ようやく到着:Chick Corea~Stefano Bollaniデュオ
"Orvieto" Chick Corea & Stefano Bollanin (ECM)
リリースされてから時間が経ったにもかかわらず,某サイトからちっともデリバリーされずにやきもきさせられたアルバムがようやく到着である。Chick Coreaと言えば,NYCのBlue Noteほぼ1カ月出ずっぱりという凄い11月を迎えたわけだが,70歳にして老いてますます盛んというか,本当に元気な人である。Blue Noteでは懐かしやHerbie Hancockとのデュオもあれば,Marcus Robertsとのデュオ,更にはオリジナル・エレクトリック・バンドやらGary Burtonデュオ+ストリング・クァルテットやら,ファイヴ・ピース・バンド,RTFアンプラグド,Bobby McFerrinとのデュオ等,物凄いラインアップである。また"Rendevouz in New York"のようなアルバムを出すつもりなのかと勘繰りたくもなるが,それにしてもよくやるわ。
そんなChick Coreaが息子ぐらいの年代と言ってもよいBollani(現在38歳)と共演するというのだから,一体どういうことになるのか。今年,ピアノ・デュオと言えば,Brad MehldauとKevin Haysのそれは美しい"Modern Music"という傑作があった(記事はこちら)が,あちらがクラシック的,現代音楽的な響きが強いのに対し,本作はずっとジャズ的なのが特徴である。冒頭のインプロヴィゼーションはこれまた現代音楽的なところがあり,同系統かと思わせるのだが,どんどんジャズ的な楽しさが増してくるのが面白い。こういうのがECMレーベルから出るというのは相当珍しいと思うが,それでもChickは以前からECMに吹き込んでいるし,最近はBollaniもECMでアルバムをリリースしているから,不思議でもないのかなぁ。しかし,ここに収められた音楽はECMのレーベル・カラーからはやや乖離していることは間違いない。だって楽しいんだもんなぁ(だからと言ってECMファンの私としては,ECMをけなすつもりは一切ない)。
Chickのピアノ・デュオ作はHancock,上原ひろみ,Friedrich Gulda等があるが,その中でも私はこの作品が一番楽しめたように思う(Gulda盤なんかははるか記憶の彼方だが...)。ほかの3人との相性が悪いとは言わないが,この2人の相性が圧倒的にいいように思えるのだ。楽しさもあれば,美しさも共存しているところがこのアルバムのいいところである。前述の"Modern Music"がよりストイックな美しさを追求したものだとすれば,このアルバムはもう少しリラックスして楽しめるところがよいと思う。同じピアノ・デュオ・アルバムでも作り手によってこれほど違いがあるってことを強く感じさせてくれるところに,ジャズ・ミュージシャンとしてのこの二人の個性がよく表れていると思う。"Modern Music"同様これも十分に楽しめるアルバムとして星★★★★☆。"Modern Music"との半星の違いは完全に好みの問題(爆)と演奏にちょっと感じられる粗さゆえ。
それにしても,ミュージシャン同士の交感というものは凄いものだと痛感させられる両者のヴィヴィッドな反応は本当に大したものである。
Recorded Live at Umbria Jazz Winter on December 30, 2010
Personnel: Chick Corea(p), Stefano Bollani(p)
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Chick Coreaはすごい人ですね。年齢に関係なく、才能ある人を信頼し、讃え、良いところを引き出し、どう向き合うか、付き合うか、を知っている。常に良い物を創る、そこに目をむけている。昨年、ライブで見た時、ものすごく目力がある人、と思いましたが、演奏も、ピアノソロなのに、力が溢れていて、私は、想像力をかきたてられた。その世界で生き残り、輝いている人って、Chick Coreaと共通のものを感じます。それだけ、自分に自信があるのかもしれない。カッコイイ!
