Steve Reichの新作はかなり重い
"WTC 9/11"Steve Reich (Nonesuch)
Steve Reichの新作がNonesuchからリリースされた。早期予約者(確か250名だったか)特典としては今回はインナー・スリーブへのReichのサインである。私はReichの音楽がかなり好きなので,今回もすかさず予約して特典ゲットだったが,前作"Double Sextet"でもReichのサイン入り楽譜を特典に付けるNonesuch,いいレーベルである。
それはさておき,今回のReichの新作はテーマが9/11だけにタイトル・トラックの響きはかなり重苦しい。もともと,Kronos Quartetから人間の声と弦楽四重奏の組合せで曲を委嘱されたらしいのだが,ここで使われている録音された人間の声とKronos Quartetの弦楽四重奏がシンクロして,沈痛なテーマを奏でており,私が知るReichの曲とは明らかに異なった響きを持つ音楽である。ライナーによれば,9/11発生時,グラウンド・ゼロからわずか4ブロックのところにReichの家族がいたということであり,彼にとっては「メディア・イベント」ではなかったという事実,更には"WTCとはWortld Trade Centerであるとともに,World to Come"だというReichの言葉が重くのしかかる。
しかも今回の曲は,単に声と弦楽四重奏というだけでなく,2組の事前に録音された四重奏とライブの四重奏を重ねるという手法で,これまた特異な響きを作り出しているのだが,ご丁寧にこれをライブで再演するなら,弦楽クァルテットが3組必要だなんて書いているが,そうした仕組みがReichによって説明されているのは大変興味深い。また,作曲中,Reichはこの曲をもっと大曲に仕立てようと試みたらしいが,インパクトを重視し,15分程度のピースに仕上げたということである。確かにこれほど重いReichを長い時間聞かされれば,こちらの緊張感が持たなかったかもしれない。
それに比べれば"Mallet Quartet"や"Dance Patterns"はReichらしいミニマルな響きが聞けて,タイトル曲の緊張から解放をしてくれる。いずれにしても,"WTC 9/11"はReichが狙った通りのインパクトを有する音楽となったことは間違いない。もちろん,Reich好きのリスナーに受けるかどうかは別の問題だが。だが,これはこれでちゃんと評価すべき作品だと思う。星★★★★☆。
Personnel:
(WTC 9/11) Kronos Quartet: David Harrington(vln), John Sherba(vln), Hank Dutt(viola), Jeffrey Zeigler(cello) Recorded on February 21-24, 2011
(Mallet Quartet) Sō Percussion: Eric Beach(vib), Jason Treuting(vib), Josh Quillen(marimba), Adam Sliwinski(marimba) Recorded on March 22, 2011
(Dance Patterns) James Preiss(vib), Thad Wheeler(vib). Frank Cassara(xylophone), Garry Kvistad(xylophone), Edmund Niemann(p), Nurit Tilles(p) Recorded on December 13, 2004
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最近、ライヒを聴きはじめました。Different trainsとか関心しました。ミニマルの効果が、既視感(音だから視じゃないけど)のような感覚の喚起にあるように思えました。
それにしても9.11は重い。あの夜、第一報は携帯のニュースで見て、さらに帰宅後の深夜、二機目が突入した。明らかに世界が変わるような、身の回りの空気の変化を感じました。Pax Americanaの終焉。
このブログを拝見して注文したCDが今日届いたのですが、あの日の記憶をまざまざ呼び起こしました。当時、あのボストン発サンフラン便は何回か乗っていて、ボストンには当時、一月おきに行っていたので。
マリンバの音でほっとしました。そんな小さな記憶の旅でした。ご紹介、ありがとうございました。
投稿: ken | 2011年11月29日 (火) 00時27分
kenさん,こんばんは。私は結構ミニマルが好きで,Reichはその中でも一番聞いています。確かに今回の曲は重苦しい感じがありました。まぁでもReichはReichってことで。
9/11の映像は私は飲み屋で見てました(爆)。もう10年ですね。早いもんです。
9/11の後はボストンのローガン空港はセキュリティが無茶苦茶きつくなりましたよね。米国への出張が多かった私は,ボストンはそうでもなかったですが,厳しいセキュリティゆえ,色々な空港で飛行機に乗りそこないました。人呼んでMr. SSSSと言われていました(笑)。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年11月29日 (火) 19時20分