのようである。それにしてはこのジャケは落ち着いた感覚が漂っているねぇと思いつつ,出てくる音は全然違って,まさにハイブラウで,ハード・ドライビングである。スタジオ盤もよかったが,このライブ音源で私はますますこの人にしびれてしまったと言ってもよい。そもそもスタジオ盤で気に入らなかったピアニストの唸りもここではほとんど気にならない(とは言えやっぱり唸っている...)のが嬉しく,音楽鑑賞への集中力をそぐことがない。だからこそ,リーダーのテナーを傾聴できるわけだが,この時代,あるいは77年生まれという年齢を考えて,ここで聞かれるような演奏を展開すること自体が驚きであり,その意外性が望外の喜びをもたらすと言ってよいだろう。

Ondrej 本作はスタジオ盤と多くの曲がかぶっているので,聴き比べるのも一興であるが,私はライブ盤の方が好きである。バンドとしてのまとまりも文句なし。こういうのを眼前でやられていたら点目確実であったであろう。いずれにしても,Ondrej Stveracekという人,そして彼の2枚のアルバムはジャズ・フィールドにおいては今年最大の発見と言ってもよい。びっくり度,興奮度,その他諸々の要素を含めて星★★★★★としてしまおう。これは最高だ。ついでに写真もアップしてしまうが,雰囲気あるよねぇ。この人を教えて頂いたことについては"Bar D2"のマスターには感謝してもし足りないぐらいである。

ちなみにCDは送料込みで1,700円もしないぐらいだったから,それだけでも満足度が高いが,iTunesなら1,050円(但し,日本で理解できる人は少数と思われる冒頭のアナウンスを除けば900円)で入手できてしまう。何ともいい時代である(本作のiTunesのサイトはこちら)。さぁ,皆さん,騙されたと思って聞いてみて下さい。本当に燃えまっせ。

Recorded Live at "Jazz at the Castle" on November 23, 2010

Personnel: Ondrej Stveracek(ts), Ondrej Krajnak(p), Tomas Baros(b), Marian Sevcik(ds)

2011年12月15日 (木)

ぎりぎりになってJohn Scofieldの"A Moment's Peace"を聞く。

A_moments_peace "A Moment's Peace" John Scofield(Emarcy)

この作品はブログのお知り合いの皆さんが結構高く評価されている作品である。にもかかわらず,私が最近のJohn Scofieldの活動に関心を失っている(とかいいながら,MM&Wとのライブ盤はアップしているが...)のが災いして,結局買わずに,そして聞かずに過ごしてきたのだが,さすがに年末も近づいて一応聞いてみるかという気分になり,ようやく記事のアップである。

そして本作を聞いてみたのだが,確かにこの作品,深みのあるいい作品であった。テンポはゆったりしているのだが,ジョンスコのまさに歌うかのようなギターの旋律は,この人のイメージを覆すに十分である。私にとってジョンスコと言えば,デニチェンの爆裂ドラムス入りのエレクトリック・バンドということになるのだが,同じ人のギターとは思えないぐらいの違いがあるのだ。ギターのトーンはまさにジョンスコそのものなのだが,ここまで落ち着きを感じさせるジョンスコは初めてだった。そう言えばジャケの雰囲気も落ち着きに溢れているし...。こうした印象を持つのは,私が"Quiet"を聞いたことがないせいかもしれないが,ここでのジョンスコのビター・スイートな感じはかなりよい。繰り返し聞いてもOKの音楽なのだ。リピートにたえる音楽はいい音楽だと私は思っているが,まさにそういう感じである。これなら何回でもいける。

ジョンスコに求める音楽はこんなものではないというリスナーにとっては,若干退屈に響くかもしれないが,ここではムードに流されることなく,ちゃんと個性は打ち出していて,きっちりジョンスコの音楽になっているところが彼の偉いところだと思ってしまった。バックの面々も楚々とした演奏で応えているが,これだけのメンツである。悪いわけはないんだよねぇ。こういう作品をスルーしてきたのはやっぱりまずかったという反省も込めて星★★★★☆。

それにしてもジョンスコが"I Will"を弾くなんて想像した人がかつていただろうか?"I Am the Walrus"とかならわかるが,"I Will"だもんなぁ。意外だが,このアルバムのトーンにはぴったりであった。そして締めくくりの"I Loves You Porgy"の見事な演奏にも全くもって感心させられた私であった。

Recorded in January, 2011

Personnel: John Scofield(g), Larry Goldings(p, org), Scott Colley(b), Brian Blade(ds)

2011年12月10日 (土)

Ondrej Stveracek:世界にはまだまだいろんな人がいるねぇ...。

Whats_outside "What's Outside" Ondrej Stveracek(Cube Metier)

お馴染みテナー・サックスの聖地,新橋のBar D2で教えて頂いたCDであるが,取り上げるのが遅くなってしまった。しかし,これがジャケは冴えないが,内容はえげつなくいいアルバムである。これには正直痺れてしまった。Ondrej Stveracek,チェコ出身のテナーらしい。チェコと言えばMiroslav VitousとかJan Hammer,George Mrazあたりを思い出すが,サックス・プレイヤーって誰が居たっけなぁって感じだろうが,いるんだねぇ,凄い人が...。

サウンドはColtraneの影響濃厚かなぁって感じなのだが,この人はテナーの音も,フレージングも素晴らしいところが気に入ってしまった。しかし,このジャケである。これだけ見れば,一切購入意欲がわかないところでかなり損をしているのではないかと思ってしまうが,ハード・ドライビングな演奏でも,バラッドでもこの人の演奏能力は折り紙付きである。テナー好きは買って損はしない。

リーダーを支えるバックのトリオも好演なのだが,ピアニストの唸りだけは何とかして欲しいなぁ。発情した山羊のような奇声を聞かされては,その部分については聞く気が失せる。このアルバムの瑕疵はそれだけであって,それを除けば満点をつけてもいいような作品である。星★★★★☆。

しかし,新橋のお店に通っていると,「何じゃこりゃ?」と思わせつつ,強烈に購買意欲を煽るアルバムを聞かせて頂くことが多いが,まさにこれもそんな一枚。先日お邪魔した時にはこの人のライブ盤を聞かせて頂き,これまた一発で気に入った私はチェコのサイトに即,発注をかけたのであった...。

それにしても,ベースを除けば誰ひとりとして名前をどう発音するのかわからんぞ(爆)。

Personnel: Ondrej Stveracek(ts),  Ondrej Krajnak(p), Tomas Baros(b), Marian Sevcik(ds), Radek Nemejc(perc)

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