明らかに変化が生じたKeith Jarrett
私にとって,昨今のKeith Jarrettの活動は少し荷の重いものになってきていたのは間違いない事実である。ソロは非常に緊張感が強くて,聞いていて疲れるものになっていたし,トリオにはマンネリズムすら感じていた。そういうこともあって,今年の彼のソロ・ライブも行くのを見送った私である。だからと言って,彼の新譜が出れば必ず買ってしまうことには何の変わりもないわけで,今のところ,結構アンビバレントな感覚をKeithには抱いていると言っても過言ではない。
そのKeithによる最新作がブラジル,リオデジャネイロにおけるライブ盤なのだが,このソロ・アルバム,近年私がKeithに感じていたものとかなり違う。冒頭は最近のパターンのように現代音楽的な響きを感じさせる演奏だが,それに続くここでの演奏は近年では珍しいくらいメロディが明確な響きを持っているのである。メロディアスなのはアンコールで弾くスタンダードだけのように感じさせたKeithを何がこうさせたのかはわからない。しかし,4月にレコーディングされたものをこの時期にリリースするというのは,これまたKeithには珍しいことであり,相当この時の演奏が気に入っていることを示しているようにも思える。
これがリオという土地柄を反映したものなのか,Keithの心象を反映したものなのか,あるいは聴衆により生み出されたものなのかはわからない。Charlie Hadenとの"Jasmine"がもたらした効果かもしれない。ただ,あれは2007年の作品だから直接的な影響があるとは思えないとしても,私にとってはこうした転換は歓迎したいのである。
Keith Jarrettはフリーに近い厳しい音楽も,リリカルで美しい音楽も奏でられるプレイヤーであるが,そのバランスを自身でうまく保ってきた人だと思う。トリオで演奏する時も,スタンダードだけでなく,完全即興に取り組むこともあるのはそうしたことで多少のガス抜きをしているのだろうと想像していた。そうした中で,ソロはアンコール以外はある意味,以前の大曲指向から,複数の曲による構成へと変化したものの,曲想そのものも一定の方向性(現代音楽的アプローチ)を指向し過ぎていたようにも思える。もちろん,私が前回見たKeithのソロ・ライブではストレートなブルーズも演奏して驚かされたのも事実ではあるものの,それでもやはり敷居が高く感じていたのは私だけではないはずだ。それが,今回のアルバムでは明らかに変化が生じているのは意外でもあったが,私としては嬉しいものであった。
これが一過性のものであるかどうかはわからないが,ソロ活動においてもこうした変化を見せてくれることを今後も期待したいと思う。星★★★★☆。いずれにしても,近年のKeithのソロでは最も好きなアルバムとなった。
Recorded Live in Rio de Janeiro on April 9, 2011
Personnel: Keith Jarrett(p)
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おそらくFacing YouでもRadianceでもこういった曲は演奏はしていたんだと思います。でもこの「Rio」はそんな曲単位の話じゃまとまらない。
あっけにとられてしまう美しさ。砕けて言うとカッチョ良さ。
Keithの音楽を「カッチョ良い」なんて。
こういう風に楽しんだの...... [続きを読む]
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音楽狂さん、こんにちはmonakaです。
このアルバムに対しては実は最初懐疑的でした。かなり選んでだしているので、よっぽどでなければとおもったわけで、これまでのソロパフォーマンスとはちょっと違った感じだとかんじましたが、これはこれでなかなか良いとじわじわと感じています。
そういう意味でも2012年の5月6日と11日のBunkamuraはどのように演るのか楽しみになりました。
TBさせていただきます。
投稿: monaka | 2011年11月15日 (火) 21時21分
最初はタイトルで、ムムム、と思って、どういう音が出るか、やはり現代音楽風できたか、と思ったのですが、いろいろなサウンドの曲があって、時間も適度で、結果、聴いていて楽しかったです。
こういうキースもいいなあ、と思いますが、ライヴから早くリリースされたところを見ると、やはり最近ではかなりの出来だったのでは。これなら何度でも続けて聴きそうです。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2011年11月15日 (火) 21時32分
monakaさん,こんばんは。TBありがとうございます。
確かにここ暫くの演奏とは一線を画していると思います。それが私には丁度フィット感が強かったっていうところでしょうか。本当に来年が楽しみですね。オーチャードでお会いするかもしれませんね。と言っても私のことはおわかりにならないでしょうが...。アバター頼みですかね(笑)。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年11月15日 (火) 21時49分
