ついにミュンシュ/パリ管の「幻想」を聞く。
"Hector Berlioz: Symphonie Fantastique(幻想交響曲)" Charles Munch / Orchestre De Paris(EMI)
このブログでチョン・ミュンフンの「幻想交響曲」を取り上げたとき(記事はこちら)にもちらっと触れたミュンシュ/パリ管の「幻想」は,この曲の演奏の決定版として語られることが多い。しかし,生来の天邪鬼である私は人がほめるものを敢えて避けたがる傾向があり,長年,この演奏を聞かずに過ごしてきた。今回,中古盤屋を漁っていて,丁度手頃な価格で売っていたので,まぁいいかということで購入し,ついにこの演奏を初めて聞くこととなった。私が「幻想交響曲」のレコードを初めて聞いたのが高校1年の頃だったと思うので,この演奏を聞くまで35年を要したことになる。思えば長い道のりである。
そもそもシンフォニーの中で「私は幻想が好きです」なんていうこと自体,相当の変人と言われること間違いなしであるが,それも若気の至りというか,ベートーベンでもモーツァルトでも,ましてやマーラーでもなかったのである。若い頃はちっともマーラーなんていいと思わなかったのだが,それが変わったのは生で5番を聞いてからだろうと思う。今やマーラーも結構聞いている(というか,かなりの枚数を買っている)のだから,人間変われば変わるものである。そんな私でも若い頃は人とは違うということを主張したかったのだろうから,私も青かったものだ(今でも成熟からは程遠いが...)。しかも名盤扱いされている本作ではなく,あくまでもジャン・マルティノンの演奏にこだわりを見せたこと自体もかなりの変人である。そのマルティノンの演奏も父のレコードを聞いていたものに過ぎないのに,何とも私にフィットしていたように感じていた。いずれにしても,私にとっての「幻想」のひな型はマルティノンの演奏だったのある。
そしてこの演奏を聞いてみて,確かにスピード感とダイナミズムに溢れ,この曲をこの曲らしく聞かせる演奏であることはわかる。私の感覚からするとかなり速い演奏であり,これは一言で言えば「爆演」だと言ってよいと思う。しかし,どうしてもぬぐえない違和感は第2楽章にあった。今や多くの演奏がコルネット入りの第2楽章を採用している(というか,私が買っているのがことごとくそうなのだ)中,ミュンシュのこの演奏はコルネットがないので,どうにも私には変な感じなのである。初期体験というのは恐ろしいものだと思うが,私にとってはあるべきところにそれがないと,どうしても変なのである。
これだけ飛ばしに飛ばす演奏を聞かされれば,満足感があることは間違いないとは思う。だが,私にはそうした些細なことがどうしても引っ掛かってしまったのであった。だからと言ってこの演奏の価値が低減するとは思わないが,これは完全に好みの問題である。ということで,この演奏には一定の敬意を表する必要はありだと思う。ということで,星★★★★☆。
こんな記事を書いていて,どうしてもエレガントなマルティノンの演奏が聞きたくなって(本当に何年も聞いていないのだ),CDを発注してしまった私はやはり病気である(爆)。
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コメント
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こんにちは。
「幻想」を紹介された時 聴いてみたいなぁなんて思いつつ まだ聴けていません;
クラシックにも詳しくて 凄いですね♪
深まる秋に クラシックもよさそうですね。
投稿: マ-リン | 2011年10月17日 (月) 17時12分
マーリンさん,こんばんは。珍しくも早く帰宅しました。クラシックにも詳しいかというとそんなことはないですが,「幻想」は昔から好きでした。
最近はピアノ曲を聞いていることが多いですが,たまにオケは聞きたくなりますね。しかし,この演奏,ド派手です。う~む,そうだったのかって感じですね。
投稿: 中年音楽狂 | 2011年10月18日 (火) 20時13分