投稿: ひまわり | 2011年11月 3日 (木) 08時33分
さすがにチック・コリアが加わると、ECMの特例の、スタンダードが自由に演奏できる、ということになってますが(笑)、これはでき上がった音源をECMに持ち込んだんでしょうか。あまり外れてないんだけど、かなり自由な演奏ですよね。
個人的にはメルドー/ケヴィン・ヘイズ盤と甲乙つけがたくなってしまっています。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2011年11月 3日 (木) 09時48分
ひまわりさん,続けておはようございます。
Chick Coreaの創造力に衰えは感じられませんよね。自分が70歳になったときにはどうなっているのかって思うと,やはり凄いわと言わざるをえません。これまた"I'm not worthy!"になってしまう私です(笑)。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年11月 3日 (木) 10時08分
910さん,おはようございます。TBありがとうございました。
私も"Modern Music"と甲乙つけがたいとは思っていますよ。本当に好みの問題です(笑)。いずれにしても,どこのレーベルから出ようとも,この音源がリリースされたことを喜ぶべきでしょう。そもそもこの2人の共演は2009年にもあって,本作は再共演ってことになりますから,よほどChickとしても気に入ったのではないかと思えます。
ということで,追ってこちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年11月 3日 (木) 10時13分
>どんどんジャズ的な楽しさが増してくるのが面白い。こういうのがECMレーベルから出るというのは相当珍しいと思うが
そうですよねぇ。
にくいですよね。セット?の最初と思われる曲2曲。。
でも、そのあとに、我々思った方向にドンドン深まる。
しかし、、本当にこの一体感はすごいですよねぇ。
ちょっと、危ないくらいにすごいと思いました。(笑)
どうも、ありがとうございました。
投稿: Suzuck | 2011年11月 3日 (木) 15時10分
すずっくさん,こんにちは。TBありがとうございます。
「にくいですよね。」
はい。にくい,にくい(ってど根性ガエルでしたかねぇ)。
確かにこの一体感というのはどこから生まれるのかと思います。Blue Noteで予定されているChickとMarcus Robertsのデュオではきっとこうならんだろうと想像しています(笑)。ラテン系ならではかなぁって気がしますよね。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年11月 3日 (木) 16時41分
音楽狂様
こんばんは。本作は自分の好きな二人の共演で不満なんか基本的に無いんですが、ECMでなければもう少し幅が広がったかななんて思わずにはいられなかったです。基本陽気な二人がそっち方向に向かった演奏だと思うからですが、、、。でもECMの割にはちゃんとフォローされていてそこは嬉しいポイントでした。
投稿: ki-ma | 2011年11月 3日 (木) 18時54分
ki-maさん,こんばんは。TBありがとうございます。
ECMでなければということですが,二人とも同レーベルには吹き込んでますし,BollaniのECM作は彼のイメージを転換させるに十分だったと思います。私にとっては,陽気なだけだと逆にここまでの音楽になったかどうか...っていう気がします。
もちろん,何を期待するのかは人それぞれですから,どれが正しいってことはないですけどね。でもよくできたデュオ・アルバムであることは間違いないでしょう。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年11月 3日 (木) 19時00分
みなさん書いてみえますね。レーベルにより、いろんなカラーがあることを、今回知りました。
ところで、質問です、すみません、お力を下さい。
ジャズワルツのリズムで、参考になる作品を教えていただけないでしょうか?
子供達と共演するベーシストが、ポップスの曲は大丈夫だけど、ジャズワルツは知らない、と、昨夜言っていたので、すぐにでも、参考音源を紹介しないと、、、と思案している私です。
投稿: ひまわり | 2011年11月 5日 (土) 06時27分
ひまわりさん,おはようございます。ECMレーベルにはECMレーベルのカラーがありますが,本作はどちらかというとそれが濃厚には表れていませんね。
ジャズでワルツと言えば,何と言ってもBill Evansの"Waltz for Debbie"が定番だと思います。そのほかで言えば,Miles Davisでも誰でもいいですが,"Someday My Prince Will Come"でしょうかねぇ。何てたって「白雪姫」のテーマソングですから。
ついでに言ってしまうと,ドラマーのMax Roachにはアルバム1枚ワルツで通した"Jazz in 3/4 Time"なんて作品もありますが,さすがにここまで行くと...って感じです。上述の2曲がおそらくは最もわかりやすい事例でしょう。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年11月 5日 (土) 07時55分
すっごく嬉しい!即回答に感激です。早速先方に伝えました。これで、週末の時間が生きます。
投稿: ひまわり | 2011年11月 5日 (土) 11時25分
ひまわりさん,こんにちは。My Pleasureです。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年11月 5日 (土) 11時43分
>ミュージシャン同士の交感というものは凄いものだと痛感させられる
まさに、これを感じさせる演奏です。
"好き勝手に相手とのやりとりをしていると聴ける演奏であるにもかかわらず、そこに表出するのが"ケンカ"ではなく"一体感"である"なんて自blogで書いているのですが、これぞ交感の賜物ということなんでしょう。
>Blue Noteで予定されているChickとMarcus Robertsのデュオ
すでに次の作品が決まっているんですね。
どうやら、Chick Coreaはどっぷりピアノデュオにはまってしまった感じですね
TBありがとうございます。逆TBさせていただきます。
投稿: oza。 | 2011年12月10日 (土) 08時21分
oza。さん,おはようございます。TBありがとうございます。
一点,誤解を与えてしまったようですので,補足します。Chickは今年の11月に,NYCのBlue Noteで生誕70周年記念4週間ぶっ通しライブをやったんですが,そこにMarcus Robertsとのデュオが含まれていたということであって,レコーディングをしたかどうかは定かではありません。しかし,Chickには"Redevouz in New York"という前科(?)がありますから,今回も出すかもしれません。
しかし,そのライブにはPaul Motianも出演予定だったんですよねぇ。いかに急逝だったかがわかりますよね。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年12月10日 (土) 10時41分
こんばんは。
ココログも ケ-タイからはトラバできないみたいですね…
わたしも やっと年内に聴くことができました。
ずっと迷っていたんですが やはり買おう!と決意して 聴いてみました。
すごくきれいなピアノ・デュオ♪
購入してよかったです。
投稿: マ-リン | 2011年12月19日 (月) 00時15分
マーリンさん,こんばんは。返事が遅くなりました。携帯からTBできたかどうかは,iPhone頼みの私の記憶からは飛んでしまっていますが,そうだったような気も...。
このアルバムはジャズ的な魅力に溢れていて非常に楽しめるものですが,フォーマットとしては特殊な部類ですね。でもたまにはこういうのもいいと思います。やはり役者が揃っている強みです。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年12月20日 (火) 21時13分