910さん,こんばんは。TBありがとうございます。
そうなんですよね。これまでは現代音楽風味で押し切るっていう感じの部分もありましたが,これはリリカルでメロディアスな部分も感じられて,私は好きです。
こういう路線は歓迎ですね。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年11月15日 (火) 21時50分
こんばんは。
新潟は荒れてきました。まさか、霰なんか降ってないだろうなぁ。。
いろいろな面が入っていて、しかも、キースらしくて、、
わたしは、なんだか、にんまり聴きましたよ。
何より、ご本人が相当気に入られてるようで、それもよかったなぁ、、って、思ってしまいました。
キースさま、、5月の来日多いですよねぇ。
とても、難しい時ですわ。。。
トラバ、ありがとございました。
投稿: Suzuck | 2011年11月16日 (水) 20時34分
最近のキースはちょっと敷居が高くて、、
first LPとルータ&ダイチャ以外、ほとんどのLP、CD、LDを集めてきましたが、最近のソロはなじめません。
YouTubeで元気な頃のキースを拝むことができます。
Keith Jarret solo (1967)
Keith Jarrett Solo 1975 Umbria
音だけなら
Keith Jarrett- Bern Concert
このあたりの時代にソロでのピークがあったように感じています。
この頃の秘蔵音源をCD発売してはどうかと持ちかけたら、キースに怒られそうな感じがします。
投稿: mmm | 2011年11月17日 (木) 21時41分
すずっくさん,こんばんは。返事が遅くなりました。申し訳ありません。TBありがとうございます。
このアルバムを聞いて,本当に来年5月の来日が楽しみになりました。期待しましょう。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年11月17日 (木) 22時34分
mmmさん,こんばんは。おっしゃることはよくわかります。なじめない部分は多々あると思いますから。
Keithのブートレッグもそれなりに存在しますが,さすがにそこまでは追い切れません。でも数少ないブートでもケルン前後のものはいいですよね。でもブートはぶーとですからねぇ。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年11月17日 (木) 22時41分
ラテン気質の聴衆がいる地という意味も含めて"リオという土地柄を反映したものなのか"と言うのが合っているような気がします。
が、それ以上に、最近はkeith自身にとってもソロコンサートに満足度の高い演奏が多いんじゃないかと勘ぐっています。
TBありがとうございます。逆TBさせていただきます。
投稿: oza。 | 2011年12月20日 (火) 06時49分
oza。さん,こんばんは。TBありがとうございます。
ブラジルっていいところなのかもなぁなんてブラジル音楽好きの虫がうずきます(笑)。来年のチケットはゲットしましたが,是非こういう調子でやって欲しいものです。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年12月20日 (火) 21時28分
TBありがとうございました。
カーネギーもアンコールばっかり、って聴き方もどうもなあ、と思っていたので、今回は嬉しいですね。
ところで来年のチケットはもう発売されているのでしょうか?webでみたら、予約受付のように見えましたが。
投稿: ken | 2011年12月29日 (木) 10時17分
kenさん,こんにちは。TBありがとうございます。返信の順番が狂ってしまい申し訳ありません。
本作は本当に久しぶりに楽しめるKeithでした。
来年のKeithのライブのチケットは,鯉沼ミュージックの会員先行発売がされまして,その分(SS席限定です)についてはSold Outになっています。一般の発売は確か年明けのはずです。私は会員なので,さっさと申し込んでしまいました。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年12月30日 (金) 14時07分
音楽狂様
こんにちは。語り尽くされた感ありますが、、、一過性でないことを願いたいです。どんなに求道しても最終的には音楽によって幸せ感をもたらして欲しいと思いました。トラバさせて頂きます。
投稿: ki-ma | 2012年2月25日 (土) 16時51分
ki-maさん,こんにちは。TBありがとうございます。私は幸いにして5月のオーチャードに行きますけれども,こういう演奏を実は期待しています。
ストイックな音楽もそれはそれでありですが,やはり聴衆と通じ合う音楽もあると思います。ここに収められたのはそういう演奏ですよね。期待しちゃうなぁ。
投稿: 中年音楽狂 | 2012年2月26日 (日) 17時11分